健康・ヘルスケア
2018.5.16

女医に訊く#13|ストレスも関係?医師が解説「白髪にまつわるウソとホント」

鏡をのぞいた時、ふと気づく1本の白髪。髪をかき上げてみると「あれ? ここにも、こっちにも!」。年齢はもちろん、ストレスの影響で年齢が若くても出てくる白髪。今回の美的保健室は、そんな白髪の真実について、抗加齢医学専門医の浜中聡子先生に伺いました。

20代だと早い?「白髪が目立ち始める平均年齢」は?

白髪がチラホラ目立ち始めるのは、多くの場合30代くらい。カラーリングなどの対策が必要になるのは、40代に入ってからという人が多いようです。

「白髪は加齢と共に生じる自然な現象の1つです。女性ホルモンが減少したり、血流が低下することで、髪の成長や色に関与する細胞の働きが低下するためですね」と、浜中先生。まれに10代の頃から白髪が目立つ人もいますが、これは遺伝に関係する面が大きいそう。40代あたりになると両極端になり、白髪が多い人もいれば、1本もない人もいます。

「患者さんを診察していると、白髪は他の髪悩みに比べて、“遺伝”や“体質”に影響されるケースが多いように思います。もちろん生活習慣にも影響を受けますから、白髪が目立ち始める年齢や本数は、本当に個人差があると言えます。ですので、むやみに人と比べて焦ったり、落ち込んだりする必要はありません」(浜中先生)

そもそも白髪はなぜ出てくるの?原因は何?

白髪はどうして出てくるのでしょう?

私たちの髪はタンパク質で出来ています。タンパク質自体は本来色がなく、毛根に存在するメラノサイトがメラニンを髪に受け渡すことで、日本人の“黒髪”となるのです。

「年齢とともに毛根のメラノサイトの働きが低下して、メラニンの産生量が減ってきます。黒髪が段々とグレーや黄色っぽい色に変化していくのは、メラニンが十分産生されていないためです。時々一本の髪の中に、白い部分と黒い部分が混在するものがありますが、メラニンを作る働きが不安定になっていると考えられます。やがてメラノサイトの働きが休止すると、真っ白な髪に変化していきます」(浜中先生)

メラニンの生成が減る理由は、前述の通り女性ホルモンが減少したり、血流が滞って十分に栄養や酸素が行き渡らず、細胞の機能が低下するためと言われています。しかし、遺伝的な影響を含め、実はまだよく分かっていないことが多いそうです。

ストレスは白髪の大敵だけど「一夜にして真っ白」はウソ

仕事が大変だったり、悩み事があるとき、思わずつぶやきたくなる「あー、白髪が増えそう」というひとこと。確かに、ストレスがあると白髪が増えそうな気がしますが、実際はどうなのでしょう?

「ストレスを感じると免疫力が低下して、あらゆる細胞の産生や働きも低下しますから、毛根のメラニン生成も減少すると考えられます。ただし、一時的なストレスによる白髪の場合、精神的に落ち着いて環境も安定してくると、また黒髪に戻る可能性もあるでしょう」(浜中先生)

極度のストレスから一夜にして白髪になったとして有名なのが、フランス王妃マリー・アントワネット。しかしこのエピソード、現実的には起こりえない現象なのだとか。

「新しく生えてくる髪が全て白髪になるならまだしも、すでに生えている髪は死んだ細胞ですから、色が変化することはありません。恐らく投獄されて処刑されるまでの間に、並々ならぬストレスを抱え、白髪が増えたりやつれた印象になったのではないかと思います。それまで華々しい生活をしていた王妃が、そんな姿で民衆の前に姿を現した結果“一夜にして白髪に変わった”逸話として残されているのではないでしょうか」(浜中先生)

