健康・ヘルスケア
2019.12.11

睡眠時間6時間では睡眠不足…?睡眠についてもっと知りたい!【女医に訊く#86】

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最近ぐっすり眠れていますか? 朝起きづらく日中に頭がさえなかったり、イライラしたりすることはありませんか? 睡眠不足をはじめとする睡眠問題について、睡眠専門医の柳原万里子先生にお話をうかがいました。

なぜ睡眠が必要なのか?

睡眠の役割は大きく4つ。「健康な体をつくる」「頭を冴えさせる」「記憶を整理する」「心を強くする」こと。睡眠中は明日へ向けて身体や脳を休めると同時に、新陳代謝を高めてお肌や身体の細胞を修復しています。また夢を見ている間に記憶を整理することも知られています。

睡眠不足の状態では思考や判断を行う側頭葉・後頭葉の活動の脳の活動に加えて、理性的に感情をコントロールする前頭葉の活動も低下します。頭がぼんやりするだけではなく、徹夜で変にハイテンションになったり、寝不足でイライラしたりするのはこのためです。

「寝ないで頑張った結果、せっかく持っている本来のパフォーマンスを発揮できず、情緒まで不安定になってしまうのではもったいない」と語るのは、睡眠専門医の柳原万里子先生。

ではいったい睡眠時間はどれくらい確保するべきなのでしょう?

20~30代に必要な睡眠時間は最低でも7時間!

そもそも“適切な睡眠時間”には個人差があり、また同じ人でも年齢によって変わります。年齢が低ければ低いほど長く眠る傾向にあり、一般的に1歳前後の赤ちゃんの睡眠時間は10~15時間、一方で70~80代になると5~6時間寝られたら許容範囲となります。つまり同じ睡眠時間でも20~30代の美的世代にとっては寝不足、80歳の年配の方にとっては十分、というように年齢によって違いが生じてきます。

「米国のNational Sleep Foundationによると、20~30代に推奨する睡眠時間は7~9時間。6時間以下は完全にアウトです。日本では8時間寝ていると聞くと驚いたり、成人ではなく小児の話かなと思いがちですが、実はそうではない。世界レベルで見ると日本人の睡眠時間は極端に短いことで有名です」(柳原先生)

とはいえ日本人の睡眠時間が昔から短かったかというと、そうではありません。日本人の就労者の睡眠時間は過去50年で1時間近く短縮しています(NHK国民生活時間調査より)。つまり、わたしたちは世界の人より短い睡眠時間でも大丈夫な遺伝子をもっているわけではない。わたしたちは近代化に伴う環境の変化の影響を受けて睡眠不足になってしまっていることが考えられます。

「睡眠を優先する日」をつくりましょう

「お肌や情緒を含め心身ともによいコンディションで過ごすためには、美的世代では本当は毎日7時間半くらいは眠りたいところ。でもそうはいかない方が多いのもこの世代の現実です。忙しくて眠る時間がない方はぜひ、睡眠不足を溜めすぎないための作戦を考えましょう」と柳原先生。

慢性の睡眠不足が積もりに積もった“睡眠負債”という状態になってしまうと、数日長く眠っただけでは睡眠不足の悪影響は解消できません。普段から睡眠不足の借金を溜めすぎないように、こまめに睡眠不足を解消しておくことがポイントです。

「毎日長く眠ることが難しくても、週末のどちらか1日はできれば目覚まし時計をかけずに長く眠る、加えて週の半ばにもう1日“睡眠を優先する日”をつくる、などの工夫をしてみるのはいかがでしょうか。例えば、水曜日にはその日ではなくてはならない仕事や約束以外は予定を入れない、家事も別の曜日に回す、などルールを決めて数か月前から計画的にスケジュールを調整すると、忙しい方でも今よりは早くベッドに入られる日が増えるかもしれません」(柳原先生)

睡眠不足が今より少しでも改善された結果、仕事や家事の効率があがり気分よく過ごされる時間が増えるなど、毎日の歯車が良い方向へ回るようになってくれれば嬉しいですね。

 

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睡眠専門医
柳原万里子先生
睡眠総合ケアクリニック代々木医師。東京医科大学睡眠学講座兼任講師。医学博士。日本睡眠学会睡眠専門医。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医。女性ならではの視点で、細やかな診療を行う。■睡眠総合ケアクリニック代々木

文/清瀧流美 撮影/黒石あみ(小学館)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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