健康・ヘルスケア
2021.2.10

女性のアルコール依存症が増えているって本当?適切な飲酒量ってどれくらい?【女医に訊く#145】

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2017年の患者調査によると、アルコール依存症の総患者数は推計4.6万人。しかしアルコール依存症の診断基準に現在該当する人、またはかつて該当したことがある人は100 万人を超えるとの報告もあり(厚生労働科学研究「WHO世界戦略を踏まえたアルコールの有害使用対策に関する総合的研究」)、多くの人が専門的治療に繋がっていない可能性があります。アルコール依存症について、精神科専門医の松島幸恵先生にお話をうかがいました。

アルコール依存症ってどんな病気?

アルコール依存症は飲酒を続けることによって脳機能に変化が生じ、お酒の飲み方を自分の意志ではコントロールできなくなる病気。家庭や社会生活にも影響を及ぼすほか、大脳萎縮や肝障害、乳がん、骨粗鬆症など、さまざまな病気やけがの原因となります。女性のアルコール依存症は、昔は稀でしたが、女性の社会進出が進んだことやストレスがきっかけで年々増加したと考えられ、今では依存症全体の約2割を占めると推測されています。

適度な飲酒量ってどのくらい?

「節度ある適切な飲酒」となる量は人にもよりますが、日本の成人男性の場合、純アルコール量換算で1日20g以下。これはビール500ml、日本酒1合弱、25度焼酎100ml、ワイン2杯程度に相当します(厚生労働省「健康日本21」)。一日の飲酒量がこの3倍になると、アルコール依存症のリスクが高まるとされています。

「ただし、女性は男性よりも体も肝臓も小さく、体内の水分量が男性より少ないため、同じ体重・同じ飲酒量であっても血中アルコール濃度が高くなります。また、アルコールの代謝能力も平均すると女性は男性の3/4程度しかないため、早期に肝硬変やアルコール依存症になりやすいともいわれています」と語るのは、精神科専門医の松島幸恵先生。

女性の飲酒量は一般的に男性の半分から2/3程度にするのが安全とされており、純アルコール量換算で1日10g程度に抑えることが好ましいとされています。これは、グラスワインなら1.6杯程度、ウイスキー(シングル)なら1杯、14度の梅酒(ダブル)なら1.6杯程度! お酒が好きな方は注意が必要です。

「コロナ下のステイホーム期間中アルコールを外で飲む機会は減りましたが、家で飲む人も多いようです。終電がないことや、一人で飲むことが増えて飲酒量が増加しないように気をつけてください」(松島先生)

わたしってアルコール依存症?

アルコール依存症の診断には専門医による診察が必要ですが、CAGEテストというアルコール依存症のスクリーニングテストがあります。以下の4つの質問に、「はい」「いいえ」で答えてみましょう。

 

1)あなたは今までに、飲酒を減らさなければいけないと思ったことがありますか?
2)あなたは今までに、飲酒を批判されて腹が立ったり、苛立ったりしたことがありますか?
3)あなたは今までに、飲酒に後ろめたい気持ちや罪意識を持ったことがありますか?
4)あなたは今までに、朝酒や迎え酒を飲んだことがありますか?

4項目中、2項目が「はい」の場合、アルコール依存症の可能性が高いといわれています。「依存症かな?」と思ったら、早めに専門医に相談してみましょう生)

アルコール依存症と診断されたらどんな治療を行う?

女性のアルコール依存症には、(1)短期間で依存症となり、患者年代のピークが30代と若い、(2)摂食障害やうつ、自殺未遂などさまざまな精神的問題を抱えていることが多い、(3)配偶者の大量飲酒や家庭内暴力など、環境に大きく影響される、(4)自責感が強い、などの特徴があるといわれています。

そのため断酒教育と並行して、それらの背景に焦点を当てた介入や治療が必要になることも。医療機関では認知行動療法や集団精神療法などの心理社会的治療を柱に、薬物療法も補助的に用いられます。

「アルコール依存症のお薬には、抗酒薬・飲酒抑制薬・減酒薬の3系統があります。アルコール依存症から抜け出すには、これらの治療を医療機関内で行いながら、医療機関外では断酒会などの自助グループに参加して、アルコールに頼らず日常生活を送る基盤をつくることが大切です」(松島先生)

精神科専門医

松島幸恵先生

文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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