自分の卵巣年齢が分かるAHM検査って? 卵子凍結や不妊治療の前にやっておきたい理由【わたしにもできるフェムテックBeauty】妊娠・不妊編③
2023年9月より東京都で、いくつかの条件を満たす18歳〜39歳の女性に対し、卵子凍結にかかる費用への助成(上限30万円)が開始されました。不妊治療については’22年4月から保険適用になるなど、政府では少子化対策の一環として、将来子供をもちたい女性の経済的負担を支援する取り組みが進められています。
そもそも少子化の原因のひとつになっているのが、女性の社会進出による未婚化や晩婚化。妊活を始める年齢が上がる程、なかなか妊娠できないケースは増えていきます。そのため、パートナーや妊娠したい時期が決まっていなくても受けられる卵子凍結の助成に興味をもつキャリア女性は多数。助成のオンライン説明会への参加者は、初回の9月から11月までに5,000人を超えたとか(9割が30代)。
出生時に約200万個あった卵子が30代では2〜3万個に減少!
「年齢と共に不妊率が上がるのは、卵巣に残っている卵子の数と質が影響します」と、グレイス杉山クリニックSHIBUYAの院長・岡田有香先生。「男性の精子が毎日新しく作られるのと対照的に、女性の卵子は胎児のうちに一生分が作られます。出生時には約200万個の卵子(原始卵胞)をもっていますが、月経のたびに排出されたり、自然に消えたりして、20代ではおよそ10万個、30代では2~3万個にまで減ってしまうのです。しかも、その減り方には個人差があるため、30代でも、いざ子供が欲しいと思ったときに元気な卵子が残っていなかったというケースも実はあります」
※ Baker TG(1972) Gametogenesis, Acta Endocrinol Sullpl 166;18-42
AMH検査で、今の自分の卵子の数がわかる
「卵子凍結を考えるにも、不妊治療を始めるにも、まずは現在の自分の卵子の数をチェックするAMH検査が先決です。AMHとは、アンチミューラリアンホルモンの略で、卵巣の中でこれから育っていく卵胞から分泌されるホルモン。AMH値によって自分の卵巣年齢=これから育つ卵胞(卵子)の数を予測できます。AMH値が低かった場合、現在パートナーがいる方であれば、できるだけ早い妊活が望まれますし、いない方には卵子凍結などの選択肢も出てくるでしょう。今の自分の卵巣年齢を知っておくことは、今後のキャリアプランやライフプランの設計にも役立ちます」
産婦人科など、医療機関でのAMH検査は、腕から少量の血液を採取し、AMHの血中濃度を測定します。費用は、岡田先生のクリニック「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」の場合、税込み¥7,700(初診料、再診療は別)。結果は当日(30分〜1時間後)もしくは後日の診療で知らされます。
自分で卵子の数をチェックできるセルフキットを利用しても!
指先で採血したわずか0.1㎖の血液を郵送するだけで、卵巣に残った卵子の数がわかる。分析結果はWEBで閲覧可能。ファミワン F check 卵巣年齢チェックキット ¥21,978
卵子凍結をしておけば、思いどおりに妊娠できるとも限らない!
助成開始の話題もあって、卵子凍結に興味を覚え、〝とりあえず、私も卵子凍結をしておこうかな〟と、考える人は多いかもしれません。でも…
「凍結しておいた卵子が必ず妊娠に結びつくとは限りません。妊娠は、凍結融解後の卵子がちゃんと精子と結びつき、その受精卵が良好胚に育ち、無事に着床してはじめて成立します。凍結卵子から質のいい受精卵を確保できた場合でも、採卵時の年齢が高くなると、妊娠できる確率は下がっていくのです」
凍結卵子の融解後、良質な受精卵が確保できた場合に妊娠できる確率(卵子10個あたり)
採卵時の年齢別が
30歳以下 ・・・80%程度
31〜34歳・・・75%程度
35〜37歳・・・53%程度
38〜40歳・・・30%程度
41歳以上 ・・・20%以下
「例えば、35歳で10個の卵子を保存した場合、妊娠率の期待値は約50%(流産を含む)となります。だったら、1日も早く卵子凍結した方がいいと思うかもしれませんが、32歳くらいまでなら自然妊娠できる可能性も高く、凍結しても使わないケースが出てきます。また、凍結した卵子の保管にも年ごとに費用がかかるし、融解して使用できる年齢にも制限(45歳くらいまでがおすすめ)があります。卵子凍結を考えている方は、それこそAMH検査の結果をもとに今後のキャリアプランやライフプランをしっかり考えてから実行するかどうか決めるのが良いでしょう」
イラスト/リバー・リー(Softdesign) 構成/つつみゆかり
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おかだゆか/2014年 順天堂大学医学部卒。聖路加国際病院の産婦人科で8年勤務。’22年4月より「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」院長に就任。日本産婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会、婦人科腫瘍学会、日本女性医学会、NPO法人日本子宮内膜症啓発会議に所属。不妊治療に悩む多くの方々を診てきたなかで、プレコンセプションケア(妊娠前からのヘルスケア)の重要性を改めて認識し、指導に努める。生理の知識や妊活、卵子凍結についてInstagramでも発信している。グレイス杉山クリニック:https://grace-sugiyama.jp/