健康・ヘルスケア
2020.9.24

卵巣あたりにチクチクした痛みがある…これってなに? 医師に聞いた「卵巣痛」のホントのところ

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胃でもない、腸でもない。女性特有の下腹の痛みに悩まされる人は多いようです。チクチク痛むと、「これって卵巣の病気なのかな…… 」と心配になってしまいますよね。あの痛みの原因はなんなのでしょうか。今回は卵巣の病気について東京・人形町にある四季レディースクリニック 院長の江夏亜希子先生に伺いました。

生理ではない時期にチクチクした下腹痛…原因は?

生理と関係ない時期に下腹部にチクチクとした痛みを感じる人がいるようです。あの痛みは卵巣に関係しているのでしょうか?

卵巣と生理との関係は?

女性の生殖器である卵巣…もちろん名前は知っているけれど、体の中でどんな役割を担っているのかよくわからないという人もいるのではないでしょうか? そこでまずは、卵巣のはたらきや生理との関係について江夏先生に教えていただきました。

「女性の下腹部には鶏卵大の子宮、その左右に親指頭大の卵巣があります。卵巣には生まれた時から決まった数の卵子を持っています。その数、なんと約200万個!

その数は年齢とともに減っていき、思春期に入る10歳頃には30万、20歳頃には10万、そして50歳前後で0個になります。思春期になるとその中から毎月1個が選ばれ、子宮に向けて卵子を押し出すことを排卵と言います。

毎月1個選ばれた卵子の周囲に水風船のような“卵胞(らんぽう)”を作り、これを“破裂”させて子宮に向かって押し出します。その卵胞で作られる女性ホルモン・エストロゲンが、子宮内で卵子の居場所になる子宮内膜(赤ちゃんのベッドに例えられる膜)を作ります。

卵巣の排卵跡には黄体ができ、そこから作られる黄体ホルモンが子宮内膜を維持して受精卵が着床するのを待ちますが、妊娠しなければ、排卵の約2週間後に黄体がしぼんでホルモンが作られなくなり、子宮内膜が剥がれ、血液とともに腟(ちつ)から排出されます。これが生理(月経)です」(江夏先生・以下「」同

ちなみに、排卵と生理を混同している人は意外と多いそうです。

「妊娠するために大切なのは、あくまでも排卵。生理とは、排卵の約2週間後に起こる“妊娠しなかったというサイン”とイメージするとよいでしょう」

チクチクと卵巣が痛む…原因は?

「生理じゃない時期に下腹部がチクチク痛む…」。 あの痛みの原因のほとんどは「排卵痛」と呼ばれるものだそう。

<排卵痛>
「生理と生理のど真ん中、次の月経の約2週間前に数日間、チクチクとした痛みがある場合は、“排卵痛”の可能性が高いと考えられます。前述のとおり、通常親指大の卵巣の表面に3cm近い卵胞ができ、破裂して卵子を放出するのが排卵。痛みが発生してもおかしくはありません。もちろん感じない人の方が多いようです」

<PMS(月経前症候群)>
「排卵痛以外で考えられるのは月経前症候群(PMS)。妊娠に備えて排卵後の卵巣から分泌される黄体ホルモンによって起こるさまざまな症状のことをこう呼びます。特に子宮や腸の動きを鈍くするはたらきがあるので、生理前は便秘になりやすいもの。子宮の充血や便秘による腸の動きによる痛みをチクチクと感じる人も多いようです」

…果たして、子宮や卵巣の痛みを正確に識別できる人はいるのでしょうか?

「女性の生殖器は意外と“鈍感な臓器”なのです。もし子宮や卵巣が痛みに敏感だったとしたら、性交や妊娠、出産は大変な“苦行”になってしまいますよね。下腹部の“チクチクとした痛み”と言って受診される患者さんは多いですが、診察しても問題ないことがほとんどです」

ストレスは卵巣の痛みや腫れの原因になる?

ストレスが体や心の不調を引き起こすことは知られていますが、ストレスが原因で卵巣に痛みが生じることはあるのでしょうか?

「結論から言うと、ストレスと卵巣の痛みは関係ありません。ストレスの影響で一時的に排卵がうまく起こらないことはあるでしょう。また、卵胞がうまく破裂できずに卵巣が腫れ、痛みを感じる人もいますが、この腫れは時間とともに元の状態に戻り、機能性嚢胞(きのうせいのうほう)と呼ばれます。

また過度なダイエットなどによって排卵が止まり、無月経になることはあります。その場合は排卵の準備自体が起こらないので、卵巣の腫れや痛みはむしろないはずです。ただし、一般的にストレスを感じているときには様々な痛みを強く感じやすいという傾向はあるようです」

病気が原因で卵巣の痛みは起こる?

それでは、卵巣の腫れや痛みを起こす婦人科系の病気はありますか?

