健康・ヘルスケア
2019.6.25

便秘、頭痛、肩こり…その原因は胃?腸? 原因や悪化要因を症状から判断!

病院に行く程ではないけれど、なんだか胃腸が…という30代女性が増えています。ひとくくりにされがちですが「胃」と「腸」は別の働きをする所。どちらの調子が悪いのか、また両方なのかを、まずはチェックしてみましょう。胃腸のトラブル対策について松生クリニック 院長の松生恒夫先生に伺いました。

あなたの不調の出どころは胃? それとも腸? 症状をチェックしてみましょう

「言うまでもなく、人間の体は毎日の食事が資本。口からとった栄養が全身の細胞にたどり着くには、まず胃、そして腸といった消化 ・吸収のステップがスムーズに行われる必要があります。それらの機能が低下していると、全身に栄養が不足して不調のオンパレードに」とは、大腸治療の権威、松生恒夫先生。胃や腸を元気にする生活習慣への切り替えは、あらゆる不調一掃への第一歩です!

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胃の機能が低下しているかも?
検査をしても異常が見つからないのに、胃に痛みや不快感が続く人は、なんらかの理由で胃の機能が低下している「胃弱」の状態。慢性化する前に生活の見直しを!

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腸内環境が乱れているかも!?
「第2の脳」といわれる腸は、体内最大の免疫器官。腸内環境が乱れ、腸の働きが悪くなっていると、腹部だけでなく、冷え、頭痛、肩こりなど全身に不調が現れます。

 

食べてから排泄まで! 各消化管の役割をここでおさらい

ひとくくりにしがちだけれど、胃と腸では働きが違います。

\食べ物が便に変わるまで胃腸はいろいろと忙しい!/
食べることと排泄することは、私たちが意識的に行うものだけれど、その間の消化・吸収・解毒はすべて無意識。胃や腸をはじめとした消化管がせっせと働いているからこそ、健康な体を維持できるのです。

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【胃の働き】

食べ物を溶かして消化の第一段階
おなかの左上、横隔膜の下にあり、肋骨に保護されている袋状の器官。食道から食べ物が送り込まれると、ペプシンなどを含む胃液が胃壁の内側の粘膜から分泌。周りの筋肉の動きで攪拌されて、どろどろの粥状になる。一部はここで消化され、大半は小腸へ。

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胃は空腹のときは縮んだ状態。食道から食べ物が入ってくると胃底部が大きく膨らみ、胃壁の内側の粘膜から胃液が分泌。

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食べ物と胃液が混ざり合い、さらに胃壁の粘膜の外側にある筋肉のぜん動運動で攪拌。どろどろの粥状になって十二指腸へ。

 

【小腸の働き】

食べ物の消化・吸収・分解
小腸は十二指腸、空腸、回腸の3つからなり、約6~7mにも及ぶ長い臓器。胸の下から骨盤内に複雑な形で収まっている。運ばれてきた食べ物の栄養を効率良く消化・吸収するほか、免疫細胞のリンパ球の6割が集まるのもここ。また、神経伝達物質セロトニンも小腸で作られ、貯蔵されていることが明らかになった。

 

【大腸の働き】

食べカスの水分を吸収して便を形成
長さ約1.5〜2mの大腸は、外側を平滑筋、内側を粘膜で覆われている。小腸から送り出された食べカスは、ここで腸内細菌によって分解され、さらに水分が吸収されて泥状に変化。ぜん動運動によって徐々に便が形成され、S状結腸にためられる。肛門に近い直腸まで移行したら、脳からの指令で便意が生じて排泄へ。

 

【豆知識!】胃酸と胃液の違いは?

胃液とは、胃角膜にある胃酸から分泌される消化液のこと。胃酸はその主成分で、強い酸化を示し、食べ物の消化や、食物と一緒に体内に取り込まれた微生物などの殺菌を行う。

栄養を吸収し、不要なものはすべて出すことが大事

口からとった食べ物が形を変えながら進んでいく、長いトンネルのような道のりが「消化管」。口→食道→胃→小腸(十二指腸→空腸→回腸)→大腸(盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸)→肛門へと至ります。

「口でかみ砕かれた食べ物は食道を通って胃に入り、胃液によって溶かされてどろどろの粥状になります。そこで一部は消化されますが、多くは小腸へ。ほとんどの栄養素と水分は、小腸を通過する間に吸収されます。そしてその残りカスはゆっくりと大腸に送られて、食べ物の有害物質、毒素などと一緒に便となって肛門へ。この大腸から肛門へのスムースな排便が非常に大切です。排泄がうまく行かないと、体内に毒素や老廃物をため込むことになり、不調や病気の原因になってしまいます。また、小腸には、食べ物と共に体内に入ってきたウイルスや細菌を排除するリンパ球が体全体の6割も集まっています。その点で腸は、体内で最大の『免疫器官』でもあるのです」(松生先生)

美的世代に多い胃腸トラブルを症状から判断!その原因や悪化原因は?

