治療が必要なホクロとは?ホクロを除去することはできる?【女医に訊く#197】
顔や身体にできるホクロ。まぶたにあって視界の邪魔になる、服を脱ぐときに引っ掻いてしまう、外見上目立って気になるなど、悩んでいる人も多いのではないでしょうか? ホクロができる原因や治療について、形成外科専門医の西嶌順子先生にうかがいました。
ホクロとはどんなもの?
ホクロとは、小型(数mm~1cm大)の色素性母斑あるいは母斑細胞母斑と呼ばれる、褐色~茶色~黒色、ときには正常な皮膚色の色素斑または腫瘤(しこり)のこと。表面は平滑~イボ状で、ときに毛を伴います。
「例外もありますが、基本的にホクロは生まれたときには存在しません。3~4歳頃から黒色の隆起しない色素斑として生じ、思春期以後に増え、年齢とともに徐々に隆起し、中年以後次第に色調が淡くなります」と話すのは、形成外科専門医の西嶌順子先生。
「日本人では、31~35歳で一人平均約10個のホクロが存在するとの報告もあります。『ホクロのない人はいない』といえるほど、ホクロはありふれた症状なのです」(西嶌先生)
ホクロはどうしてできる?
ホクロは母斑細胞が異常増殖することで、黒褐色の色素斑が皮膚に生じてできます。その原因は不明ですが、紫外線刺激や女性ホルモンなどの関与も指摘されています。
「色素性母斑には、生まれつき病変が存在する先天性と、出生後に生じてくる後天性がありますが、ホクロの多くは後天性色素性母斑に属しており、一般的に遺伝性はないといわれています」と西嶌先生。
同じホクロでも平べったいものと隆起しているものがありますが、その違いは母斑細胞が増えている位置によるものだと西嶌先生は言います。
「皮膚には表皮の下に真皮があり、さらにその下に皮下脂肪があります。母斑細胞の位置が、表皮と真皮の境界にあるもの(境界母斑)は平坦ですが、皮膚の浅い部分から深い部分に移行し増えるにつれ、ホクロの表面はだんだんと盛り上がっていきます(真皮内母斑)」(西嶌先生)
どんなホクロに気をつけたらいい?
「基本的に小さくて悪性でない色素性母斑をホクロと呼びますから、ホクロ自体は病気ではありません。がんになる可能性もないため、放置してもほとんど心配はないでしょう」と西嶌先生。
問題となるのは、俗にいう「ホクロのがん」=メラノーマ(悪性黒色腫)との鑑別。メラノーマとは、色素細胞ががん化した腫瘍のこと。生まれつきの大きな色素性母斑(巨大色素性母斑)からはメラノーマが生じることはありますが、何年も前にできた小さなホクロがメラノーマになる危険性はほとんどありません。
「ただし、メラノーマの始まりは、ホクロと似ていることがあります。メラノーマの特徴は、①非対称性、②不規則な境界、③多彩な色調、④直径6mm以上。これらの条件を満たし、大きさ、形状、色調に変化があるものは注意が必要です。とくに、色素性母斑が数十個以上多発し、家系内にメラノーマ患者がいる場合は、メラノーマ発生の危険性が高いことが確認されていますから、気をつけましょう」(西嶌先生)
ホクロは取ることができる?
ひとくちにホクロといっても、形状や種類はさまざま。悪性のものと見分けがつきにくい場合もあるため、気になるホクロが出たら、受診をおすすめします。
「特に、手のひらや足の裏など、刺激の加わりやすい部分のものや、先天的で比較的大きなもの、整容面で大きな問題が生じるものについては、保険診療で外科的切除を行う場合もあります。また、良性と考えられ比較的小さいものは、レーザー治療(炭酸ガスレーザーやアレキサンドライトレーザーなど)で除去することもあります」(西嶌先生)
レーザー治療には削り取る方法と色素のみを破壊する方法があり、どちらも自費治療になります。また、ホクロが深部まである場合、1回で取れず複数回治療が必要となります。詳しくは、皮膚科医や形成外科医に相談してみましょう。
文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ
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医療法人道心会 恵比寿形成外科・美容クリニック 院長。助産師、保健師、看護師。聖路加国際大学看護学部看護学科卒業後、新生児特定集中治療室(NICU)、産婦人科などで新生児医療に従事したのち、北里大学医学部医学科に学士編入学。 形成外科医として、がん研有明病院、筑波大学附属病院、新東京病院に勤務したのち現職。 多くの女性が抱える特有の悩みについて、専門医の立場、そして自身の経験に基づく等身大の視点で情報を発信している。2児の母。