「肌はひとつの臓器」…真実の美肌理論とは!? 肌事情に詳しい美のプロが真面目に対談!
どうしても気が向いてしまう、シミ、シワ、色ムラ…といった肌悩み。ピンポイントで格闘する前に、聞いてほしい!真実の美肌理論を、読者の肌事情に詳しい3人が、ちょっとまじめに語ります。
今、私たちに、どうしてもこれを語らせて!「大人の肌の分かれ道は“肌の育て方”にあり」
“肌悩みに効くコスメばかりでなく、悩みの根っこに目を向けて”――慶田朋子先生
“おかずばかりでなくお米のように地味なお手入れこそが大切”――もりたじゅんこさん
“肌はひとつの臓器。その機能を大切に育てれば美肌になれる”――大塚真里
大塚 今、スキンケアはYouTuberやインフルエンサーのおすすめを参考にする、という人がすごく多いようですね。ネットを見ると美容動画が無尽蔵にあり、インスタラ
イブを始めたという美容家さんやヘア&メイクさんの話もよく聞きます。
もりたさん(以下敬称略) 動画ならではのわかりやすさがあり、楽しいですよね。
慶田先生(以下敬称略) スキンケアを頑張る気分が盛り上がっているのはいいことですよね。ただ気になるのが、 楽しそうな情報ばかりつまみ食いして、本質に目を向けていない方が多い ことです。毛穴やくすみ、乾燥などの悩みに効くコスメには夢中だけれど、 「なぜそういったトラブルが起きてしまうのか」という、根っこの部分を考えていない。 ダンスに例えると、手足の動かし方ばかり覚えようとして、美しい表現の基本である、体幹を鍛えることが抜けているような。
大塚 先日、毛穴に関する書籍を執筆したのですが、そのときにご一緒した皮膚科医の先生の言葉がすごく印象的でした。「毛穴のことばかり気にしていろいろいじったり刺激したりするから、かえって目立ってしまう。 肌全体にいいことをしてあげれば、毛穴は徐々に自然と目立たなくなる 」と。
慶田 真にそのとおりです。毛穴の角栓を押し出したり、ぐいぐいマッサージしたりすると、刺激によってより角栓が大きくなったり、炎症を起こして赤くなったりします。
もりた YouTuberやインフルエンサーのお手入れを参考にするなら、 つまみ食いではなく、この人が言っていることは納得できるという人をひとり見つけて、全体的に真似してみる といいのではと思います。見た目がキレイ、とかではなく、納得できるか、自分に合うかという点が大事ですね。
大塚 さて前置きが長くなりましたが、今月号の大特集は『育ちのいい肌』です。透明感とかハリとかわかりやすいテーマではなくて「育ちのいい肌」。まさに慶田先生がおっしゃったように、 お手入れの本質を知って、本物のキレイな肌を育てていこうよという話。
もりた この言葉を聞いて、私が思い浮かべたのは高級な白桃です。内側にたっぷり水分と養分を含んでいることが見た目にもわかり、皮は柔らかく繊細できめ細かい。大切に守り、お手入れしながら育てないとかなわない、儚いような美しさです。
慶田 確かに桃のような肌は、女子の憧れですね。一方で、毛穴が目立ちやすい、ミカンのような質感の肌質というのもあります。 桃肌は、きめが細かいものの乾燥しやすくしぼみがち、ミカン肌はきめが粗く毛穴が目立ちやすいもののパンとしたハリがあります。 決してどちらがいいというものではなくて、それぞれに良さがあり、欠点もあるんです。
大塚 お手入れで肌を育てれば、例えばミカン肌が桃肌になれるということはある?