胃のムカつき、胸焼け、吐き気、ゲップ、胃の痛み、食欲不振、胃もたれ…etc.

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疑われるトラブルは…
【慢性胃炎】
胃酸を分泌する胃腺が萎縮したまま修復されずに進行する胃角膜の疾患。胃酸の分泌減少が長引いている状態です。また近年は、胃にとっての悪玉菌=ピロリ菌の長期感染によって慢性胃炎になるケースも注目されています。

【機能性ディスペプシア】
知覚過敏、運動機能の純化など、胃の働きに異常が起こり、不快感が慢性的に続く疾患。炎症や潰瘍があるわけでもなく、検査をしても明確な原因は見つからないのがやっかい。精神的な要因も大きいという報告あり。

【逆流性食道炎(胃食道逆流症)】
胃から逆流した胃酸によって食道が傷つき、炎症が起こる病気。原因は、食道のぜん動運動の鈍さ、逆流を防止する筋肉の緩み、胃酸の過剰分泌などに加え、便秘で腹圧が上がって胃を押し上げて起こるケースも。

 

便秘、下痢、冷え、むくみ、 肌あれ、頭痛、肩こり、腹痛、腹部膨満感…etc.

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疑われるトラブルは…
【腸内環境の悪化】
便秘や冷えなどは、腸内環境の乱れを示すサインであり、逆に腸内環境を乱す要因にも。また、腸内環境の悪化はてきめんに免疫力の低下を招くため、肌や体、精神など、全身のさまざまな不調につながります。

腸内環境を決定する3大要素
(1)食事因子
(2)腸管機能
(3)腸内細菌叢
「腸内環境は、食事の内容(食事因子)、腸管のぜん動運動を引き起こすような食事のタイミング、そして腸内に膨大な数が存在する腸内細菌のバランスによってコンディションが決まります。つまり、腸のトラブル対策にはこの3要素の改善が不可欠です」(松生先生)

胃や腸の不調を悪化させる共通要因

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【要因1】食生活の乱れ
夜は遅くまで暴飲暴食、朝は食べずにダッシュで出勤…。そんな乱れた食生活を送っていると、便秘になって当然です。朝食は胃活動をスタートさせるスイッチ。朝食抜きは体内時計を乱します。

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【要因2】 ストレス
仕事や人間関係によって生じる不安感や緊張感、イライラ、長時間のデジタル作業による目の酷使、心身の疲れ…そんなストレス過多な現代人の日常は、間接的に胃や腸にもダメージを与えます。

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【要因3】 運動不足
運動不足だと血の巡りが悪く、体が冷えて腸の働きも低下します。そんな「腸冷え」症状は女性に多く、便秘の原因に。運動しないと腸のぜん動運動が少なく、そのことからも便秘になりやすい。

 

その他、急激な下痢や嘔吐、白っぽい便、発熱や腹痛は…

→ウイルスが原因の【感染症胃腸炎】かも?
流行は2~4月でも、年間を通して発症の可能性あり
「胃腸の痛みや嘔吐、下痢などが急激に襲う「急性胃腸炎」は、主にウイルスや細菌などへの感染。症状は2〜3日で治まります。つらくてもそれがか体本来の防衛反応なので、強い薬などで止めない方が賢明です」(松生先生)

 

胃腸のトラブル対策について伺ったのは…
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松生クリニック 院長 松生恒夫先生
まついけつねお/医学博士。大腸内視鏡検査で4万件以上の実績をもつ。「便秘外来」では、地中海式食生活、漢方療法、音楽療法などを取り入れた診療で効果を上げている。著書も多数。

 

『美的』7月号掲載
イラスト/すぎうらゆう 構成/つつみゆかり

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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