女医に訊く#30|外反母趾の治療法は?自分でできることはある?
整形外科医の池澤裕子先生によると、外反母趾の治療は、大きく保存治療と手術治療のふたつに分けられるとのこと。
また、保存治療には靴指導・運動療法・装具療法の3つがあり、どれも外反母趾の予防にもなるそう。
今回は、自分でできる外反母趾のケア方法と、手術治療について、お話を伺います。
運動療法で関節の柔軟性と足の筋力をUP!
「外反母趾の運動療法では、足指を前後、左右に広げる練習をして、親指の関節の柔軟を良くしたり、親指や足裏の筋肉を鍛えたりします。これができるようになってくると、みなさん、だいぶ痛みが違うとおっしゃいますよ」と池澤先生。
今回は、ストレッチ、グーパー運動、ホーマン体操、タオルギャザー運動の4つをご紹介します。
◎ストレッチ
手を使って変形した親指を矯正する方向へ動かします。
◎グーパー運動
椅子に腰掛けるか、床に足を伸ばして座ります。足の筋力を使って両足の指を丸める→開くを繰り返します。40回×1セット。入浴中や入浴後に行うと効果的。
◎ホーマン体操
椅子に腰掛けるか、床に足を伸ばして座ります。輪ゴムを5〜6本重ねて両方の親指にかけ、かかとを合わせたまま、つま先を外側にゆっくり開き、ゆっくり戻します。40回×2セット。
◎タオルギャザー運動
椅子に腰掛けます。足元の床にフェイスタオルを縦に広げ、手前の端に両足のつま先を乗せます。かかとを床につけたまま、足指全体でタオルをたぐり寄せます。
軽度〜中等度の外反母趾には装具療法がおすすめ
外反母趾の装具療法とは、足の土踏まずや横アーチを高くした「足底挿板(そくていそうばん)」と呼ばれる中敷き、痛いところにつける除圧パッド、夜間に装着する矯正装具、市販のサポーターなどを用いて行う治療のこと。
足底挿板はスポーツ用品店や靴店でもつくれますが、医療機関できちんと足を計測してつくってもらうのがおすすめ(保険適応あり)。
ただし、すべての靴に合うわけではないため、基本的には普段よく履く靴に合わせて作製してもらいましょう。
市販のサポーターや夜間装具、パッドは軽度の外反母趾にしか効果がありません。
しかし、足底挿板は、軽度〜中等度の外反母趾に対しては痛みを軽減したり、進行を予防したりする効果があります。
ただし、装具は毎日使わないと効果がないので、きちんと装用しましょう。
「足底挿板を使用することで手術を回避できる人も結構いらっしゃいますが、残念ながら装具には矯正力はないため、足の変形が戻るということはありません。変形が強いにもかかわらず、我慢して足底挿板だけで済ませてしまうと、高齢になって筋力や踏ん張る力が弱くなってきたときに、転倒や怪我の原因になりますから心配ですね」(池澤先生)
変形の矯正には手術治療が最も効果的
手術治療は、保存治療を行っても十分な効果が得られず、痛くて仕方ない、靴が履けないなど、日常生活に支障がある場合に行います(美容目的では手術はしません)。親指のつけ根の骨を切って軸を直すため、外反母趾の矯正には最も効果的。親指以外にも変形や痛みが及んでいる場合には、その指に対しても手術が行われることがあります。
入院期間は1週間くらい。術後1か月ほどで装具なしで歩けるように、3か月頃からはスポーツも少しずつできるようになります。池澤先生によると、40代までは子育てや仕事で、50〜60代は親の介護などが加わったりと忙しい方も多いため、手術を受ける患者さんは、60〜70代の方が多いそう。
「ただし、変形が強くても痛くないという方には、メスを入れると余計な痛みをつくる原因になってしまうので手術を行わないこともあります。また、変形が軽くても痛みが強くてお仕事ができないという方には、手術を行うこともあります。手術は合併症のリスクもありますし、入院や経済的なことなどもあるので、最終手段と考えていいとでしょう」(池澤先生)
教えてくれたのは・・・
文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。