新型コロナウイルスの症状で話題の、「味覚障害」について教えて!【女医に訊く#122】
新型コロナウイルスの症状のひとつとして話題になったのが「味覚障害」。いったい味覚障害はどのようなメカニズムで生じるのでしょうか? 口腔外科専門医の梯(かけはし)裕恵先生に味覚障害の種類と原因についてうかがいました。
味がわからない…これって味覚障害!?
味覚障害とは、味に対する感度が低くなったり、味を感じなくなったりする症状のこと。本来とは異なる味を感じる、何も食べていないのに口の中に苦味や塩味などを感じるといった味覚異常もあります。
「味覚には甘味、酸味、塩味、苦味の4つをはじめ、さまざまな種類があります」と語るのは、口腔外科専門医の梯裕恵先生。梯先生によると、味覚の異常は大きく2つに分類できるそう。
「味覚低下(無味覚)は味覚の減退で、4つの味覚とも低下することが多いです。もうひとつは異味覚で、ときに渋味や異常な味を感じることをいいます。新型コロナウイルスによる味覚障害は詳しいことはわかっていませんが、舌の味覚をつかさどる味蕾(みらい)や神経へのウイルスの障害に加えて、嗅覚障害によって匂いがわからなくなることによるものと考えられます」(梯先生)
味覚障害は、どうして起こるの?
「味覚は舌だけで感じているように思われがちですが、のどの付近の粘膜などでも感じています。舌の前後やのどの付近で味覚を感じる神経はそれぞれ異なるのですが、脳腫瘍や外傷、手術などの合併症により、これらの神経の根もとに異常が起こると、味覚異常が生じるのです」と梯先生。
しかし、ほとんどの味覚異常は末梢性のもの。ストレスや加齢により、舌や口の粘膜に存在する味蕾が少なくなったり働きが悪くなったり、唾液が出にくくなり口腔乾燥感が強くなって起こることが多いそう。
「また、カンジダというカビの一種である口腔常在菌が、舌の表面にびっしりついて白くなると、味覚に影響が出ることがあります。そのほか、がん治療のための放射線や抗がん剤、亜鉛不足、飲んでいるお薬の副作用、歯周病なども味覚異常の原因と考えられており、それぞれの原因に合わせて治療が行われます」(梯先生)
味覚の異常を放置してはいけない理由とは?
「そもそも味覚には、食べ物の味を感じて食欲を刺激したり、食べ物の味を識別して危険なものを食べないようにしたりする働きのほか、唾液や消化液の分泌を促進して消化を進める働きがあります」と梯先生。
美味しいものを楽しんで食べるためにも、必要な栄養を摂取して健康を維持するためにも、味覚はとても大事なのです。
特に、新型コロナウイルスの感染が拡大している今は、「味がわからない」と感じたり、家族などから「料理の味付けがおかしい」と指摘されたりすることが続いたら要注意。早めに味覚障害の診療を行っている歯科や口腔外科、耳鼻咽喉科などを受診しましょう。。

文/清瀧流美
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