子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)

「子宮内膜症とは、月経として排出されるはずの子宮内膜が子宮の外に飛び火し、子宮以外の場所で月経を起こしてしまう病気です。中でも、卵巣の表面に血液が溜まり、卵巣が腫れているように見えるものを卵巣チョコレート嚢胞と呼びます。

卵巣チョコレート嚢胞が破裂すると、激痛が起こりますが、そこに至るまでは卵巣の痛みで気づくことはほとんどなく、強い月経痛で受診して診断されることがほとんどです。性交痛、排便痛などがあることが多いですが、これは卵巣の痛みというより、子宮・卵巣周囲の癒着(ゆちゃく)による痛みと考えられます。

子宮内膜症は、多産だった昔の女性に比べて初経が早く出産回数が少ない現代女性に急増しています、また月経が止まっている妊娠中は病状が進行しにくいことからも、“偽妊娠療法”、すなわち排卵を止めて子宮内膜を薄く保つ低用量ピルなどのホルモン治療が予防や治療に有効です。もちろん、妊娠を望むときには早く妊娠すること自体が治療になりますが、子宮内膜症があると半数の人が不妊に悩むともいわれています。若い時から月経痛が強い人ほど子宮内膜症になりやすいこともわかってきており、月経痛が軽いうちから放置せず、早く治療を始めて発症させないことが重要です」

卵巣腫瘍(らんそうしゅよう)

「卵巣にも他の臓器と同様に腫瘍ができます。良性のものは卵巣嚢腫(のうしゅ)、悪性のものを卵巣がんと呼びます。いずれも小さいうちは無症状です。悪性のものは急激に大きくなって破裂し、気づいた時には腹部全体にがんが広がっていることも多く、初期で見つけることがとても難しいがんです。良性の場合、大きくなるスピードはそれほど速くなく、痛みを自覚できることは稀です。しかし、ある程度の大きさ(一般的には5㎝)を超えると、卵管と一緒にねじれる茎捻転(けいねんてん)のために急に激痛が起こり、緊急手術が必要になることがあります。

卵巣はお腹からも腟からも見えないため、子宮頸がんのように細胞を直接採ってがん検診をすることができません。超音波(エコー)検査などで腫れているかどうかを確認できても、最終的には手術をしないと良性と悪性の区別はつきません。なので、卵巣に腫れがある場合、定期的な経過観察をして、急に大きくなる時やエコーで特徴的な陰が見える時にはMRIや腫瘍マーカーで精密検査をして手術を検討します」

卵巣の病気の有無はかかりつけ医でチェックを!

卵巣は痛みに鈍感な臓器であり、病気を発症していても卵巣自体に痛みや腫れは起きにくいことがわかりました。では、卵巣の病気から身を守るためにはどうすればよいのでしょうか?

悪化しているかは検査を受けなければわからない

「実は私自身も排卵痛を感じていました。でも、それが排卵痛だと判断するにはエコーを当てるしか方法がありません。

卵巣は沈黙の臓器とも呼ばれ、強い症状が出た時には、病気がかなり進んだ状態であることがあります。チョコレート嚢胞の破裂、卵巣腫瘍茎捻転で激痛を起こして救急搬送、緊急手術なんてことはできれば避けたいですよね。手術が必要な場合、緊急手術より予定手術の方がリスクも下がりますし、ご本人の心の準備、家庭や仕事の調整もできますよね」

卵巣の声なき声を聞くには?

「“私、職場や市区町村で婦人科検診を受けているから、卵巣も異常ないはず、と誤解している人も多いようです。公費の補助が出る対策型のがん検診では、死亡率低下を有効性の指標に設定されており、婦人科検診で現在有効性が認められているのは、子宮頸がん検診のみ。卵巣のチェックは主に超音波(エコー)で行いますが、卵巣がん検診として有効性を認められてはいません。婦人科検診を受けていても、残念ながら卵巣までは診てもらえていないことがほとんどです。

ですから、何か気になる症状がある時には早めに婦人科を受診することが大切です。腹痛や生理痛がひどい、生理不順などの症状があれば保険診療で検査、治療が受けられます(超音波の検査料は3割負担で約1,600円)。無症状で検査を受ける場合は自由診療となり、料金は医療機関ごとに異なります。職場や自治体の子宮がん検診を受ける際、オプションで卵巣もエコーで診てもらえるか確認するとよいでしょう。

卵巣の状態は日々変化しています。以前の状態と比較すると異常を見つけやすいので、できれば同じ医療機関で続けて検診を受けたほうがよいでしょう。そういう意味で、信頼できる“かかりつけ婦人科”を見つけておくのはとても大切です。定期的に通える医療機関が見つかるまでは、エコーの写真をもらっておくこともおすすめ! 受診の際に持参していただくと、変化を追えるので参考になります」

四季レディースクリニック 院長

江夏 亜希子先生

宮崎県生まれ、鳥取大学医学部卒。2010年、東京・日本橋人形町に四季レディースクリニック開院。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本体育協会公認スポーツドクター。思春期から性成熟期、更年期、老年期と女性の一生を通じた健康をサポートできる「女性のかかりつけ医」を目指している。
四季レディースクリニック ▶︎
 取材・文/江夏恭子

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