片頭痛は治らないってホント?真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日常生活で生まれる美容の疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は、“頭痛”について。片頭痛は治らないって…ウソ? ホント? 日本頭痛学会認定指導医・専門医の五十嵐久佳先生にお答えいただきます。
Q:片頭痛は治らないってホント?
ズキンズキンと脈打つような激しい痛みが特徴の片頭痛。1分1秒でも早く治したいと願う一方で、片頭痛は治らない…なんていうウワサも。本当なのでしょうか。さっそく、この疑問を五十嵐先生にぶつけてみました! 果たして答えは…?
A:ウソ
「片頭痛そのものを完治させることは難しいですが、痛みをコントロールすることは可能です。また、妊娠中は片頭痛が軽減し、閉経後は片頭痛がなくなる人もいます」(五十嵐先生・以下「」内同)
片頭痛と女性ホルモンの関係
「片頭痛と女性ホルモンは、極めて関係が深いとされています。その理由は、月経周期に伴う女性ホルモンの変動。月経に向けてエストロゲンの血中濃度が急激に下がることが、片頭痛を引き起こす引き金となるのです。
片頭痛持ちの女性の半数以上は、生理前や生理中に片頭痛があるのです。しかし、多くの女性が片頭痛ではなく、生理痛やPMSのひとつとして誤って認識してしまっています。実は月経周期に起こる片頭痛は、鎮痛薬が効きにくいという特徴が。困っていらしたらいつもの頭痛だからと放置するのではなく、頭痛外来を受診してみてくださいね」
- 片頭痛持ちの女性の半数以上が、生理前や生理中に片頭痛がある
- 女性ホルモンのエストロゲンの急激な減少が頭痛を引き起こす要因となる
- 月経周期に起こる片頭痛は、鎮痛薬が効きにくいという特徴がある
- 頭痛を生理痛やPMSのひとつとして謝って認識している女性が多い
妊娠中に片頭痛が軽減する理由
「妊娠中は女性ホルモンの数値が高いまま維持されるため、片頭痛が起こりにくいといわれています。片頭痛持ちの妊婦さんの6~8割が、妊娠6か月以降、頭痛が軽減するというデータも。
しかしながら、出産後に女性ホルモンの数値が下がることで、出産1か月以内に約半数以上が再発するとされています。とはいえ、授乳中や妊娠中でも飲める薬はあるので、医師に相談なさり、上手に痛みと付き合っていきましょう」
- 妊娠中は片頭痛が起こりにくい
- 片頭痛持ちの妊婦さんの6~8割が、妊娠6か月以降、頭痛が軽減するというデーターも
- 出産後に女性ホルモンの数値が下がることで、出産1カ月以内に約半数以上が再発するといわれている
- 妊娠中、授乳中でも飲める薬はあるので、医師と相談し痛みをコントロールすることが大切
閉経後に片頭痛がなくなる理由
「閉経を迎え、女性ホルモンの変動がなくなると、約2/3の人は片頭痛が軽快するとされています。
ですが、閉経を挟んだ1~2年の更年期に片頭痛が悪化してしまう場合も。子どもの独立や夫の定年退職、親の介護などの生活の変化に加えて、自身の老眼や更年期障害などの体調不良が重なってしまうためです。
無理をしないこと、また、ストレッチやエクササイズ、ヨガなど体を動かすことも片頭痛予防に効果的です。更年期障害の症状が強い場合には婦人科の先生にご相談なさるとよいでしょう」
片頭痛と遺伝の関係
「詳しい原因はまだ解明されていませんが、片頭痛の原因のひとつに、“遺伝”が関係しているとされています。母親が片頭痛持ちの場合では、50~70%の確率で子どもも片頭痛持ちになるといわれています。
そうすると、当然子どもは母親を見ているわけですから、“頭痛があって当たり前”だと思い、そのまま成長するのです。その結果、頭痛があっても諦めたり、我慢するようになってしまいます。また、この痛み程度では病院を受診する程ではないと自己判断をして受診しないケースも。
しかし、本当に酷い痛みのときは、吐き気も伴うこともあるのですから、とても病院に来られる状態ではありません。そうじゃないときこそ、ぜひ頭痛専門外来を受診してください」
片頭痛の治療法
「外来での診療は、まず患者さんの話をよくお聞きし、片頭痛かどうか診断します。薬を処方する場合は、頭痛が起きた時に服用する急性期治療薬”と、毎日服用することで頭痛を起こりにくくする“予防薬”の2種類を処方することが多いです。
頭痛外来を受診する患者さんのほとんどは、市販薬が効かなくなってしまったという人です。この場合は、急性期治療薬として片頭痛の痛みの原因となる神経伝達物の放出や血管周囲の炎症を抑え、広がった血管を元に戻してくれる作用のある“トリプタン”という薬を処方します。
さらに2021年、片頭痛の予防薬として新たに新薬が承認されました。4週間~12週間に1回医療機関で皮下注射をすることで、頭痛の発症抑えられるというものです。かなり効果があるとされており、多くの患者さんにとって、心強い選択肢が増えたといえるでしょう」
Point
◆頭痛が起きた時に服用する薬と、頭痛を起こりにくくする“予防薬”がある◆市販薬が効かなくなってしまった人は、“トリプタン”という薬が有効
◆2021年、片頭痛の予防薬として新たな新薬が承認。
文/木土さや
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
富士通クリニックで頭痛外来を担当。富士通本社産業医、北里大学医学部脳神経内科学客員教授も務める。国際頭痛学会、米国頭痛学会、日本神経学会(専門医、指導医)、日本頭痛学会(理事、専門医、指導医)など、所属学会多数。
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