“低用量ピル”で生理痛がラクになるって本当? 気になる疑問を女医が解説!
最近は避妊だけでなく、生理痛やPMS、子宮内膜症などの症状緩和に「低用量ピル」を勧める婦人科医も多いとか。ちょっと気になるという人は要チェック!
Q. 低用量ピルってなんですか?
A. 排卵を起こさせなくするピルの中でも、含まれるホルモンの量が少ないタイプです。
「自然な排卵によって分泌される女性ホルモンは、場合によって生理痛の原因になったり、子宮内膜症などの進行を促したりします。そこで女性ホルモン(特に黄体ホルモン)を含むピルを飲んで脳を勘違いさせ、自然な排卵を休ませるというもの。それにより排卵が引き起こしていたつらい症状を改善・治療できます。日本も含め、今世界で最も多く使われているのが、女性ホルモンの含有量を最小限にとどめた『低用量ピル』です」
Q. 低用量ピルを飲むメリットは?
A. バースコントロールのほか、月経困難症、子宮内膜症、PMSのつらい症状を軽減。卵巣がんのリスク軽減も!
「ピルに含まれる女性ホルモンには子宮内膜の増殖を抑える作用があり、生理痛や子宮内膜症が緩和。血中のホルモン量が安定し、PMSの改善も期待できます。また、使い続けてきた卵巣や子宮を休ませられるため、卵巣がんや子宮体がんのリスク軽減も期待できます」
Q. 低用量ピルに種類はありますか?
A. 含まれる黄体ホルモンの種類や量によって数タイプ。セレクトは医師に相談を。
「低用量ピルは、含まれる黄体ホルモンの種類によって1~3世代、配合量で1相性と3相性に分かれます。1相性はホルモン量で一定で、生理痛やPMSの緩和向き。3相性は自然なホルモン分泌の波に近づけた3段階の量で、生理不順の改善や避妊薬として出すことが多いです。現在、月経困難症や子宮内膜症に対しては保険適応のピルが処方されます」
3相性として代表的なトリキュラー28
本来の自然なホルモンバランスに近くなるように、ホルモン量を3段階に変化させた、第2世代・3相性のピル。1シートに28錠入りで、生理1日目から服用を開始。子宮内膜の安定に効果的。
1相性として代表的なマーベロン28
第3世代・1相性のピル。28錠タイプは、休薬の1週間分にプラセボ(偽薬)が入り。プラセボを抜いた21錠のホルモンの量は一定。
Q. 低用量ピルの正しい飲み方は?
A. 1日1錠、毎日同じ時間にとるのが基本。
「飲み方は、毎日1錠ずつ、同じ時間が基本です。水やお湯で飲むようにしましょう。ジュースやお茶などで飲むのは成分を変化させる可能性があるので避けてください。そのまま飲み込むのもNGです。飲み始めるタイミングは目的によっても違うので、医師に必ず相談を!」
Q. 低用量ピルを飲むと太ると聞いたのですが…
A. 低用量ピルが原因で太ることはありません。
「個人差はあるものの、ピルに含まれる黄体ホルモンの種類によってむくみが出ることがあります。むくむことで太ったと思うかもしれませんが、一般的に低用量ピルで太るという報告はありません。むくみが出にくいピルもあり、続けるうちに気にならなくなることも多いです」
Q. 低用量ピルが合わないタイプの人はいますか?
A. 血栓ができやすい人は要注意!
「喫煙者はピルの服用で血栓ができやすくなるといわれるため、たばこと低用量ピルの併用はおすすめできません。年齢的に40代以上も血栓症リスクは高まります。元々血栓のできやすい人や、家族に既往歴のある人は、初診時に血液凝固系の検査を受けましょう」
Q. 低用量ピルに副作用はありますか?
A. 飲み始めの1~3か月に、吐き気や不正出血があることも。
「飲み始めの1か月くらいは吐き気、不正出血、めまい、乳房のハリなどの症状が出る人が多いけれど、これらは突然のピルの
侵入に体が驚いて反応したまで。2か月目くらいから自然に落ち着いてくるので、様子を見ましょう。3か月以上たってもトラブルが続くようなら、服用中の低用量ピルが体質に合っていないことが考えられるので、医師に相談してください」
教えてくれたのは…
浜松町ハマサイトクリニック 産婦人科医 吉形玲美先生
よしかたれみ/医学博士。東京女子医科大学医学部を卒業後、同大学准講師を経て、非常勤講師に。2010年7月より現クリニック院長に着任。現在は診療のほか、多くの施設で予防医療研究に従事している。揺らぎやすい女性の体のホルモンマネージメントが得意分野。
『美的』6月号掲載
イラスト/いいあい 撮影/フカヤマノリユキ 構成/つつみゆかり
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。