健康・ヘルスケア
2019.5.8

妊娠すると足がむくんだり血管が浮き出てくるのはなぜ?【女医に訊く#59】

 

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妊娠中、下肢のむくみや血管が浮き出る静脈瘤に悩む妊婦さんが多く見られます。なぜ、妊娠すると体がむくんだり、静脈にトラブルが起こってしまうのでしょう? 食事などで防ぐことはできるのでしょうか? 皮膚科専門医の慶田朋子先生に教えていただきました。

妊娠後期になると足がむくむのはなぜ?

妊娠20週を過ぎると、体内を回っている血液量は急激に増加し、妊娠30週になると、妊娠前と比べて1.41.5倍もの血液が体内を循環します。ところが、赤血球量より血液中の水分である血漿量が増加するため水血症状態(血液中の水分の割合が異常に増えた状態)となり、体はむくみやすくなります。

「妊娠中は心拍出量や腎臓の血流量も増加するため、ポンプである心臓やろ過装置である腎臓にも負担がかかります。また、通常は心拍出量と循環量が増えると血圧は上がりますが、妊婦さんの場合、プロゲステロンの影響で血管が拡張し、動脈圧が下がるため、よりむくみやすくなってしまうのです」と話すのは慶田朋子先生。

妊娠後期、下肢が夕方にむくんでくるのは生理的なもので、心配ないことがほとんどです。むくみに対して神経質になり過ぎないようにしましょう。

妊娠中のむくみを防ぐためにするべきことは?

妊娠中は、下肢のむくみに悩む妊婦さんが多く見られます。対処法としては、効果の持続性はあまり望めませんが、マッサージやリフレクソロジーに、むくみの改善と、自覚症状(不快感・痛み・疲れなど)を軽減させる効果があるといわれています。

「利尿作用があるものをちょっと摂っていただくのもいいでしょう。昔は、『妊娠中、コーヒーを飲んではダメ』といわれていましたが、実は偏頭痛持ちの妊婦さんにはコーヒーがおすすめ。1日2杯程度でしたら全然大丈夫ですから、カフェインを摂って利尿するのもアリですよ」(慶田先生)

利尿を促すには、スイカやブドウ、バナナなど、カリウムを摂るのもおすすめです。さらに、屈伸などのストレッチで足を動かしたり、弾性ストッキングをはいたりして、むくみを予防しましょう。

膝の裏やふくらはぎの血管が浮かび上がってきた…原因は?

妊娠中、膝の裏や太もも・ふくらはぎの血管がボコボコと盛り上がったり、赤紫や青紫の血管が浮かび上がったりする「下肢静脈瘤」が現れることがあります。原因としては、妊娠による骨盤内諸臓器の充血と下半身の静脈うっ滞、エストロゲンによる皮下組織のむくみ、プロゲステロンによる静脈壁の弛緩などが考えられますが、体質的な要因も加わっています。

妊娠によって発症した静脈瘤の場合、産後に戻ることもありますが、戻らなかったものに対しては、弾性ストッキングや弾性靴下着用による圧迫療法を行います。

「重度の場合は血管外科で積極的な治療することもできます。気になるようでしたら、出産後に相談してみましょう」(慶田先生)

下肢静脈瘤は水分を控えれば防げる?解消法は?

「静脈瘤を防ぐためにも、妊娠中は塩分を控えて、海藻類や納豆など、カリウムが多いものを食べるようにしましょう。水分を摂らないのはダメ! 脱水になると、血栓のリスクは約6倍増えるといわれています。喉が乾いてもいないのに無駄に飲む必要はありませんが、水分をきちんと摂って流すようにしましょう」と慶田先生。

あまりにも足がだるいときは、足を高くして休む、弾性靴下を履く、指圧やオイルマッサージを行う、温めるのもおすすめ。さらに、股関節回りをやわらかくするようなストレッチで巡りをよくしておくと、出産もスムーズになります。

皮膚科専門医
慶田朋子先生
銀座ケイスキンクリニック院長。医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本レーザー医学会認定レーザー専門医。東京女子医科大学医学部医学科卒業後、東京女子医科大学病院、聖母会聖母病院などを経て、2006年、有楽町西武ケイスキンクリニック開設。2011年、西武有楽町店閉店に伴い、銀座ケイスキンクリニックとしてリニューアルオープン。最新マシンと高い注射注入技術で叶える、切らないリバースエイジングに好評を博している。著書に『365日のスキンケア』(池田書店)など。
■銀座ケイスキンクリニック

文/清瀧流美 撮影/黒石あみ

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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