【女医に訊く#53】婦人科トラブル改善と避妊について…低用量ピルにはどんな効果があるの?
生理不順や過多月経など、婦人科トラブルの改善に有効な低用量ピル。MeToo運動の流れから、自分の身は自分で守るという風潮が高まるなか、日本でも女性自身が主体的にできる避妊法としても注目されています。低用量ピルの作用と種類について、産婦人科医の松村圭子先生にうかがいました。
低用量ピルってどんな薬?
低用量ピルとは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンを配合したホルモン剤のこと。日本では主に生理不順、生理痛、過多月経、ニキビ、多毛症など、婦人科系のプチ不調に、副作用が少なく改善に導くものとして、婦人科で処方されています。子宮を休ませるため、それに伴う婦人科系のトラブルが起こりにくくなり、また、服用中は妊娠しにくくなります。
「 飲み忘れがなければ、ピルには100%に近い避妊効果があります。日本の服用率は4%ほどですが、フランスやドイツでは約40%の女性が服用しているといわれています」と教えてくれたのは、成城松村クリニック院長の松村圭子先生。
ピルを1年間正しく服用し続けてたときに妊娠する確率は、0.3%。コンドーム(2%)や女性の避妊手術(0.5%)に比べて、低い割合となっています。
ピルを飲むと、なぜ妊娠しないの?
ピルに含まれているホルモンは、脳下垂体に働きかけて卵胞を成熟させるホルモンの分泌を抑えます。そのため卵胞は熟成せず、排卵が起こらなくなります。
「ピルには、(1)排卵を抑制する、(2)子宮内膜を薄くして万が一排卵して受精しても受精卵を着床しにくくする、(3)子宮頸管粘液を変化させて精子を子宮に入りにくくするという作用があります。これら3つの作用で妊娠しにくくなるのです」(松村先生)
ちなみに、ピルの服用を止めれば、通常3〜4か月までには自然な月経周期になります。
低用量ピルにはどんな種類があるの? 服用の仕方は?
ピルは1日1回1錠を、毎日ほぼ同じ時間に服用します。1シートに21錠入ったタイプと28錠入ったタイプの2種類があり、通常、月経の初日から飲み始めることを医師から指導されます。
21錠タイプは1日1錠を矢印の順に21日間飲み、飲み終わったら7日間休んで、次の日から新しいシートを飲み始めます。最後の錠剤を飲んでから約2〜4日後に月経のような出血があります。
一方、28錠タイプの最後の7錠は、ホルモンの含まれない偽薬。これを飲んでいる間に月経のような出血があります。毎日飲む習慣がつきやすいため、初心者におすすめです。
「低用量ピルはホルモンの種類もさまざまで、個人に合ったものを選ぶことができます。ピルを内服するには医師の処方せんが必要です。まずは婦人科医に相談しましょう」(松村先生)
ピルを飲み忘れた場合はどうしたらいい?
ピルを1錠もしくは2錠飲み忘れた場合は、気づいた時点でできるだけ早く1錠服用し、その日の分も通常どおり服用すれば、作用にほとんど影響はないといわれています。ただし、3錠以上(つまり3日)飲み忘れた場合は、医師に相談しましょう。
「飲み忘れを防ぐには、朝起きたらすぐ飲むなど、毎日の習慣に合わせるのがコツ。歯ブラシなど、毎日使うものの隣に置いたり、携帯電話のアラームを鳴らしたりするのもおすすめです」(松村先生)
文/清瀧流美 撮影/黒石あみ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。