生理に悩まされない新時代が到来!?平安から現代まで、生理の歴史から見る“月経観”の変化
生理をテーマにした漫画のヒット&映画化、新プロジェクトの発足、生理用品の目覚ましい進化、etc…。なんだか今、「生理」周りに新たな旋風が巻き起こっています。これまでなんとなく秘め事扱いされてきた生理について、もっと語り合い、もっと知れば、もっとラクな付き合い方ができるはず!ということで、今回は美的世代が気になる「生理事情」について徹底解剖していきます。社会の“月経観”の変化や生理の歴史について歴史社会学者の田中ひかるさんに伺いました。
【目次】
・「生理事情」なう
・生理のリアルが語られ、つらさを制御できる時代へ
・生理の歴史
「生理事情」なう
\美的クラブで「生理」に関するアンケートを実施!(2019年11月・n=221)/
Q.生理についてどのような悩みがありますか?(複数回答)
1位 生理痛 160人(72.4%)
2位 PMS 112人(50.7%)
3位 生理中の不快感 84人(38%)
美的世代の大半は、生理について何かしら悩んでいる!
生理痛に悩んでいる人の割合は回答者の7割強、それに次ぐPMSも過半数以上。その数値からも、毎月やってくる生理が多くの女性にとってつらいものとなっていることは事実。
Q.生理の悩みについて、誰かに相談しますか?(複数回答)
YES 63.3%
NO 36.7%
悩みがあっても4割弱の人は誰にも相談しないまま
6割を超える人が生理の悩みを隠さず、誰かに相談すると回答した一方で、「恥ずかしい」「話しづらい」などの理由で、誰にも相談することなく我慢している人も少なくないと判明。
でも、“生理は孤独に悩むことじゃない!” 今、「生理」の世界にそんな新たな旋風が起きています。
生理のリアルが語られ、つらさを制御できる時代へ
妊娠や出産と密接に関わり、女性になくてはならない大切なものでありながら、なんとなくずっとタブー視されてきた「生理」。「今、そんな世間の月経観を覆す『第3次生理革命』が起きています」と、歴史社会学者の田中ひかるさんは話します。
「第1次は、平安時代からの生理を“穢れ”とする慣習が公に廃止された1872年。第2次は『アンネナプキン』が世に出た1961年。この使い捨てナプキンの誕生は、それまでの脱脂綿による面倒で不衛生な経血処置のイメージを、ポジティブに変える大きな出来事でした。そして、生理用品の飛躍的な進化や生理の対処法の多様化によって、さらに捉え方が変わってきたのが第3次の現在。もはや生理はタブーではありません。さまざまな選択肢の中から自分に合うモノやコトを選び、上手に付き合うことでどんどん生きやすくなる。そんな時代です。
映画『生理ちゃん』の中に、11歳の少女かりんが『(生理になって)いいことなんか何もない』と言い放つシーンがあります。確かに生理になると煩わしいことばかり。それなのにこれまでは表立ってその感情を伝えづらい雰囲気でした。それが普通に言える世の中になってきたのは喜ぶべきこと。しかも、その煩わしさを適切な選択によってコントロールできるようになったのは大きな進歩です」
生理の歴史
【平安〜明治時代】
生理は「穢(けが)れ」として忌み嫌われた
◆生理中の女性は「月経小屋」で過ごした
平安時代、中国から「血の穢れ」説が伝来し、「月経禁忌(タブー)」の慣習が、宮廷から仏教界、貴族へと広がる。江戸時代には庶民の暮らしにも浸透し、穢れは火を介して移るという考えから、生理中の女性は家族と炊事や食事を別にする「月経小屋」に隔離された。この「月経小屋」は1970年代まで存在している。
【1872年 第1次生理革命】
「月経禁忌」が公に廃止された
◆明治政府の法律で「穢れ」扱いが取りやめに
明治政府が「今より産穢憚(さんえはばか)り及ばず候事」という法令を発布し、平安時代から続いた「月経禁忌」が公に廃される。とはいえ、男尊女卑の言い訳に生理を利用、生理中の女子の勉学を禁ずるなど、まだまだ女性にとって生理を前向きに捉えられない風潮は多く残っていた。「月経小屋」の存続もそのひとつ。
経血処置のために、さまざまな「月経帯」が登場
◆不衛生からの病気を避けるため月経帯が進化
日本で最初に既製の生理用品ができたのは明治時代。布製のT字帯の股部分にゴムを貼り、脱脂綿を当ててはくタイプ。それまでは粗末な紙や綿を腟に詰めたり、当てたりしていたため、不衛生で子宮の病気になる人も多かった。大正2年に登場した「ビクトリヤ月経帯」は国産の薄ゴムの使用により機能性とコストカットを両立し、話題に。
【1961年 第2次生理革命】
「アンネナプキン」が誕生!
