健康・ヘルスケア
2018.4.17

女医に訊く#9|4月の「情緒不安定」には女性特有の原因がある!?

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4月から新しい環境がスタートした人も少なくないはず。ワクワク感がある一方で、人間関係が変化すると、気づかぬうちに心の奥にストレスが蓄積している場合も。心にモヤモヤを抱え、情緒不安定になりやすい“春ならではの女性心理”を、心療内科医の牧野真理子先生に伺いました。

情緒不安定になる理由に「女性は人と比べる」という気質が関係

自分に自信がなくなる、気づくと涙が出ている、気力がわかず働くのがイヤ、会社に行きたくない……。“五月病”という言葉があるように、春は情緒不安定に陥る人が増える季節でもあります。4~5月にかけて、心がゆらぎやすい理由とは?

「日本の年度始まりは4月なので、人事異動やクラス替えなどで環境が変化しやすい時期。この変化のなかにおいて、女性は“自身と周囲を比べやすい傾向”があります。例えば“あの人は昇進したのに自分はできなかった”とか“あの人はやりがいのあるプロジェクトに抜擢されたのに、自分は思い通りの部署にいけなかった”とか。周囲と比較した結果、自分を肯定する感覚が低下しやすくなります」(牧野先生)

さらに春は新入社員など、身近な環境に“年下の新メンバーが加わる”ことも、情緒不安定の一因とか。同僚の中には新人に対して頼りになる先輩がいる一方で、自分はうまく対応できない。すると“私はダメなのかも…”と、人と比べて自己肯定感が下がります。さらに日本では若い女性がチヤホヤされがちな風潮があり、これも“自己肯定感下げ”の原因に。

「自分も新人だった頃は、先輩に丁寧に教えてもらったり、折に触れて気にかけてもらったはず。ある程度キャリアを重ねて、今度は自分がリードする立場になったとき、甘えていられないうえに、チヤホヤされている新人を見て、“私はどうせいい年齢だし……”と感じてしまうこともある。このようなモヤモヤが積み重なることで、情緒不安定な状態に陥りやすいんです」(牧野先生)

子供の頃から外見を比較されて育ってきた女性たち

“人と比べてしまい情緒不安定になる”、これは女性に多い心理傾向といいます。これには女性が成長過程で経験する“あること”が関係しています。

「女性は男性に比べると、人生のあらゆる過程で、外見で評価される機会がどうしても多いんですね。子供の頃なら“あの子は可愛らしいね”とか“〇〇ちゃんは将来美人になるね”とか。周囲の大人たちが悪気なく発した言葉を耳にするうちに、思春期になると“あの子より痩せたい”“あの子より可愛くなりたい”という意識が生まれやすくなります。社会人になる過程でも、面接などの場面で“容姿”を意識させられた人は少なくないでしょう。これは本来望ましいことではありませんが、女性は大なり小なりそのような経験を経た結果“他者と比べること”が習慣になりやすいのです」(牧野先生)

一方で男性はというと、他者と自分を比べて情緒不安定になるケースは少ないそう。それよりも、自分ひとりのなかで淡々と努力を重ねて完結し、ストレスを溜めることが多いといいます。

情緒不安定と仕事とゴールデンウィークの関係

情緒不安定な状態から体調を崩す人が増えるのは「5月の連休明けが多い」と、牧野先生。まさに五月病という言葉の通りですが、これは日本特有のカレンダーに原因があります。

「4月から新しい環境でモヤモヤを抱えつつ、それでも1か月ほど女性たちはがんばり続けるんですね。その後4月末から5月初旬にかけて連休に入ります。休みの間は休息できますから、体も心も楽な状態を覚えてしまうんです。そして休みが明けると、学校や会社に行くのがおっくうになってしまう。朝、起き上がれなくなったり、逆に夜、眠れなくなる方もいます」(牧野先生)

これまでがんばってきた人ほど“もうがんばれない”“楽したい”“働きたくない”という気持ちが、体調に現れるのかもしれません。そんな心のSOSはまず、“睡眠の変化”に現れます。気になることがあって寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めてしまったり。「患者さんのなかには、自覚症状として“一睡もしていない”と訴える人もいます」(牧野先生)

「睡眠」と「食事」の変化は情緒不安定のサイン

睡眠のリズムが乱れると、情緒不安定な状態に拍車がかかりやすくなります。ホルモンや自律神経のバランスが乱れ、疲労感から抜け出せなくなったり、物ごとを悪い方向に考えてしまったり。気分が落ち込みやすくなる傾向も。

「日本人の5人に1人は睡眠に問題を抱えていると言われていますから、誰にとっても人ごとではない悩みですね。睡眠に加え、情緒不安定なときには“食”にも影響が現れます。つい食べ過ぎてしまったり、甘いものを欲するケースも多い。脳が疲れると糖分を欲しますから理にかなっているといえますが、特に女性は主食より甘いお菓子やアイスクリームなどに目がいって、なかにはケーキをホールで食べてしまう人もいます」(牧野先生)

ちなみに、食べ過ぎや甘いものを欲する現象も、男性にはあまり見られないそう。男性はストレスがあると“食べなくなる人”のほうが多いといいます。理由はよく分かってはいないものの、一説には脳の仕組みの違いとか。「男性はストレスが発生すると戦わなくてはいけないため、食料がなくても動けるように。女性は反対に家族の面倒を見るなどエネルギーを必要とするので、食べようとする……という説がありますが、実際のところはよく分かりません。ただ、現実的にそのような傾向はあります」と、牧野先生。

いずれにせよ、“睡眠と食”に何らかの変化が現れたら、心のSOSとして注意が必要です。

「働きたくない病」は単なる甘えとはいえないケースも

何となくだるい、起き上がるのがつらい、会社に行きたくない……。誰でも一度や二度は、そんな気分になったことがあるのでは? 本当に心がSOSを発している場合と、ちょっぴりサボりたい気分との間には、どんな違いがあるのでしょうか。

「単純に気が乗らない、サボりたいという場合、遊びの予定や楽しいと思えることであれば起き上がれるはずなんです。一方で本当に起き上がれなくなってしまう場合は、体と心がSOSを発している可能性があります」(牧野先生)

眠れない時しばらく起きていたら自然に眠くなった、もしくは夜眠れなかったぶん昼間眠くて仕方がない……。これらは“睡眠のリズムの乱れ”で、大ざっぱに表現すると“睡眠不足”の状態といえます。もちろん、この状態も心身ともに負担がかかりますから、良いとはいえません。しかし本当に不眠症に陥ると、交感神経が高ぶって、昼間も眠くならないそう。「いずれの場合も、体と心のSOSには違いありません。春先は情緒不安定になる環境要因が多い季節ですから、注意が必要ですね」と、牧野先生。次回は実際に情緒不安定な状態に陥ったとき、どのように対応したらいいかをお届けします。

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心身医療内科専門医
牧野真理子先生
牧野クリニック 心療内科 診療部長。医学博士。心身医療内科専門医。優秀臨床専門医。北里大学医学部、メルボルン大学医学部大学院卒業。働く女性たちのメンタルヘルス事情に通じ、摂食障害やうつ病の治療に取り組む。患者自身が悩みの解決法を見つけられるよう、親身なカウンセリングでサポートしている。
■牧野クリニック http://www.makino-c.net

文/宇野ナミコ 撮影/藤岡雅樹(小学館)

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