頭痛の種類はひとつじゃないってホント?真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日々の生活で生まれる美容の疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は「頭痛」について。頭痛の種類はひとつじゃないってホント? 東京頭痛クリニックの丹羽潔先生にお話を伺いました。
Q:頭痛の種類はひとつじゃないってホント?
日本で約4000万人もの人が悩まされているという頭痛。今までとくに頭痛で悩んだことがなくとも、「リモートワークで在宅勤務をするようになってから頭が痛いと感じるようになった」という話も耳にします。頭痛はズキズキだったり、ジンジンだったり、ズーンだったり、日によって痛み方が違ったりもするけど、これって同じ頭痛なのでしょうか。それとも、いろんな種類があるの? さっそく、この疑問を丹羽先生にぶつけてみました。果たしてその答えは?
A:ホント
「頭痛は、最新の研究でわかっているだけでも367種類あります。そして、大きくふたつに分けることができます」(丹羽先生・以下「」内同)
頭痛の分類
「ひとつは片頭痛や肩こり・首こりなどから発生するもの、運動によるものなど日常、慢性的に感じる慢性頭痛で、“一次性頭痛”と言います。これが約8割。残りの2割は“二次性頭痛”といって、くも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎、緑内障、蓄膿症など、病気に関連した症状のことを指します」
慢性頭痛の三大頭痛とは
頭痛に悩む約4000万人のうち、3人に1人は慢性頭痛。これは、月に1回以上、頭痛症状が出る状態で、自分のことを頭痛持ちと自覚する目安にもなっています。
慢性頭痛には、三大頭痛と呼ばれる主たる症状があります。この原因や具体的な治療法をお聞きしました。
■緊張型頭痛
【概要】
「慢性頭痛の中で患者数がもっとも多い、一般的な頭痛です。これは、筋肉の強張りによるもので、主な原因は肩こり。長時間同じ姿勢が続いたり、身体が冷えたり、仕事のストレスなどの精神的なことで筋肉が緊張状態に陥ると症状が出やすくなります。また、日本人は着物が似合うなで肩&柳腰の体型が多く、肩にこりを感じやすいため、ほかの国よりも緊張型頭痛になりやすいといわれています」
【痛み方】
「痛み方の特徴は、頭をギューっと締めつけるような痛みがずーっと継続すること、頭がスッキリしないことです」
【治療法】
「対処療法として、鎮痛剤や筋肉の緊張をやわらげる薬を処方しますが、ガチガチにこり固まった筋肉をほぐす習慣をつけるのがいちばん! 疲労の蓄積で慢性化している人には僧帽筋や胸鎖乳突筋、肩甲挙筋、首のストレッチを治療に取り入れるほか、入浴など生活習慣の指導も行います」
■片頭痛
【概要】
「患者数が1000万人を超え、ホルモンバランスの関係から女性に多いとされる頭痛です。片頭痛持ちの85%ほどは頸椎にストレークネックなどの異常があり、緊張型頭痛と併せもっている人が多いです。例えばストレッチで頭痛が楽になることもあれば、逆に痛みが悪化したこともある…という経験がある人は両方の頭痛持ちであると考えて良いでしょう」
【痛み方】
「痛み方の特徴は、血管が拡張してこめかみや目の奥あたりにズキズキと拍動性の痛みがあること。お酒を飲んだときに感じる頭の痛さに似ています。緊張型頭痛とは違って、入浴や軽く身体を動かしたときなど、血行が良くなることで痛みが悪化するのが大きな特徴です。
痛みの悪化に伴って吐き気やめまいといった自律神経系の症状も見られます。まぶしい光を見たとき、天気がくずれそうなとき、生あくびが出る、やけに喉が乾くなど何かしらの予兆があって症状が出るという人がほとんど。痛みのピークが2~3時間と短い日もあれば何日も続く場合もあり、日常に支障が出やすいのです」
【治療法】
「治療は片頭痛に効く薬を処方するのが基本です。服用しすぎると薬物乱用頭痛を引き起こしてしまうため、生活を見直すことで頭痛回数を減らすなど根本治療にも取り組んでいただきます。暗い部屋で横になったり、頭を冷やしたり、コーヒーを飲むなどの血管を収縮させる行為で一時期的に症状が緩和する場合もあります」
■群発頭痛
【概要】
「具体的な原因ははっきりしていませんが、女性よりも男性に多いとされる頭痛です。まったく頭痛が起きない時期もあれば、発作期間(群発期)中は数か月、ぼぼ毎日のように痛みが続くことも。目の充血や涙、鼻水や鼻詰まりといった症状を伴い、睡眠後の深夜に発作が起こることが多いのが特徴です」
【痛み方】
「痛み方の特徴は、片側の目の奥あたりから突き刺すような強烈な痛みがあること。よく“目玉がえぐられるような痛み”と形容されています。群発期はあまりの激痛で壁に頭を打ちつけたくなったり、動き回らずにはいられないなど過度なストレスにさらされます」
【治療法】
「アルコール、タバコ、不規則な生活が発作を誘発させやすいとされているので、群発期は禁酒禁煙をして睡眠時間を十分に確保するのが大切。その上で発作を抑える薬や鎮痛剤といった内服薬、症状によっては注射薬や点鼻薬などを用いて治療をしていきます。重篤な疾患が原因となっている場合もあるため検査と診断は慎重におこなわれます」
“マスク頭痛”と“薬物乱用頭痛”
「世界的に見て頭痛の全体患者数は平均的な日本ですが、日本人に多い傾向&国民性を感じ取れる頭痛があります。それは“マスク頭痛”と“薬物乱用頭痛”。とくにwithコロナの時代を迎えた今、マスク頭痛に悩む人は急激に増えていますね」
マスク頭痛とは?