◆女性の生理ライフをポジティブに変えた立役者!
日本初の使い捨てナプキン「アンネナプキン」の生みの親は、当時27歳の主婦、坂井泰子さん。’21年に発売されたアメリカの「コーテックス」から遅れること40年、もっと快適で、日本人の体型に合う生理ナプキンを!との強い思いがカタチに。使い心地の良さが多くの女性たちの心を捕え、爆発的にヒットした。
【1970年代以降】
使い捨てナプキンの進化
◆薄い&漏れないを追求し、使い心地がどんどんUP!
当初、使い捨てナプキンの主な素材は紙や綿だったが、第1次オイルショック(’73年)の紙不足をきっかけに綿状パルプにシフト。結果、ナプキンの厚みは半分になった。その頃から、ユニ・チャームや花王などのメーカーは、“薄くても高い吸収力”を追求&実現し、次々とヒット商品を出していくことに。
生理用ナプキンは厚いという概念を逆転させてヒット!
’76年に登場したユニ・チャーム「チャームナップミニ」は、「まだ、お厚いのがお好き?」というメッセージのCMで話題に。
高分子吸収体による抜群の吸収力で“漏れ”が激減!
「多い日も安心」のコピーで知られる花王「ロリエ」が誕生したのは’78年。高吸収型ポリマーの採用で“吸収量が多く、逆戻りしない”を訴求。
【現在 第3次生理革命】
生理にきちんと向き合い、悩みを抱え込まない時代の到来!
つらくて煩わしい生理期間を、少しでも楽に過ごすためのアイディアやコンテンツが続々と生まれている現代。生理用品ひとつにしても選択肢が豊富で、しかも情報収集や商品購入がネットでできるなど利便性もUP。悩みや好みに応じたMYベストを選べることで、生理へのネガティブ感はますます減っていくはず。
◆生理関連グッズの選択肢が格段に広がる
ナプキンは、吸収力や肌当たりの良さがますますUPして、まさに“つけているのを忘れる”程。経血漏れの不安を解消する月経カップや液体吸収型ショーツなど、海外発の新しいアイテムも日本に上陸し、より選択肢が広がっている。
◆「#NoBagForMe」プロジェクトが話題に!
ユニ・チャームが’19年6月に発足した「#NoBagForMe」は、社会で活躍する女性たちがより自分に合った生理ケアを行うことを推進するプロジェクト。主旨に賛同した5人のメンバーと共に、時代が求める新しい生理用品の開発などを行っている。
◆生理をキャラクター化した漫画『生理ちゃん』が話題に!
「大変なのを生理のせいにできないから大変なんです」―そんなセリフに共感する女性が続出。毎月やってくる生理を擬人化し、痛みをパンチで表現するなどのユニークな発想、心にじーんと響くストーリーが話題となった。第23回手塚治虫文化賞短編賞受賞。
二階堂ふみ主演で映画化。毎月の生理が愛しくなる!?
生理がテーマの漫画がまさかの映画化!ということで、公開前から話題騒然だった映画『生理ちゃん』。女性からは「共感の嵐!」、男性からも「笑えて泣けた」と高い評価を得ている。
生理の歴史について教えてくれたのは…
歴史社会学者 田中ひかるさん
学術博士。女性に関するテーマを中心に執筆、講演、メディア出演など幅広く活動。著書に『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)、『月経と犯罪ー女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)など。
『美的』2月号掲載
イラスト/船越谷 香 構成/つつみゆかり
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。