【座談会】朝からだるい、冷えや胃もたれ、気分が落ち込むetc…「秋不調」の救済メソッドを医師が伝授!

夏を終え、気候や気圧の変化で体も心も不安定になりやすいこの時期。秋の不調に悩む美的クラブメンバーを、内科・神経内科医の久手堅先生が直接診断します。
その不調の原因&対策を教えます!
「秋は朝からだるくて、目覚ましが何度鳴っても起きられないことが」
美的クラブ・柴本愛沙さん (気象予報士・39歳)
昼夜逆転で光を浴びる時間が少ないと、睡眠の質が下がります
柴本 気象予報士という仕事柄、早朝の番組出演もあって、昼夜逆転の日が多いんです。そのため普段の睡眠時間は4時間程度。春や夏はそれでもシャキッと頑張れるんですが、秋になると目覚まし時計を何個かけてもいつ止めたかわからないくらいで、寝過ごすことがよくあります。
久手堅 春夏に比べて秋冬は日照時間が減るので、昼夜逆転の生活だとさらに日光を浴びる量が少なくなります。そうすると“幸せ物質”と呼ばれるセロトニンの分泌が減ってしまうんです。セロトニンは、睡眠の質を高めるホルモン、メラトニンの原料。つまり、朝の目覚めが悪く、だるいという柴本さんは、睡眠の質に問題があるといえますね。
柴本 睡眠中に歯を食いしばったり、半目が開いていたり、夢を見ることが多いんです。やっぱり睡眠の質が悪いからだったんですね。どうしたら改善できますか?
久手堅 UVカットはちゃんとしつつ、日中1時間程度は外に出て光を浴びてください。適度に体を動かすことも必要です。
柴本 実は1年くらい前から、運動不足の解消に、毎日1万歩歩くことをミッションにしています。
久手堅 いいことですね。日光を浴びながらのウォーキングはセラトニンの分泌を促します。睡眠の質を上げるためにもぜひ続けてください。
「冷え、胃もたれ、悪夢を見るのが秋の3大悩みです」
美的クラブ・野口瑠菜さん(教育関係・27歳)
姿勢の悪さが冷えや胃もたれの一因に!悪夢は眠りが浅い証拠
野口 寒くないのにおなかやお尻を触ると氷のように冷たくて、それがだるさにもつながっているみたい。
久手堅 秋の冷えは、夏のエアコン疲れを引きずっていて、胃腸に症状が出やすいですよ。
野口 まさに! 胃もたれを感じるのも秋が多いです。
久手堅 冷えや胃もたれは、姿勢の悪さも一因です。デスクワークでPC作業の時間が長いと、首が前に出て、肩が内側に入りがち。その姿勢だと、胃が圧迫されて、もたれやすくなります。骨格もゆがんだ状態なので、血流が低下して冷えの原因にもなりますね。少なくとも1時間に1〜2回は画面から目を離し、肩を回して姿勢を正すといった習慣をつけてください。ところで、睡眠はきちんととれていますか?
野口 毎晩23時に寝て、朝6時に起きるから、7時間くらいは寝ています。でも、悪夢ばかり見るのが悩みなんです。
久手堅 朝起きて夢を覚えているのは、睡眠中に脳が半覚醒している証拠。深い睡眠をとるには、就寝前にきちんと湯船につかって深部体温を上げ、体温が下がっていくタイミングで眠りにつくようにしましょう。悪い夢を見るとなると、呼吸が浅くなっているはず。骨格を正し、呼吸を深められるピラティスなどを取り入れてみるといいですよ。
「夜中にザーザーと“頭鳴り”がしたり、午後にひどい眠気に襲われます」
美的クラブ・橋本 愛さん(アパレル・33歳)
低血圧の影響は大。血圧を自己管理しながら糖質コントロールも!
橋本 ずっと立っている仕事で、足はもちろん、肩や首も疲れるし、不調だらけ。秋は特に、朝起きるのがつらくて、午後に究極の眠気がやってきます。吐き気がするくらいの頭鳴りに襲われることも。心配で病院に行っても、低血圧と言われるだけで、特に悪い箇所は見つかりません。
久手堅 座っているよりも立っている方が、脳に血液や酸素を運ぶときに強い圧が必要です。低血圧の人にとってその負担は大きく、立ち仕事で不調が起こりやすくなるのは当然なんです。そこに秋の低気圧が重なるとさらに血圧が下がって、頭鳴りや耳鳴りなどのつらい症状が出やすくなります。そもそも低血圧の人に立ち仕事は向かないんですよね。
橋本 頭鳴りが起こるのは夜中が多いので、不安になります。
久手堅 不調は動いているときより安静にしているときに出やすいものなんです。血圧計を買って自分で測る習慣をつけると、不調の原因が低血圧と納得できるから、よけいな不安から解放されますよ。
橋本 午後にひどい眠気が来るのも低血圧が原因ですか?
久手堅 低血圧で自律神経に乱れが生じると、日中に副交感神経が優位になって眠くなります。また、昼に糖質を多くとることでも眠気が強まります。日中の眠気予防には、糖質コントロールも必要ですよ。
「出産後、気分が落ち込む日が増え、特に秋はつらいんです」
美的クラブ・鈴木香織さん(イベント業務・31歳)
自分を追い込まず、なんでも7割できればOKと気持ちを楽にもって
鈴木 5歳を筆頭に3人の子供を産み育てていく中で、気分にムラが生じやすくなり、特に秋にかけての落ち込みがひどいんです。
久手堅 気分の落ち込みはメンタルの問題と思いがちですが、実は疲れの蓄積や睡眠不足など、体力の衰えが起因のことが多いんです。睡眠はちゃんととれていますか?
鈴木 以前は8時間寝ていましたが、今は平均して5〜6時間です。
久手堅 本来の睡眠時間より3時間減った生活が続いて、たまった疲れを解消できていないのでしょう。運動で発散したり、趣味に没頭する時間もなさそうですしね。
鈴木 空いた時間は常にスマホを見ています。入浴中も寝る前もインスタやYouTubeを見てストレスを解消している感じ。頑張ってスマホ時間を減らさないとダメですね。
久手堅 そうはいっても、頑張りすぎるのは良くありません。100点満点をとろうとせず、70点くらいでOKと割り切ることが意外に大切。性格的に生真面目な方程、自律神経が乱れやすく、気分も落ち込みやすいようです。スマホで動画を見るのも、疲れをリセットできるならOK。ただし長時間に及ぶと眼精疲労や肩こりの原因になるので、こまめに休憩を挟んで程々に。スマホを持つ位置を目線より少し下にするなど、疲れないための工夫も必要です。
変化が激しい秋の気候は体調不良の大きな要因!
日照時間が短くなる
※気象庁のデータから作成
9月中旬から10月上旬にかけては、停滞前線の影響で雨が続き(長雨)、結果、日照時間が少なくなる。
台風が近づくと気圧が急降下
※イメージ図
台風は、水蒸気が凝結して雲になるときに出す熱を原動力に発達。台風が近づくと、気圧が急激に下がる。
台風が多く発生
※気象庁のデータから作成
9月は8月に次いで台風が多い月。湿気を帯びた熱い風が激しく吹き、心身に少なからずダメージをもたらす。
『美的』2022年10月号掲載
撮影/深山徳幸 イラスト/沼田光太郎 構成/つつみゆかり、金子由佳、大瀧亜友美
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
くでけんつかさ/2013年に開業。自律神経失調症外来、気象病・天気病外来など複数の特殊外来を立ち上げ、多くのニーズに応える。