もしも乳がんになってしまったら？ 脱毛や胸を失うイメージもこれを知れば怖くない！【美的GRAND】
もしも乳がんになってしまったら！？ 気になるアレコレ、実のところのリアルはこうです。
“乳がんイコール胸を失う”ではない！手術で胸を取り戻すことが可能
乳がんは胸を失うイメージが大きく、それが恐怖を生み出す元凶といえます。
「たとえ乳房組織をすべて摘出しても、乳房再建（失われた乳房を作り直すこと）ができます。乳房の再建には、大きく分けてふたつの方法があります。ひとつは、ブレスト・インプラントと呼ばれるシリコン製の人工乳房を挿入する方法、もうひとつは、自分の体の一部（背中やおなかなど）の皮膚・脂肪・筋肉などを移植して胸を作る方法。それぞれ、メリットとデメリットがあるのと、治療や乳房の状態によって適不適もあります。そもそも再建はしなければならないものではなく、再建しないのもひとつの選択肢です。それは人ぞれぞれの考えで決めるものです」（美容ジャーナリスト 山崎多賀子さん）。
実は、乳房の再建のついでに、胸を大きくしたり小さくしたり、もう片方の胸も手術して、カスタマイズする人もいるのだとか！！
Q.もし乳がんになって手術をしたら、乳房を再建したいですか？
『グラン』読者に聞きました
再建したい理由は、「鏡に向かったときに目を背けずにいられないから」（40歳）、「偽物の胸だとしても女性として見られたい」（40歳）など。再建しなくていい理由は、「年齢も年齢なので、再建できなくてもいい」（47歳）、「命が助かればそれ以上を望まないかも」（40歳）など。
＼経験者は語る／
再建ついでにボリュームアップ！大きな胸を手に入れました
私は部分的な切除も選択できましたが、再発が怖いのと抗がん剤を使用したくなかったので、あえて乳腺をすべて摘出しました。再建では、どうせなら元より大きくしようと、反対の胸も豊胸することに。昨年はシリコンバッグのリコール問題があって治療が一時中断するアクシデントもありましたが、今年に入って別のメーカーが認可され、やっと再開できたところです。
治療で脱毛するのはおよそ30％。毛がなくならない人の方が多いです
乳がんでもうひとつ大きな恐怖を感じるのが頭髪や眉やまつ毛の脱毛です。
「がんイコール脱毛のイメージがありますが、脱毛するのは全体の30 ～ 40％程度。治療の過程で抗がん剤を使う場合に、薬の副作用として脱毛が起こります。抗がん剤を使わなければ脱毛は起こりません。もちろん治療が終われば生えてきます。ただ、新たに発毛する際、髪質が変わるなど、個人差はあります。私は半年間くらい毛のない時期がありましたが、元より元気な毛が生えてきましたよ」（山崎さん）
乳がんは病気そのものはもちろん、胸の変形や脱毛など見た目の変化による苦しみも重なります。しかし、外見に関わる支援を相談できる窓口も整っています。全国には医療従事者や乳がん経験者が親身に対応してくれるコミュニティが存在します。いざそのときが来ても、決してひとりでさ迷わないで、専門家や仲間を頼って！
発見しても即手術ではない！乳がん治療の流れ
治療方針を決める
乳がんの治療では、手術をはじめ、放射線や抗がん剤などの薬物療法を組み合わせた、「標準治療」を受けます。科学的な根拠のある治療を第一の選択にすることが大切です。手術は、乳房温存手術か乳房切除術（全摘出）のどちらにするか、病状を基に医師と相談して決めます。
乳房温存手術を受ける
温存手術とは、がんとその周囲を部分的に摘出する術式のこと。がんがひとつだけで3cm以下などの条件がそろえば、この温存手術が可能です。ただし、病状によっては手術中に全摘に変更になるケースもあります。また、温存が可能な場合でも、再発リスクなどを考慮し、全摘出を選ぶ人もいます。
乳房切除術（全摘出）を受ける
がんが複数あったり大きい場合、乳房の中の組織をすべて取り除く、全摘出となります。温存が可能な場合でも、自身が希望すれば、全摘出を行います。
手術前の薬物療法を受ける
ケースバイケースですが手術の前に抗がん剤などの薬物療法を行うことがあります。この薬物療法によって、当初は温存が困難と判断された場合でも、がんが小さくなれば、温存手術が可能になることもあります。一方、がんが小さくならない場合は、乳房の中をすべて摘出する手術が選択されます。
乳房温存手術＋放射線治療
乳房温存手術では、がんを中心に＋2cm程の半径で部分的に摘出します。手術後、再発リスクを減らすため、放射線治療を行います。
乳房切除＋乳房再建手術
乳房の中の組織をすべて取り除く手術です。このとき同時に、乳房の再建手術をすることもできます。再建は後から行うこともできるので、落ち着いてから考えるのでもOK。
手術後の薬物療法を受ける
手術の後、抗がん剤やホルモン療法など、必要な薬物療法がスタートします。がんが超早期に発見された場合に、手術後に治療が不要なケースもあります。
誰でも気軽にがんに関することを相談できるスポット
（c）Koji Fujii／Nacása & Partners Inc.
まるでおしゃれなカフェのような癒しの空間で、がんに詳しい専門スタッフに話を聴いてもらえる施設です。がんを経験している人とその家族や友人など、がんに影響を受ける人が無料で訪れることができます。病気のことが心配なとき、診断や検査結果を待つ間、治療中、治療が終わった後、家族や友人ががんといわれ悩むとき。看護師や心理士が、自分の力を取り戻す実用的・心理的・社会的サポートを探すお手伝いをしてくれます。
マギーズ東京
認定NPO法人マギーズ東京
https://maggiestokyo.org/
TEL 03-3520-9913
MAIL soudan@maggiestokyo.org
※本来は予約不要ですが新型コロナウイルス感染予防のため予約が必要になっています。夜間オープンもありますが現状は変則的になっています。電話、メール、オンラインでも看護師や心理士とつながることができます。
美容ジャーナリスト
山崎多賀子さん
NPO法人CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター。NPO法人キャンサーリボンズ理事。2005年に乳がんが発覚し、右乳房を全摘出し乳房再建。自らの経験からがんに関する取材執筆も多い。乳房の健康を応援する「マンマチアー委員会」を主宰する。
『美的GRAND』2021年秋号掲載
イラスト／komugi 構成／木更容子
※価格表記に関して：2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
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1994年、佐賀医科大学卒業。九州大学医学部第二外科、国立病院機構九州がんセンター乳腺科などを経て、2016年より現職。日本外科学会指導医、日本乳癌学会指導医。