尿漏れを防ぐには?骨盤底筋トレーニングをしても漏れてくるのはなぜ?【女医に訊く#209】
40歳以上の4割以上が経験しているという尿漏れ。尿漏れを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか? 尿漏れの予防方法について、泌尿器科専門医の藤﨑章子先生に教えていただきました。
尿漏れを防ぐにはどうしたらいい?
前回、女性の体は男性に比べて尿が漏れやすい構造になっており、出産や加齢で骨盤底筋が弱くなると、緊張が緩んで尿漏れしやすくなってしまうというお話をしました。では、尿漏れを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?
「腹圧性尿失禁にも切迫性尿失禁にも骨盤底筋トレーニングがおすすめです」と話すのは、泌尿器科専門医の藤﨑章子先生。
腹圧性尿失禁の多くと切迫性尿失禁の一部は、骨盤底が緩んで尿道がグラグラになっていることが原因といわれています。そこで尿漏れを防ぐには、骨盤底の筋肉を鍛えて、支持を回復させることが有効と考えられているのです。
骨盤底筋トレーニングとは?
骨盤底筋トレーニングとは、腟や肛門を意識して「締める」→「緩める」をくり返すことで、骨盤底筋を鍛える体操。ポイントは腟を引き上げるイメージで締めることと、締める際にお腹や太ももに力を入れないこと。まずは仰向けに寝た姿勢で開始して、慣れてきたら立った状態や椅子に座った状態でも行えるようにしましょう。
骨盤底筋トレーニングの方法(基本姿勢)
(1) あお向けで、足を肩幅くらいに開き、膝を立て、リラックスする。
(2)お腹に力を入れないように手をお腹にあてて気をつけながら、また、太ももに力を入れないようにしながら、10秒ぐらい腟や肛門をおへそ方向へゆっくりと引き上げるように締める。10秒が難しければ、3秒などできるところからはじめる。
(3) 締めたあとは、力を抜いて緩める。
(4)「締める」「緩める」をまずは10回くり返す。
「筋トレですから続けることも大切です。1日30回などと言っても、多くの方はなかなか続きませんから、信号待ちやテレビCM中などの隙間時間で、トレーニングを行うシーンを自分なりに決めて、日常生活に組み込むことで続けましょう」(藤﨑先生)
骨盤底筋トレーニングをしても漏れてくるのはなぜ?
自宅やジム、ヨガ教室で骨盤底筋トレーニングをしているのに、尿漏れが全然よくならない……という方はいませんか? 泌尿器科受診が必要な場合もありますが、もしかしたら骨盤底筋がうまく動かせていないのかもしれません。
「産後など、産院でまたは一般の多くの泌尿器科クリニックでも、尿漏れについて相談すると、骨盤底筋トレーニングのパンフレットだけ渡されることが多いのですが、実際は骨盤底筋がうまく動かせず、全然違う動きでトレーニングをしている方が多いですね」と藤﨑先生。
骨盤底筋がうまく動かせているか不安なときは、トレーニング中にチェックをしてみて。腟に指を入れて締まっているか確認するのがベストですが、手のひらを股に当てて触るだけでも、うまく動かせると引き上がる感じがわかります。
「それでも良くならないときは、まずは泌尿器科に相談してみましょう。必要な場合は女性泌尿器科診療に力を入れている泌尿器科クリニックを紹介してもらえると思います。クリニックのなかには、医師・看護師や理学療法士が指導してくれたり、エコーを見ながら教えてくれたりするところもありますから、コツを掴みやすいと思います」(藤﨑先生)
文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
医学博士。日本泌尿器科学会専門医。日本性機能学会専門医。日本排尿機能学会排尿機能専門医。日本東洋医学会漢方専門医。福島県立医科大学卒業後、虎の門病院、聖路加国際病院、長野市民病院を経て、2013年、四谷メディカルキューブ女性泌尿器科入職。泌尿器科の悩みを持つ女性がより豊かな生活を送れるように支援している。