「マスク頭痛は自分で吐いた二酸化炭素を常に吸っているせいで頭の血管が拡張し、ズキズキと痛みます。また、マスクのひもで咬筋やこめかみを圧迫されて首・肩まわりの筋肉が強張り、頭痛持ちでない人でも頭が痛いと感じるように。
さらに梅雨時期から夏にかけては、マスク内は湿気がこもり、サウナに入っているような環境になります。湿度が高いと汗をかいても蒸発されない=体の熱を発散できず、熱中症のような状態に陥るのです。
これによる頭痛は脱水を起こして体内の塩分濃度が下がっているので非常に危険! また冬は乾燥対策として加湿器をかけているオフィスもあると思いますが、こまめに水分と塩分の補給を行なって脱水にならないよう注意してください」
薬物乱用頭痛とは?
「薬物乱用頭痛は鎮痛剤の使用過多が原因です。頭が痛くてつらくても〇〇しなくては、という真面目な国民性が反映されていると思われますね。
痛み止めは基本的に服用可能な日数があり、それ以上服用し続けると薬物乱用頭痛を引き起こします。この症状が出るのは、複合鎮痛薬と呼ばれる市販薬を常用している頭痛持ちの人がほとんど。頭痛がどれだけつらいかを知っているからこそ、予防的に服用し続けてしまうのです。
なぜ鎮痛剤を服用し続けると頭痛が起こるの?
「そもそも痛みとは、何かしらの刺激を受けると脳が痛みの信号を出して初めて感じるもの。これを仮に“痛みの司令塔”としましょう。痛み止めの効果はせいぜい4時間程度しか持続しませんが、実は鎮痛成分は体内に48時間以上残っています。その状態で服用を続けると鎮痛成分が常にはたらき続けることになりますよね。鎮痛成分がはたらき続けるなら頭痛に悩まされることもなくなるのでは…とメリットがあるようにも思えます。
ところが痛みを感じにくくなった状態に陥ると脳内では考えてしまい、司令塔が自分の出番はないと判断し、痛みのコントロールができなくなってしまうのです。すると、ちょっとした痛みに対して敏感に反応してしまい、頭痛を感じる頻度に比例して服用する量も増えていくという悪循環に。薬を飲んでも効かない、と言っている人はほとんどがこの状態です」
薬物乱用頭痛の治療法は?
「薬物乱用頭痛の治療はまず体から鎮痛成分を抜くことから始めます。この治療は非常に難しいので、自己流ではなく頭痛専門の外来にかかってください。月に1~2回程度ならば市販薬でも問題ないと思いますが、5~6回と頻繁に繰り返す人は専門機関でしかるべき治療を受けていただき、鎮痛剤を正しく効果的に服用する方法を知っていただきたいですね。
今は市販薬が簡単に手に入るし頭痛持ちであることに慣れてしまった人は多いかもしれません。しかし、たかが頭痛、されど頭痛。決して侮ってはいけません。命に関わる頭痛かどうかを1回で判断することは難しいのですが、当院のように頭痛を専門としている医療機関ならなるべく詳細に頭痛の種類や対処法を診察できると思います」
文/井上ハナエ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
東京頭痛クリニック理事長。東海大学医学部を卒業後、ドイツ、アメリカへ留学。大学病院で頭痛や脳卒中を中心に脳神経内科診療・研究に携わり、2005年に日本で開業医としての道を歩み始める。自身も片頭痛や群発頭痛といった頭痛症状と戦いながら頭痛外来の開設を果たし、国内外より好評を受けて2015年に「東京頭痛クリニック」を開院。頭痛のエキスパートとして講演会やメディア出演も多数。著書に『めまいを治す63のワザ+α』(保険同人社)、『神経救急・集中治療ハンドブック 第2版』(医学書院)などがある。
■東京頭痛クリニック