医師が解説!ムダ毛の悩みは低年齢化。「正しくできるか」がカギになる【biiku】
女の子であれば、胸が膨らみ始めたら、わき毛が生えても不思議ではないタイミング。そもそも第二次性徴期の除毛・脱毛って大丈夫なの? GRAND世代ママが抱える数々の疑問に、小児の肌に詳しい皮膚科医・渡邊千春先生が答えます。
低年齢化するムダ毛の悩み。まずは受け止め、“我が家の方針”を探ろう
子供の成長と“体の毛”について、子供の医療脱毛に取り組む皮膚科専門医の渡邊千春先生が説明します。
「第二次性徴を迎えると、男女ともホルモンの影響で『性毛』が生えてきます。女子の場合は、11〜12歳頃、陰部やわきに毛が生え始めて、徐々に濃くなります。男子はテストステロンの影響で、ひげ、胸毛、下腹部、すねの毛が濃く太く。男女とも腕や脚などの『体毛』はうぶ毛が多少しっかりする程度で、量や太さは生まれもった体質次第です」
渡邊先生が子供の脱毛を始めたのは10年程前。
「きっかけは、体毛に端を発する心的ストレスや肌状態に合わない除毛のトラブルを解消したいとの思いでした。チアリーディングが大好きなのに、脚のムダ毛を“毛ガニ”とからかわれ、自信を失ってしまった子。アトピー性皮膚炎のステロイド治療の副作用である多毛に悩み、剃毛(ていもう)してはカミソリ負けを起こし、悪化させてしまう子。当初は、人知れず深く悩む、限られた数の子供たちでしたが、今はムダ毛に悩む層が低年齢化し、審美的な欲求も高まっているように感じます」
そう聞くと、我が子のムダ毛ケアをどうするか!? 気が急きますが…?
「性毛も体毛も個人差が大きく、その捉え方も人それぞれ。ですから、子供から相談があったとき、『気にしすぎ』『まだ早い』と決めつけたり、逆に、親が脱毛を押しつけるのもよくありません。また、医療脱毛を含め“永久に完全な無毛”を実現するのは、理論的には不可能です。毛が薄く少なくなり、本人が気にならないレベルをゴールと考えてください」
そもそも、子供の肌に脱毛や除毛、ダメージは…?
「結論を言うと、トラブルのない健常な肌に、事前準備からアフターケアまで、正しく安全に行うことができれば問題はないと考えます。セルフ処理は、理解力と実行力がカギになるので、小学校高学年ぐらいから。最初は保護者が見守るのが良いでしょう。医療脱毛は、未成年(18歳未満)には保護者の同意が必要です」
レーザーを用いる医療脱毛に肌のリスクはあるのでしょうか?
「子供の皮膚は、大人に比べればやや薄いものの、適切なデバイスで適切なエネルギー量なら特に問題はないと考えます。ただ、成長過程にある子供の脱毛施術は比較的新しく、大人と比べて数十年単位の長期的フォローアップがなされていないこともあり、皮膚科専門医やレーザー専門医のいるクリニックが心強いでしょう。当院では痛みが少ない蓄熱式レーザーを使い、治療後の一時的な赤みや熱感の対応なども丁寧に説明します」
渡邊先生が総院長を務める「千春皮フ科クリニック」での「こども医療レーザー脱毛」の様子。初回の診察は必ず保護者が同席する。子供の脱毛には痛みが少ない蓄熱式レーザーを使用し、反応を確認しながら行う。
最後に、セルフ処理に関するアドバイスを頂きました。
「例えばカミソリ。刃物ゆえ扱いに気をつけるのは当然ですが、角質も薄く削るので処理後は保湿を。アフターケアを含め、誤った使い方で微弱な炎症が繰り返されれば、色素沈着の可能性もあります。また、注意したいのが毛抜き。周囲の皮膚も引っ張るので、埋没毛や毛嚢炎(もうのうえん。毛穴の炎症)など形状的な変化を起こしやすくなるのです。なお、医療脱毛であれセルフケアであれ、処理後の肌に赤みや熱感などの炎症が続く場合は迷わずに皮膚科を受診してください」
\除毛・脱毛へ踏み出す前に4つのお約束/
① 本人の意思を尊重。
大人の価値観、美的感覚を押しつけない
② 完璧な無毛を目指さない。
「気にならない」がゴール
③ ルール遵守を約束。
取扱説明書と注意事項の理解は最低条件
④ セルフ処理こそ、事前の準備&アフターケアを慎重に
気になる具体策は順次公開!
美的GRAND 2022年 秋号掲載
イラスト/窪田エリー 文/片岡えり 構成/佐野有子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。レーザー専門医。東京医科大学卒業、同大学皮膚科等で経験を積む。2012年に開院(一般皮膚科・美容皮膚科・小児皮膚科・形成外科)。4児の母。千春皮フ科クリニックHPはこちら