ニキビって病気なの?ニキビはどうしてできるの?【女医に訊く#194】
ある日、突然ポツンとできるニキビ。メイクでごまかしているうちに、どんどん赤くなって最後には膿んでしまったことはありませんか? 思春期は過ぎたのに、どうしてニキビはできてしまうのでしょうか? 形成外科専門医の西嶌順子先生に教えていただきました。
ニキビって病気なの?
ニキビは脂質代謝異常や角化異常、細菌の増殖が複雑に関与する慢性炎症性疾患。日本では 90%以上の人が経験する毛穴にできる皮膚の病気ですが、医療機関を受診する人は10%に過ぎないといわれています。
「ニキビは顔などの目立つ部分にできやすく、また跡にも残りやすいため、生活の質(QOL:quolity of life)に大きく関与します」と話すのは、形成外科専門医の西嶌順子先生。
ニキビは早期治療により早く改善するうえ、ニキビ跡も予防できるというデータもあるため、早めの積極的な治療と炎症が治まったあとの維持療法が重要だと考えられています。
「ひどいニキビを繰り返していると、跡が残って治すのも大変になります。ニキビを見つけたらすぐに皮膚科へ行く方が、時間も費用も抑えられると思います」(西嶌先生)
ニキビってどんな病気なの?
わたしたちの体には、産毛など軟毛が生える「軟毛性毛包」、髭や毛髪など太くて硬い毛が生える「終毛性毛包」、大きな皮脂腺を持つ「脂腺性毛包」の3種類の毛穴が存在しています。
「このうちニキビができるのは、脂腺性毛包のみであることがわかっています。脂腺性毛包は大きく発達した皮脂腺が複数付属しているのが特徴。顔にもっとも高密度に存在しており、次いで胸、背中の中心部にも存在しています」(西嶌先生)
ニキビができるきっかけは「マイクロコメド(微小面皰)」の形成です。毛穴に皮脂や角質が詰まっている状態を「コメド(面皰=白ニキビ)」といいますが、マイクロコメドとはコメドができるさらに前の、まだ目には見えないほど小さなニキビのきっかけとなる状態です。
「このマイクロコメドが白ニキビになり、白が酸化して黒ニキビになるものもあれば、アクネ菌が増えて感染・炎症を起こし赤ニキビになるものもあるのです」(西嶌先生)
ニキビはどうしてできるの?
「ニキビの元となるマイクロコメドは、毛包の角層が厚くなることで皮脂の分泌が妨げられ、毛包内で皮脂が滞り始めることでできます。実は、この毛包の角化異常の原因は、まだはっきりとは解明されていません。しかし、アクネ菌や皮脂成分などの影響によって弱い炎症が発生したり、表皮の 顆粒細胞が不完全な状態の角層細胞へ変化したりすることが原因と考えられています」と西嶌先生。
ニキビができる原因は以下の3つが考えられます。
原因(1) 皮脂の過剰産生
ニキビができやすい思春期は、男女ともに男性ホルモンの分泌が盛んになります。男性ホルモンには皮脂分泌を促進する働きがあるため、思春期は皮脂の分泌が盛んになります。
成人女性でも、睡眠不足やストレスにより男性ホルモンの分泌が増えることがあります。また、女性ホルモンの一種であるプロゲステロンも皮脂腺に作用して皮脂の分泌を促します。プロゲステロンは生理前に多く分泌されるので、生理前になるとコメドやニキビが悪化しやすい方は多いです。
原因(2) 毛穴の角化異常
皮脂分泌が盛んになると同時に、毛穴の出口部分や毛包内の角化異常がさらに進行します。角層細胞がはがれにくくなって不要な角質がたまると、毛穴の出口は徐々に狭くなり最終的に閉塞してしまいます。このように皮脂の分泌量の増加とともに、毛穴がふさがっていくことで皮脂が溜まり、目に見えるコメド(面皰)が形成され、やがてニキビができます。
原因(3) アクネ菌の増殖
アクネ菌は主に毛包内に存在する脂質を好む常在菌で、皮脂が溜まった毛包内はアクネ菌が増殖しやすい環境になります。さらに、アクネ菌は嫌気性菌であるため、毛穴に皮脂が溜まった状態で毛穴の内側が徐々に狭くなってくると、増殖しやすくなります。
「毛包内でアクネ菌が増殖すると、炎症を起こして赤いぶつぶつしたニキビや、膿がたまったニキビを引き起こします。みなさん、このような段階になってようやく治療をはじめられますが、ニキビ治療は白ニキビや黒ニキビの段階からはじめられますし、その方が治りもいいのでおすすめです」(西嶌先生)
文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
医療法人道心会 恵比寿形成外科・美容クリニック 院長。助産師、保健師、看護師。聖路加国際大学看護学部看護学科卒業後、新生児特定集中治療室(NICU)、産婦人科などで新生児医療に従事したのち、北里大学医学部医学科に学士編入学。 形成外科医として、がん研有明病院、筑波大学附属病院、新東京病院に勤務したのち現職。 多くの女性が抱える特有の悩みについて、専門医の立場、そして自身の経験に基づく等身大の視点で情報を発信している。2児の母。