バストトップの陥没は授乳に影響があるってホント?真相を専門家に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日常生活で生まれる美容の疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は、“バストトップのトラブル”について。バストトップの陥没は授乳に影響があるって…ウソ? ホント? ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長・島田 菜穂子先生にお答えいただきます。
Q:バストトップの陥没は授乳に影響があるってホント?
バストトップの形は人それぞれ。個性です。しかし、“バストトップが陥没していると、授乳ができない”なんてウワサもあり、気になっている人もいるのではないでしょうか。それって本当? さっそく、この疑問を島田先生にぶつけてみました! 果たして答えは…?
A:ホント
「授乳は、赤ちゃんが乳頭を口に咥えて母乳を飲みますが、乳頭が陥没していると、赤ちゃんが吸い付きにくく、授乳が難しい場合があります。
バストトップの陥没には仮性と真正の二種類があります。仮性と呼ばれるものは、出産の前にベビーオイルやボディクリームをつけてマッサージをして、刺激を与えて乳頭を出やすくするようにしておく、あるいは授乳の前に乳頭吸引機や乳頭補正器を用いて乳頭を引き出してあげれば授乳をすることができます。
そしてもうひとつが真性と呼ばれるもの。こちらの場合には、刺激を与えても乳頭は出てこないので、授乳が難しくなってきます。ただし、片方の乳頭のみ真性陥没なら、もう片方の乳頭で授乳することができますよ。また、直接赤ちゃんが乳首を咥えることができない場合でも、搾乳をして哺乳瓶で授乳するという方法もあります。
ちなみに、“授乳しやすい乳頭の大きさ”ですが、乳頭が大きすぎると赤ちゃんが咥えにくく、口角が開いて母乳が横から垂れてしまいます。また、小さすぎては、赤ちゃんが咥えられませんから、“赤ちゃんが咥えやすい大きさ”というのはあるでしょう。とはいえ、咥えやすい乳頭=何ミリ以上、何センチ以下という決まりもないのです」(島田先生・以下「」内同)
- バストトップの陥没には、仮性と真性の2種類がある
- 仮性陥没は、マッサージ等で刺激を与えれば乳頭が出てくる
- 真性陥没は、刺激を与えても乳頭が出てこない
- 仮性の場合は、銃乳前に乳頭吸引器や乳頭補正機器を使用すれば授乳可能
- 両方の乳頭ともに真性陥没の場合、形成手術などの治療が必要
- 赤ちゃんが直接乳首を加えることができない場合は、搾乳をして哺乳瓶で授乳するという方法がある
バストトップが陥没してしまう原因とは?
「小さいころは何ともなかったのが、成長期で陥没してしまうということがあります。母乳を通す乳管と呼ばれる管が、乳頭~乳腺へと15,6本繋がっているのですが、乳房が成長していくのに対し、乳管が伸びていくのが間に合わない、距離が足りないとなると、乳頭が凹んでくるのです。これにより“陥没乳頭”という状態が起きます。
また、もともと陥没していなかった乳頭が徐々に片方だけ陥没してくる場合には、乳腺炎や乳がんなどの病気が原因で起こっている場合もあります。成人したあとに、徐々に乳頭が片方だけ陥没してきたかな……?というときは、念のため乳腺科へ受診して病気が原因でないか確認をおすすめします」
治療法は?
「真性乳頭の場合は、形成外科での乳頭陥没手術を受けることで改善できます。今後授乳の予定があって治療を希望する人は、医師に相談してみてくださいね。健康保険適用がされることも多いです。
しかし、妊娠・授乳中は乳房だけでなく、乳頭も大きくなります。もしいま妊娠していないのなら、今のご自身の乳頭を見て心配する必要はありません。陥没した乳首を引き出す乳頭吸引機や、小さい乳首を補助してくれる乳頭保護器など、授乳グッズも数多くあります。また。赤ちゃんは順応力があるので、どうか安心してくださいね」
母乳が出る、出ないの差とは?
「大きい乳房、大きい乳首だからといって、たくさん母乳が出るわけではありません。
出産をすると、子宮が収縮するために“オキシトシン”というホルモンが分泌されます。すると、乳腺もギュッと収縮し、ミルクを放出しやすくなります。また赤ちゃんが乳頭を吸う刺激を受けて、脳下垂体から母乳をつくるための“プロラクチン”というホルモンが分泌されます。このホルモンのスイッチが上手く入ってくると、母乳が生成され、その後も生成が続くというわけです。
乳腺がしっかり発達していても、ホルモンのスイッチが入らないとうまく授乳はできません。なので、ひとりめは母乳が出なかったのに、ふたりめはジャンジャン出たということもあるのです」
母乳を増やし、上手な授乳をするためには?
「残念ながら自分自身で母乳の量をコントロールすることはできません。例えば、生まれた赤ちゃんが未熟児で保育器に入っていた場合は、赤ちゃんに吸ってもらえないので、ホルモンのスイッチが入りにくくなってしまいます。ほかにも、脳でホルモンのバランスをとっているので、自分自身が緊張している場合も、うまくホルモンが出ず、母乳が少なくなることがあります。
ホルモンのスイッチの稼働が上手くいけば、無意識に母乳はつくられるので、どうか悩まないで。子どもを産む前に、母乳の量を増やそう、乳首の形は大丈夫かなど、心配したり努力する必要もありません。考えすぎないことが大切ですよ」
Point
・母乳をつくるためのホルモンスイッチがうまく入ると、母乳の生成が続く・自分自身で母乳の量のコントロールはできない
・子どもを産む前に、自身の母乳の量や乳首の形を心配したり、努力する必要はない
文/木土さや
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長
認定NPO法人 乳房健康研究会 副理事長
1986年筑波大学医学専門学群卒業後、筑波記念病院およびつくばメディカルセンター放射線科を経て1991年東京逓信病院乳腺外来開設、米国ワシントン大学メディカルセンターブレストヘルスセンター留学後、2000年NPO法人乳房健康研究会を立ち上げ日本でピンクリボン活動を始動。2008年ピンクリボンブレストケアクリニック表参道開設。患者ひとりひとりの心に優しく寄り添う診療の傍ら、乳がんに関する正しい情報の発信と、死亡率低下に貢献するためのピンクリボン活動も展開している。乳がん撲滅への願いを込めて東京2020聖火ランナーを務める
ピンクリボンブレストケアクリニック表参道