子宮内膜症とは?症状と原因、低容量ピルの有効性や治療法も【女医に訊く#55】
月経痛は子宮内膜症の重要なサインのひとつ。子宮内膜症は月経を有する女性の約10%に存在するといわれており、放置しておくと不妊の原因や卵巣がんに変化することもあります。子宮内膜症の症状と治療法について、産婦人科医の松村圭子先生に伺いました。
子宮内膜症とは?子宮内膜症の症状
子宮内膜症とは、本来は子宮の内側にしか存在しない子宮内膜が、卵巣や腹膜など、子宮以外の場所で増殖・はく離を繰り返す疾患のこと。子宮の内側からはがれた子宮内膜は、月経時に腟から体の外へ排出されますが、子宮以外の場所で増殖した子宮内膜は外へ出ることができず、そこで炎症や癒着を起こし、強い痛みなどの症状が出ます。
「子宮内膜症は子宮以外のあちこちで、同時多発的に生理が起こっているようなもの。特に卵巣で生理が起こると、そこで古い血が溜まって『卵巣チョコレート嚢胞』といわれる腫瘤をつくりますから注意が必要です」と話すのは、産婦人科医の松村圭子先生。
先生によると、子宮内膜症の発症は20~30歳代の女性に多く、月経のたびに病状が進行し、痛みが増していくケースが多くみられるとのこと。卵管、卵巣、腹膜での炎症や癒着が原因で不妊を引き起こすケースもあるため、気になる方は早めに受診しましょう。
子宮内膜症の治療法は? 完治するもの?
子宮内膜症の治療は、鎮痛剤で痛みを抑える対症療法や、ホルモン剤で病巣を縮小させるなどの薬物療法、手術など、症状やライフスタイルに応じて対応していきます。低用量ピルもそのひとつ。子宮内膜の増殖を抑えることで、子宮内膜症を予防したり、症状や進行を和らげたりします。
「前々回お話ししたとおり、ピルには子宮内膜を薄くして万が一排卵して受精しても受精卵を着床しにくくする作用があります。内膜が薄いということは、剥がれ落ちる出血も少なくなりますから、どこで生理が起ころうと軽く済みますし、痛みを軽減することにもつながります」(松村先生)
ただし、子宮内膜症は女性ホルモンのエストロゲンとの関係が深いため、卵巣からのホルモン分泌がなくなる閉経まで病状が悪化する可能性があります。そのため完治は難しく、閉経まで婦人科受診を行いながら付き合っていくことになります。
子宮内膜症が現代女性に増えている原因は?
子宮内膜症や子宮筋腫(子宮の筋肉にできる硬いこぶのような良性の腫瘍)は、女性ホルモンのエストロゲンによって発育します。現代の日本人女性の妊娠・出産は高齢化しているうえ、出産回数も減ったため、妊娠出産しない、すなわち生理を繰り返すということは、始終エストロゲンにさらされていることになります。
「こんなに生理の回数が多いのは、人類史上はじめてのこと。わたしの母は8人兄弟、祖母なんて13人兄弟! そこまでいかなくても、昔の女性は4~5人産んで、適度に子宮や卵巣がお休みすることで健康を保っていたわけですから、エストロゲンにさらされまくっている今の状態は、体にとっては異常事態。ホルモンは不足もいけないけど、過剰もよくないのです」と松村先生。
戦前の女性の月経回数は生涯で50回程度でしたが、現代の女性は約9倍の450回といわれています。月経のたびに症状が進行すると考えられている子宮内膜症は、現代病ともいえます。
「とはいえ、人生設計を変えるのは簡単ではありません。そういう女性にとっては、低用量ピルを上手く使うのは、理にかなっていると思います」(松村先生)

文/清瀧流美 撮影/黒石あみ
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