40 歳以上女性の4割以上が尿漏れ経験者!?尿漏れが起こる原因とは?【女医に訊く#208】
くしゃみをしたときや笑った瞬間、尿漏れしてしまった経験はありませんか? 劇場や車内で、トイレに間に合わなかったらどうしようと不安になったことはありませんか? 尿漏れについて、泌尿器科専門医の藤﨑章子先生に教えていただきました。
尿漏れにはどんなタイプがあるの?
尿漏れ(尿失禁)とは、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうこと。身近な人から尿漏れの悩みは聞いたことがないかもしれませんが、40 歳以上の女性の尿失禁の頻度は43.9%(排尿に関する疫学的研究委員会「排尿に関する疫学的研究」日本排尿機能学会誌2003年 14巻2号p.266-277)といわれており、実際は多くの方が尿漏れを経験しています。
尿漏れは、メカニズムによりいくつかに分類されますが、主なものに次の3つがあります。
(1)腹圧性尿失禁
咳やくしゃみをしたとき、急に走ったとき、重い荷物を持ったとき、笑ったときなど、お腹に力が入ったときに起こる尿漏れ。女性でもっとも多くみられる。
(2)切迫性尿失禁
帰宅時に玄関で、台所の水仕事で、急な尿意を感じてトイレに駆け込むも少し間に合わず……など、急な尿意(切迫感)で我慢できなかったときに起こる尿漏れ。
(3)混合性尿失禁
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方の要素がある尿漏れ。
腹圧性尿失禁はどうして起こる?
「尿漏れは健康的な若い女性にはあまりみられませんが、出産により腹圧性尿失禁になる方は多くみられます」と話すのは、泌尿器科専門医の藤﨑章子先生。では、なぜ出産により尿漏れが起こってしまうのでしょう?
「そもそも女性の体は男性に比べて尿道が短いため、尿が漏れやすい構造になっています。さらに経腟分娩の場合、赤ちゃんの頭が出てくるときに骨盤や膀胱、尿道を支えている筋肉および靱帯に負担がかかりダメージを受けてしまうのです」(藤﨑先生)
骨盤の底には骨盤底筋という強靭な筋肉があり、お腹に力がかかっても反射的に尿道を締めるようなサポートをして尿漏れを防いでいます。しかし、出産や加齢で骨盤底筋が弱くなると、緊張が緩んで尿漏れしやすくなってしまうのです。
腹圧性尿失禁は、例えば授乳が終わったときなど、女性ホルモンの変化などにより自然に治ることもあるようですが、治療が必要なケースもあります。気になる方は、泌尿器科医師に相談してみましょう。
切迫性尿失禁はどうして起こる?
テレビを見ていたら急に尿がしたくなって、トイレまであとわずかのところで漏れてしまった……という経験はありませんか? この症状は切迫性尿失禁。切迫性尿失禁になる女性は、出産経験の有無に関係なく、40代に近づくにつれてどんどん増えていきます。
「切迫性尿失禁の原因は、年齢によるものがかなり大きいのですが、膀胱の収縮や血流の問題、太り過ぎなど、多岐に渡るため、ひとことでは言えません」と藤﨑先生。
切迫性尿失禁は過活動膀胱という病気のひとつの症状でもあります。頻尿や尿失禁は、心の健康や身体的活動などに影響を及ぼしますから、「困ったな」と感じたら、我慢せずに泌尿器科を受診しましょう。
文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ
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医学博士。日本泌尿器科学会専門医。日本性機能学会専門医。日本排尿機能学会排尿機能専門医。日本東洋医学会漢方専門医。福島県立医科大学卒業後、虎の門病院、聖路加国際病院、長野市民病院を経て、2013年、四谷メディカルキューブ女性泌尿器科入職。泌尿器科の悩みを持つ女性がより豊かな生活を送れるように支援している。