血液型によって、性格やかかりやすい病気が違うって、本当ですか?【女医に訊く#126】
みなさんは自分の血液型をいつ調べましたか? いったい血液型によって、何がわかり、どのような違いが生じるのでしょうか? 血液型と性格、病気の関係性について、血液専門医の濱木珠恵先生に教えていただきました。
血液型と性格に関係性ってあるの?
日本人におけるABO式血液型の割合は、おおよそA型40%、O型30%、B型20%、AB型10%といわれています。いったいこの血液型で何がわかるのでしょうか。
「血液型は基本的に赤血球のタイプをみているんですね。赤血球の細胞の表面についている糖鎖(グルコースなどの糖が鎖状に連なったもの)やタンパク質の違いによって判断しているのです」と語るのは、血液専門医の濱木珠恵先生。
例えば、赤血球の表面にA抗原(生体に免疫応答をひきおこす物質)がある人はA型。同様に、B型にはB抗原、AB型にはAとBの両抗原がありますが、O型にはどちらの抗原もありません。
「すごく単純化していってしまえば、血液型は赤血球の種類の違いだけですから、それだけで性格に差が出るかは、何とも言えないといわれています。そもそも人間の性格は四等分に分類できるわけではありませんから、血液型による性格診断は面白い話として使うくらいがいいかと思います」(濱木先生)
血液型によってなりやすい病気やなりにくい病気があるの?
2020年6月、米・マサチューセッツ内科外科学会発行の医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)』に、新型コロナウイルスの感染と血液型で興味深いデータが発表されました。イタリア・スペインの医療機関で確認された重症患者1610人の遺伝子と、非感染者2205人の遺伝子を比較した結果、A型の人は平均値よりも45%呼吸器不全を発症しやすく、逆にO型の人は35%発症しにくかったというのです。そもそも、血液型によってなりやすい病気やなりにくい病気があるのでしょうか?
「統計学上、どの血液型にこの病気が多かったというような研究結果は出ており、血液型によってかかりにくい病気、かかりやすい病気はあるらしいといわれています」と濱木先生。
生物にはウイルスなどの異物が侵入すると、それを攻撃したり排除する「抗体」という自己防衛システムがあります。例えば、A型の赤血球にはA抗原(免疫反応を引き起こす物質)があるため、Bに対する抗体はもっていますが、Aに対する抗体はもっていません。逆に、O型の赤血球には抗原がないため、Aに対する抗体もBに対する抗体も両方所有しているのです。
「そうすると、もし敵が血液型の抗原に似ているものをもっている感染症の場合、両抗体をもっているO型は上手く闘えてしまいますよね? 実際、O型の人は結核にかかりにくいともいわれていますから、新型コロナウイルスに関してもあくまで可能性ですが、血液型によってリスクの違いは出てくるかもしれません」(濱木先生)
我が子の血液型を知りません。いつ調べたらいい?
みなさんは自分の血液型をいつ知りましたか? 昔は生まれたときに血液型の検査を行っていましたが、最近では、ほとんどの産院で検査をしないといいます。いったいなぜなのでしょうか?
「大人は骨の真ん中の骨髄というところで赤血球をつくりますが、赤ちゃんは肝臓などでも赤血球をつくるため、赤血球の膜抗原が安定せず、きちんとした反応が出てこない場合があるんです」と濱木先生。
先生によると、万が一、事故等にあって輸血が必要になったときは、本人の申告にかかわらず、必ず病院で血液型を調べるため、血液型を知らなくても特に困ることはないとのこと。それでも血液型を知りたい方は、子どもが小さいうちは無理に検査せず、学童期以降に調べましょう。
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医療法人社団鉄医会ナビタスクリニック新宿 院長。日本内科学会認定内科医。日本血液学会認定血液専門医。北海道大学医学部卒業後、国際医療センター、虎の門病院、国立がんセンター中央病院、都立府中病院、都立墨東病院を経て、2016年より現職。貧血内科や女性内科などで女性の健康をサポートしている。