妊娠に適した年齢や身体づくりとは?【女医に訊く#63】
今はまだ結婚も出産も考えられないけど、いつかは子どもを産みたい……と、漠然と考えている方も多いのではないでしょうか? 晩婚化の影響もあり、いわゆる「高齢出産」といわれる時期に出産する人も増えてきました。現代において、妊娠、出産に適した年齢というのはあるのでしょうか。また、妊娠・出産のための体づくりは、妊娠してからでいいのでしょうか? 産婦人科専門医の吉形玲美先生にうかがいました。
現代の妊娠適齢期はいつ?
2017年の人口動態調査(厚生労働省)によると、女性の平均初産年齢は全国平均30.7歳でした。1975年は25.7歳、1985年は 26.7歳、1995年は 27.5歳、2005年は 29.1歳と上昇傾向にありましたが、2015年より30.7歳となっています。
高齢初産は分娩障害、染色体異常などのリスクが高まるといわれており、日本産科婦人科学会は35歳以上の初産婦を「高齢初産」と定義しています。では、妊娠に適した年齢とはいくつなのでしょうか? 産婦人科専門医の吉形玲美先生は、「適齢期は肉体的な適齢期と社会的な適齢期のふたつの側面から考えてほしい」と言います。
「肉体的には20代前半に妊娠・出産するのはとてもいいんです。しかし、現代では20代前半ではまだ学生であったり、社会人になったばかりだったり。経済的な自立もひと昔前と比べて遅くなっていますよね。それを踏まえると20代後半から30代前半あたりが適齢期といえるかもしれません。とはいえ、それ以前だから、それ以降だから適していないということではありません。自分のライフスタイルやタイミング、考え方を尊重するのがもっとも正しいといえます。産婦人科はそれぞれの出産に寄り添い、もっともベストな方法を探ってサポートしていくのが仕事です」(吉形先生)
生活の改善は妊娠してからで大丈夫?
妊娠すると、健康志向が急速に高まる女性も多く見られます。しかし、生活習慣をいきなり変えることは簡単ではありません。妊娠前から健康的な生活を送ることは、妊娠しやすい体づくりにも、お母さんと赤ちゃんの健康にもつながるとされています。
「自身の健康について、真摯に向き合うことに早すぎるということはありません。たとえば、喫煙は卵巣の状態を悪くするといわれています。また、副流煙もよくないですね」(吉形先生)
妊娠しやすい体づくりに必要な栄養素とは?
妊娠しやすい体づくりや、お母さんと赤ちゃんの健康を保つには、食生活の見直しも必要です。特に、若い女性はタンパク質、カルシウム、鉄分が不足しやすいため、この3つの栄養素は意識して摂るようにしてほしいと吉形先生は言います。
「出産時の大出血に備えて血液が固まりやすくなるぶん、妊娠中は血が薄くなります。また、母乳は血液からできているため、出産後も授乳すればするほど血が足りなくなります。妊娠前から鉄分を十分に摂って貧血を防ぎましょう」(吉形先生)
葉酸も大切です。葉酸は脳の発育にも影響する重要な栄養素。
「葉酸は緑黄色野菜や大豆食品、レバーなどで摂れる栄養素です。妊娠中は不足しがちなので、意識してみてください。不安な人はサプリメントなどで補うのもよいでしょう」(吉形先生)
ブライダルチェックは受けたほうがいいの?
子宮や卵巣の疾患やホルモンバランスの乱れは妊娠・出産に影響します。
「まずは基礎体温をつけること。また、20歳になったら婦人科の検診を受けるといいでしょう。子宮頸癌検査や妊娠の妨げになる子宮内膜症や筋腫などの有無の検査で状態がわかります。異常がある場合にも早期発見は大きなメリットとなります。赤ちゃんが欲しいなと思ったら、ブライダルチェックなどのレディースドックを受けるのもおすすめです」
ブライダルチェックとは、将来、妊娠・出産を考えている女性のための婦人科検診のこと。大きく分けて「妊娠出産に直接関わる婦人科系臓器の検査」と「妊娠出産に影響を及ぼす病気の検査」のふたつがあり、妊娠・出産に向けての簡単な健康チェックや子宮・卵巣のチェック、性感染症および母子感染症に関する検査などを行います。
ブライダルチェックは婦人科系疾患の早期発見にもつながります。将来の妊娠・出産のためにも、自身の健康のためにも、自分の体の状態を知っておくことは大切です。
文/清瀧流美 撮影/黒石あみ
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