健康・ヘルスケア
2021.2.3

依存症は治る? 家族や友人が依存症かもと思ったらどうしたらいい?【女医に訊く#144】

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「孤独の病」ともいわれる依存症。依存症はどのようにして引き起こされ、どうしたら治るのでしょうか? 依存症に詳しい精神科専門医の松島幸恵先生に教えていただきました。

依存症にはどんな種類がある?

「依存症には大別して『物資への依存』と『行動への依存』の2種類があります」と話すのは、精神科専門医の松島幸恵先生。

タバコがやめられない「ニコチン依存」、お酒がやめられない「アルコール依存」、覚醒剤などがやめられない「薬物依存」などは「物資への依存」。一方、「行動への依存」にはパチンコや競馬などがやめられない「ギャンブル等依存」、破産するまで買い物がやめられない「買い物依存」、性犯罪につながりうる「セックス依存」、窃盗を繰り返す「窃盗癖(クレプトマニア)」、インターネットにはまり外出もままならなくなる「ネット依存」などがあります。

「依存は“快楽”や“達成感”を“手軽”に得られるもので起こりやすいといわれます。『バンジージャンプ依存』とかを聞かないのは、お金も時間もかかるため毎日はできないから。お酒やスマホのゲーム、ネットショッピングなど、すぐに手が出せるものが依存になりやすいのです」(松島先生)

どうしてやめられなくなってしまうの?

私たちの脳の中では、神経細胞がさまざまな情報伝達を行っています。例えば、飲酒によりアルコールが体内に入ると、脳内にドーパミンという快楽物質が分泌されます。このドーパミンが脳内に放出されると、中枢神経が興奮し、それが快感・喜びにつながります。この感覚を脳が報酬(ごほうび)と認識すると、その報酬(ごほうび)を求める回路が脳内にでき上がってしまうのです。

「さらに、脳内に報酬を求める回路ができあがった上で、アルコールを体内に取り込むことが習慣化されると、快楽物質が強制的に分泌されることが繰り返されます。すると、次第に喜びを感じる中枢神経の機能が低下し、快楽・喜びを感じにくくなり、不安や物足りなさが増していきます。その結果、より強い快楽・喜びを求めアルコール量が増えていくという悪循環に陥ってしまうのです」(松島先生)

依存症は一生の闘いって本当?

では、依存症は治るのでしょうか? 脳に一旦報酬回路ができ上がってしまうと、脳を以前の状態に戻すことは難しくなります。しかし、さまざまな助けを借りながら依存対象を“やめ続ける”ことで、“回復する”ことは可能であると松島先生は言います。

「依存症は糖尿病や高血圧のような慢性疾患ですから、付き合い方が大事。やめ続けることに失敗しても、またそこからやめ続けることを再開することが必要です。そのためには、正直に自分の気持を伝える場所があることや、孤立しないことが重要だといえるでしょう」(松島先生)

家族や友人が依存症かなと思ったら専門機関に相談を

依存症はほとんどの場合、当事者が自ら気づくことはできません。家族や友人の日常生活がおかしくなっているなと感じたら、タブー視せずに指摘して治療につなげてあげる必要があります。

しかし、依存症は欲求をコントロールできなくなる病気です。自覚がない本人に対して周囲からの叱責や処罰だけでは解決にはなりません。それどころか、かえって責められた本人がストレスを感じ、余計にアルコール等の依存が強まってしまうこともあります。

「とはいえ、本人が依存症により問題を起こした時、家族や周囲の人がフォローし続けてしまうと、自分の問題に直面できないため依存から立ち直ることができませんし、共依存に陥る可能性もあります」と松島先生。

まずは怒らずに、『前と違うし、ちょっとおかしいと思う。私は心配している』というメッセージを出してみて。身内だけで解決しようとせず、なるべく状態が悪化していない早期のうちに、自助グループ、地域の保健所、精神保健福祉センターといった専門機関に相談してみましょう。

「同じ依存症の家族をもつ方たちが悩みを共有する家族会に参加してみるのもいいと思います。専門機関や家族会に相談することは恥ではありません。自分たちだけで悩むことはやめて、ぜひご相談ください」(松島先生)

精神科専門医

松島幸恵先生

池袋オリーブメンタルクリニック院長。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。日本医師会認定健康スポーツ医。1999年、聖マリアンナ医科大学卒業後、都立松沢病院精神科研修医、都立府中病院精神科、山角病院精神科、錦糸町クボタクリニックなどを経て現職に。産業医として都内の企業でも勤務している。
文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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