慶田 難しいですね。髪質や身長などと同じように、肌質は遺伝子によってある程度決められているから。でも、こう考えてほしいんです。桃なら緻密さと強さを兼ね備えた上質な桃、ミカンなら皮が柔らかくなめらかな温室ミカンを目指そうと。 自分の肌質なりの最高の美しさであれば、頑張ればかないます。
もりた 自分の肌を育てて、磨き上げていくということですね。美肌ケアってこれに尽きると思うのですが、実際、上質な桃肌や温室ミカン肌を育てるお手入れって、すごく地味。きめ細かく透明感にあふれ、トラブルが起こりにくい、 みんなが憧れる美肌って、きちんと新陳代謝していてバリア機能の高い肌 なんですよね。ムダなものがなく、潤いをたっぷり抱え込み、外敵の侵入を防ぐことができる肌。それを目指すには、 汚れを落としてしっかり保湿するというごくごく基本のお手入れを、正しく丁寧にみ重ねていくしかありません。 これを雑誌のスキンケアページで表現するのって、すごく難しい…!
大塚 そこですよね。雑誌でもWebでも、引きがあるのって「毛穴が消える!」だったり「透明感」「リフトアップ」などキャッチーな言葉であり、「バリア機能の高い肌を目指そう!」と書いても、なかなか読んではもらえない。だから、手を替え品を替えキャッチーな企画を作り続けているわけですが、 本当は「バリア機能」とそのために必要なお手入れを頭で理解できれば、美肌への距離はぐっと縮まります。 最初に先生がおっしゃった、体幹を鍛えるようなことですね。
もりた 私はお米のようなケアと思ったりします。派手なおかずやおしゃれな外食ばかりじゃなくて、お米も食べようよ!と。
慶田 肌の材料になる実際の食事も、美肌を育てるにはすごく重要です。美肌を意識する女子って野菜の摂取はちゃんとしているのですが、たんぱく質や脂質が足りていない。 肌の構成要素のほとんどはたんぱく質や脂質なので、野菜ばっかりではスカスカの肌になってしまいます。 食べたものを吸収して使えるようにするには、腸内環境を整えることも大切です。もちろん、睡眠や運動も。美肌のための、生活の5本柱というのがあって。 食事・睡眠・排泄・運動・ストレスコントロールです。これらが互いに影響し合って、健康な体と肌が育つんです。 その肌を外からメンテナンスして、さらに美しく引き上げていくのがスキンケア、というわけです。
大塚 肌も臓器のひとつですもんね。
慶田 そう、皮膚は目で実際に見て、手で簡単に触れることができる唯一の臓器。だからこそいろいろやりたくなってしまう気持ちはわかるのですが、どうか過剰にいじったり、こすったり、押し出したりなどでダメージを与えず、大切に育ててほしいです。
大塚 汗や不要物を排出し、外敵を侵入させないという、 臓器としての機能を整えることを大切にしていけば、シミやシワ、目立つ毛穴もできにくくなり、みんなの憧れの美肌を育てることにつながる と。地味だけれど、ここに気づくことがすごく大事です。
実は美肌を育てる要となる「バリア機能」って?
美肌を育てるとはバリア機能を育てること
肌の最表面にある、厚さ0.02mmの「角層」。NMFという水性の保湿成分を含んだ「角質細胞」が緻密に並び、その隙間を脂性の保湿成分「細胞間脂質」が埋めている。角層が健康だと、外敵の侵入を防ぐバリア機能が高く、潤ってキレイな肌に。
バリア機能が低下するとさまざまなトラブルが発生
間違ったスキンケアをしたり、食事や睡眠などの生活が乱れると、角層の代謝が乱れて健康な角質細胞が育たなくなる。細胞間脂質も作られにくく、流出などで量が減り、スカスカの状態に。すると外的刺激が侵入し、さまざまな肌トラブルを引き起こす。
talk members
皮膚科医 慶田朋子先生
銀座ケイスキンクリニック 院長。肌の構造を知り尽くし、本当に必要なケアをわかりやすく教えてくれる。
美容エディター もりたじゅんこさん
女性誌や広告で活躍。スキンケアの並外れた知識と探究力を武器に、本誌では毎号スキンケア企画を担当。
本企画担当美容エディター 大塚真里
情報が氾濫する今、肌がキレイになる真実のスキンケアを伝えたい!と立ち上がった、本座談会の発起人。
『美的』2021年1月号掲載
撮影/吉田健一 イラスト/Shapre、村澤綾香 構成/大塚真里
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。