血の巡りが悪くなると、肩こりや冷え性、むくみ、生理不順が悪化するって本当?【女医に訊く#129】
気温がグンと下がる秋冬は、冷えや運動不足により血行が滞りがち。特に今年は、新型コロナウイルス感染症の影響で外出する機会も減っており、血行不良がさらに進行する可能性があります。血行不良が引き起こす不調と予防法について、血液専門医の濱木珠恵先生に教えていただきました。
血行不良はどうして起こるの? 体にはどんな影響がある?
私たちの体に流れている血液は、酸素や栄養を末梢の細胞まで送り届け、そこから二酸化炭素や老廃物を回収して運ぶ働きがあります。心臓から遠く離れた足先の細胞が活発に働けるのも、血液のおかげ。血の巡りが悪くなると、栄養分や酸素が行き渡らなくなるうえ、疲労物質や耐性物質が残り、肩こりや腰痛、冷え性、むくみ、生理不順など、さまざまな体の不調が引き起こされるのです。
「美的世代で心配なのは、西洋医学的な病気としての動脈硬化などで血管が閉塞してしまう血行障害よりは、東洋医学的な意味合いでの『血の巡り』。若い人の場合、血管の異常で血流が途絶えることは少ないのですが、ストレスや運動不足のせいで末梢での血液の流れが悪くなってしまったり、疲労物質が滞ったりすることが多いのです」と語るのは、血液専門医の濱木珠恵先生。
例えば、仕事で座りっぱなしだと、お尻が圧迫され下半身からの血液の流れが滞ることも。逆に立ち仕事が多い人は、重力に引かれて下肢に血流が停滞し、むくみにつながってしまいます。さらに、精神的な緊張状態が続く人は、交感神経の働きで末梢の血管が締まるため、末梢での血液の流れが悪くなって手足が冷えたり、頭痛や肩こり、疲労などに悩まされたりしやすくなります。東洋医学的には、月経に関連した症状などもお血(けつ)という血の滞りが関係すると言われています。
血行不良はどうしたら改善できるの?
最近、いつ運動をしましたか? 就職後や出産後は時間に追われ、まったく運動をしていないという人も多いのではないでしょうか? 血行不良を改善するには運動がいちばん。血流は筋肉の収縮によって促されます。
「運動不足の人は筋肉を動かしていないので、こり固まっています。このために血流が滞りやすくなり、さらに肩がこるなどの症状が悪化するのだと思います」と濱木先生。
筋肉を刺激して動かすと、毛細血管のすみずみまで血液が流れるようになっていきます。また、適度な運動は交感神経の緊張をほぐすリラックス効果もあります。血行不良が気になる人は、足首やふくらはぎを動かすなど、簡単なストレッチから始めてみましょう。誰もができる動的ストレッチとしては、ラジオ体操も有効です。
妊娠すると脚がむくんで血管が浮き出てくるのはなぜ?
妊娠中は母体と赤ちゃんの両方に血液が必要になるため、体を巡る血液は大幅に増量します。また、お腹の赤ちゃんが大きくなってくると、重くなった子宮が脚の方から上がってくる太い静脈を圧迫するようになってしまいます。その結果、足の静脈には血液が停滞。足の疲れやむくみが起こりやすくなってしまうのです。
「水撒きのホースを踏んづけたらパツパツに膨れるように、血管も血が戻れなくなると膨らんだり、張って浮き出てきたりします。この状態が『下肢静脈瘤』です」と濱木先生。
先生によると、静脈瘤にはいろいろなタイプがあり、お年寄りの場合は血管の中にある逆流防止弁が壊れて血液が溜まっていることが多いものの、妊婦の場合は血管が壊れていないケースが多く、出産後、数か月で静脈瘤は消えることが多いそう。
「ただし2回目、3回目の出産となると、逆流防止弁が壊れて出産したあとも残るかもしれません。気になる方は弾性ストッキングを着用したり、休憩中はできるだけ脚を挙げたりして、血液を心臓に戻りやすくして。出産後、数か月経っても目立つときは、皮膚科を受診し、必要に応じて血管外科などの専門医を紹介してもらいましょう」(濱木先生)
生理と上手く付き合っていくにはどうしたらいい?
重い生理痛や生理不順、大量出血など、月経がくるたびに我慢してはいませんか? 月経は個人差はありますが、50歳前後まで毎月付き合わなくてはいけないもの。決して無理はせず、困ったときは婦人科や内科に相談してほしいと濱木先生は言います。
「『生理が重い人はこんなもの』『忙しいから健康状態が悪いのは仕方ないかも』と、我慢しているつもりもなく我慢しているときがあるんですよ。辛ければ痛み止めを飲んでもいいですし、低用量ピルを使うとか、漢方を試してみるとか、対応の仕方はいくらでもあります。筋腫などの病気が隠れている場合もありますから、きちんと病院に行って相談してください」(濱木先生)
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医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック新宿 院長。日本内科学会認定内科医。日本血液学会認定血液専門医。北海道大学医学部卒業後、国際医療センター、虎の門病院、国立がんセンター中央病院、都立府中病院、都立墨東病院を経て、2016年より現職。貧血内科や女性内科などで女性の健康をサポートしている。