【不妊治療】早めの治療がおすすめ! パートナーと共に始める不妊治療の基本
指原莉乃さんの“採卵済み”宣言で注目を集める「卵子凍結」を始め、将来子供を産みたいと考えている方々へ、専門家による「今知っておきたい情報」を紹介します。今回のテーマは「不妊治療」。ひとりの問題ではないから、ぜひパートナーと一緒に読んで。
国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科 医長
三戸 麻子先生
みとあさこ/内科専門医。’11年より国立成育医療研究センターに入職、日本初のプレコンセプションケアセンター設立に尽力。
不妊治療
パートナーと妊活を始めて1年以上たつのに妊娠できない…それって不妊かも。助成金制度を利用して不妊治療を始めるのもひとつの選択。基本を学んでおきましょう!
01.年齢と共に妊娠率は低下し、流産リスクがアップ!
「女性が自然に妊娠・出産する確率は、35歳頃から減少を始め、40代に入ると一気に下降。それと逆転するように流産率が急上昇します。実はこの傾向は不妊治療でも同様です。たとえ高度技術の体外受精や顕微授精などで受精に成功したとしても、 母体の子宮に着床させる力や育てる力がなければ妊娠や出産は成立しません 。つまり、不妊の悩みがあって、現時点で不妊治療も視野に入れているのであれば、スタートは早い方がいいということです。まずは女性は婦人科検査、男性は精液検査を受けて、医師と相談しながら、自分たちに合う治療を始めましょう」(片桐先生)
35歳以降、妊孕性は急降下!
体外受精や顕微授精など生殖補助医療(ART)で受精しても、加齢による妊娠率・生産率(1回の治療での出産率)の低下は避けられない。
02.不妊治療の方法は、不妊原因に応じてステップアップ
「不妊治療の方法には、 タイミング法 を入り口に、 人工授精 、 体外受精 、 顕微授精 などがあり、選択した治療法で妊娠が成立しなければ、必要に応じて高度な医療にステップアップしていきます。どれから始めるかは、まず女性の卵管や卵巣機能、男性の精液の状態を検査して、 不妊の原因を見極めてから決定 。卵巣機能が低下してくる30代後半からは、早期に体外受精を試すケースが多くなりました。以前は、通院回数の多さや高額な治療費がネックでしたが、今は 排卵誘発剤の自己注射や内服、治療費の保険適用 などで負担が軽減され、若い世代で始める方も増えています」(片桐先生)
\精子の動きをチェックするフーナー検査も治療前の選択肢!/
排卵日頃の性交渉の翌日に病院で女性の子宮頸管粘液を採取して、動いている精子がどれくらいいるかを観察。精子と頸管粘液の相性もわかる。
タイミング法・・・妊娠しやすい時期に性交する
排卵の2日前頃、最も妊娠しやすいタイミングに性交する方法。排卵日を推定するために、排卵日周辺で数回の通院が必要。
人工授精・・・採取した精子を子宮に注入
男性がマスターベーションで採取した精液から良好な精子を取り出して、最も妊娠しやすい時期に女性の子宮内に注入する。
体外受精・・・体外で卵子と精子を受精させる
排卵直前に、腟から卵胞に針を刺して卵胞液と一緒に卵子を吸引(採卵手術)。あらかじめ採取していた精子と受精させる。
顕微授精・・・顕微鏡下で受精を補助 体外受精のひとつ。
顕微鏡で拡大視しながら、形態が正常で運動が良好なひとつの精子を細いガラス針に取り込み、直接卵子に注入。
03.治療費の保険適用は40歳未満で6回まで
’22年4月より不妊治療が 保険適用、3割負担 に。タイミング法や人工授精などの一般不妊治療に加え、体外受精や顕微授精など生殖補助医療も対象。生殖補助医療には年齢制限があり、 治療開始時点で女性が43歳未満 であること。治療開始時点で女性が40歳未満の場合、 子供ひとりに対して通算6回まで の回数制限も。
不妊治療中のK・K さん(33 歳)が証言!
痛みや落胆はあるけれど、6回までは前向きに進めたい
「最初に行ってみた病院では、タイミング法や漢方処方を試したのですが、授からずに転院。そこでのホルモン検査で卵巣の状態が閉経間近とわかり、まず採卵するプランに変えました。腟から卵巣に針を刺して、卵子の取りこぼしがないように吸い出された後は、ズーンとした痛み。卵子は2個採れて受精できたんですが、 胚盤胞 ※1までは育ちませんでした。しかも後に 遺産卵胞 ※2が残ったため、 低用量ピル ※3を処方され、今は1周期お休み中。1回目でかなり疲弊しましたが、保険適用であと5回はできるので、前向きに頑張ろうと思います」
【WORD解説】
※ 1 胚盤胞・・・着床できる状態に変化した受精卵。 胚盤胞が子宮内膜に着床することで妊娠となる。
※ 2 遺産(いざん)卵胞・・・通常なら排卵した卵胞は自然消滅するが、空胞となったまま卵巣内に残ってしまっている状態。
※ 3 低用量ピル・・・排卵を抑制。遺産卵胞を消滅させるために処方されることがある(ここではプラノバール)。
K・Kさんの不妊治療HISTORY
’23 年1月妊活スタート
’23 年4月A病院で検査→タイミング法、漢方処方など
’23 年11月B病院で再検査
’24 年1月人工授精のために採卵1回目→受精するも未成長
’24 年2月採卵2回目に向けて体調管理中
『美的』2024年5月号掲載
撮影/松原敬子 イラスト/斎藤充博、きくちりえ(Softdesign) 構成/つつみゆかり、大瀧亜友美、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
はなおかかなこ/産婦人科医、生殖医療専門医・指導医。2014年開設のはなおかIVFクリニック品川にて、 日々不妊に悩む患者と向き合う。