「硬い髪」は白髪になりやすい?白髪と髪質の関係

ネコっ毛の人は年齢とともにボリューム低下や薄毛に悩みやすく、逆に髪が硬くて毛量が多い人は、白髪になりやすいイメージがありますが……。

「そのような質問を受けることが多いので、一般的に浸透している印象なのかもしれませんが、白髪は“髪質とは関係ない”というのが実情です」と、浜中先生。ネコっ毛でも白髪に悩む人もいれば、硬い髪質で白髪がほとんど目立たない人も。

「毛量が多くて硬い髪質の人は、ネコっ毛の人に比べてボリューム感が稼げますから、まず“薄毛になりにくい”印象があるのでしょう。また毛量が一定あると、白と黒とのコントラストで“白髪が目立ちやすい”傾向があるかもしれません。ただ硬い髪が白髪になりやすいかというと、そんなことはありません」(浜中先生)

「白髪を抜くと増える」は迷信だけど抜くのはNG!

“白髪を抜くと増える”というのもよく耳にする話しですが、「これも迷信です」と、浜中先生。「抜け毛による刺激で、一気に白髪が増えるかというと、そんなことはありません。白髪の毛根はメラノサイトの働きが低下していて、次に生えてくる毛も結局白髪であることが多いため、“抜くと増える”というイメージがあるのかもしれません」(浜中先生)

増えないからといって、むやみに白髪を抜くのはNG。毛根へのダメージや髪の成長サイクルに影響を与え、新しい髪が生えてこなくなる可能性もあります。眉を抜きすぎると生えてこなくなるのと同じ原理です。

「白髪を抜いた部分が薄くなると、地肌が透けて白髪が悪目立ちすることがあります。白髪は“根元からカットするか染めるか”。このいずれかの方法が、長い視点で見ると髪や頭皮への負担が少ないように思います」(浜中先生)

 まれに病気が原因で発生する白髪もある

「白髪はほとんどが加齢によるものですが、まれに病気が関係している場合もあります。甲状腺疾患や極度の貧血の場合、髪全体の質感が低下しやすく、白髪が増える原因にもなります」(浜中先生)

甲状腺ホルモンは、髪の成長を促す働きが知られています。甲状腺の機能が低下すると、髪が細く抜けやすくなり、白髪も増える傾向が。橋本病やバセドウ病など甲状腺ホルモンに異常があるケースは女性に多くみられます。

「急に白髪が増え、体調不良を感じる場合、内科の医師はまず甲状腺を調べるケースが多いと思います。また、病気ではありませんが、過労や睡眠不足、極度のダイエットなども、白髪の要因となります。髪や爪は死んだ細胞なので、生命活動を優先するために真っ先に栄養が削られる部分だからです。白髪はもちろん、髪の質感が低下してきたら、体調不良のサインかもしれません」(浜中先生)

白髪は根本的に治らないから「予防」が大切。

残念ながら、白髪は現在のところ、根本的に解決する方法はありません。一時的なストレスではなく、加齢や遺伝が原因の白髪の場合、元通りの黒髪に戻すのは非常に難しいそうです。

「白髪の発生メカニズムに関しては日々研究が進んでいますから、今後新たな発見がある可能性もあるでしょう。ただ現在は“染める”“カットする”が、現実的な対処法です。だからこそ、白髪は増える前の“予防”が大切。食事や睡眠など生活習慣の見直しが必要です」(浜中先生)

次回は日常生活の中でできる白髪予防の方法と、できてしまった白髪のケアについて、浜中先生に教えて頂きます。

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抗加齢医学専門医
浜中聡子先生
ウィメンズヘルスクリニック東京 院長。脇坂ウィメンズヘルスクリニック大阪 顧問医師、国際アンチエイジング医学会専門医。米国抗加齢医学会専門医。女性頭髪専門外来において、多くの女性の髪悩みに向き合う。ていねいな診察ののち、内服薬、外用薬、サプリメントによる治療、点滴等、その方に最適な治療法を提案している。
■ウィメンズヘルスクリニック東京 https://www.womenshealth-tokyo.com

文/宇野ナミコ 撮影/横田紋子(小学館)

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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