「ニキビの位置別」の原因と対処法【皮膚科医・専門家監修】
いつも決まったところにできるニキビや、なぜここに?と突然出現するニキビ。ニキビのできる位置別の原因と対策を皮膚科医や薬剤師、美容家などの専門家が徹底解説!
顔の中でニキビが出来やすい「位置と原因」
大人ニキビができやすい場所とは
薬剤師・美容家
花田真理さん
薬剤師として調剤薬局、化粧品会社勤務を経て、独立。医師と薬剤師の共同開発ブランドを立ち上げ、化粧品の商品開発を行う傍ら、コラム執筆や美容記事の監修など、美容家としても活躍。
肌の代謝やホルモンバランスが乱れてフェースラインやあご周りにもニキビができる。最近はマスクに覆われた部分の蒸れやこすれでできたニキビも急増。髪の生え際は洗顔料などのすすぎ残しが原因。
【おでこ】ニキビの主な原因
皮脂や前髪など
皮脂分泌の過多によりできやすいTゾーン。前髪の整髪料やシャンプーの洗い残しなど、前髪で覆われて不潔な環境になりできる場合も。
【頬】ニキビの主な原因
乾燥やメイク詰まりなど
皮脂分泌が少なく乾燥によりできやすいパーツ。またファンデーションが詰まったり、メイクブラシなどの摩擦などでもできやすくなります。
【小鼻】ニキビの主な原因
皮脂や角質詰まりなど
皮脂分泌が多く、皮脂や角質のたまりが主な原因に。メイクや汚れがたまりやすいパーツで、毛穴に詰まってニキビになることも。
【口元、あご】ニキビの主な原因
摩擦、胃腸の弱りなど
ほかと比べザラつきがあり汚れや角質がたまりやすいパーツ。またストレス性で胃腸が弱っている場合、ニキビとして肌に影響が出ることも。
原因によるニキビができやすい場所の違い
ニキビができる基本プロセス
- 【皮脂の過剰分泌】ホルモンバランスの乱れや食生活の影響で、皮脂腺の働きが活発になり、通常よりも皮脂が過剰に分泌します。
- 【毛穴が詰まる】皮脂の出口である毛穴が詰まり、毛穴内部にどんどん皮脂が溜まっていきます。
- 【ニキビ菌が繁殖する】毛穴にアクネ菌やブドウ球菌などニキビ菌が集まり、皮脂をエサにして繁殖します。
- 【炎症を起こす】ニキビ菌の影響で炎症が発生し、赤みや腫れをともなうニキビとなります。
【皮脂】が原因の場合、Tゾーンにできやすい
「たとえば1の皮脂の場合、顔のTゾーンはもともと皮脂腺が多く、鼻ニキビや額にニキビができやすいのはこのためです」(高瀬先生、以下「」内同)
【ストレス】が原因の場合、頬からあごにかけてのUゾーン
男性ホルモンの影響を受けやすいエリア。「ストレスを感じると男性ホルモンが分泌され、このエリアの皮脂分泌が促されやすくなります。Uゾーンのニキビが“ストレスニキビ”といわれる所以です」
「ストレスを感じると、男性ホルモンの一種であるアンドロゲンやプロゲステロンが優位になり、皮脂の分泌を促します」
【毛穴づまり】が原因の場合、頬など乾燥しやすい場所に注意
「2の毛穴づまりの場合、年齢とともに肌の水分量が低下すること。さらに間違ったスキンケアで乾燥し、毛穴が詰まりやすくなることが考えられます」と、高瀬先生。
“洗いすぎ”も毛穴づまりの一因。顔を洗いすぎると肌が乾燥して角層が硬くなり、毛穴が詰まりやすくなってしまいます。
「ベタつくことを嫌って、保湿を省略することも毛穴づまりの一因です。ニキビの時もベーシックな保湿は必要。炎症部分を避け、頬などの乾きやすいエリアは潤いを与えましょう」
【不規則な生活習慣】は全てのニキビに大敵
「3のニキビ菌の繁殖や4の炎症は、不規則な生活習慣やストレスと関係しているそう。「睡眠不足やストレスで免疫が低下すると、肌の常在菌バランスが乱れたり、炎症が鎮静しにくくなります。これらの要因が複雑に関係するため、大人ニキビはなかなか治りにくいんですね」
「睡眠が不足するとターンオーバーのリズムが乱れやすくなり、毛穴づまりの要因となります。またホルモンバランスが乱れることで、皮脂が過剰に分泌されるケースも」と、高瀬先生。さらに免疫が低下すると、炎症が治りにくくなるそう。
「マスク」が原因でできてしまう口周りニキビの予防&対処法
【予防法】ニキビができる前にすべきこと
皮膚科医
小林智子先生
医学博士。同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター研究員。豊橋の山本皮フ科ほかで診療を行う。健康と食を医学的な立場で発信するサイト『ドクターレシピ』を監修。
薬剤師・美容家
花田真理さん
薬剤師として調剤薬局、化粧品会社勤務を経て、独立。医師と薬剤師の共同開発ブランドを立ち上げ、化粧品の商品開発を行う傍ら、コラム執筆や美容記事の監修など、美容家としても活躍。
Q. ニキビを防ぐマスクはどう選ぶ?
A.水着素材など通気性の良い布マスクがベスト
「摩擦以外にも、蒸れで雑菌が繁殖することもニキビの原因。水着素材は通気性が良く、私もマスクニキビから解放されました。内側にガーゼを挟むとより安心です」(花田さん)
ニキビができても、できていなくても心掛けたいライフスタイルで予防
充分な睡眠やストレスのない生活を!
「睡眠中に肌の代謝は活性化されます。睡眠不足やストレスはサイクルを乱し、古くなった角質が毛穴詰まりにもつながります。寝る前はPC・スマホはやめ、質の良い睡眠を」(小林先生)
Q.体にとり入れるべき栄養素は?
A.ビタミン類を積極的に摂取する
「皮脂分泌を調整したり、代謝を促すビタミンB群や、抗酸化作用をもつビタミンCは充分に摂取したい栄養素。食事で補うことが難しければ、サプリメントの力も借りて」(小林先生)
【対処法】できてしまったニキビのケア
マスクによる摩擦や蒸れでニキビができてしまう…そんな今ならではのお悩みを持つ人も少なくないはず。
ニキビ=炎症トラブル。朝夕使うコスメを、鎮静成分入りのものに切り替えて炎症を鎮めましょう。炎症を繰り返さないためには、バリア機能の強化が不可欠。ニキビ肌対応のアイテムで、たっぷりと潤いを与えてください。
【Rescue 1】抗炎症コスメで、保湿しながらトラブル鎮静
ニキビ部分を摩擦しないように、手のひらで包み込むようにコスメをなじませましょう。コスメは、抗炎症成分入りで、ニキビを誘発させない「ノンコメドジェニックテスト済み」の保湿アイテムを選ぶと安心です。
【Rescue 2】ニキビ用の薬をスポッツづけ
綿棒の先にニキビ薬を含ませて、そっとおくように。トラブル部分に刺激を与えず的確に薬を塗れます。
「背中」ニキビは夏にできやすい!原因と対策
【原因】背中にきびはなぜできる?
東京イセアクリニック 渋谷院院長 日本皮膚科学会会員 日本美容皮膚科学会会員 日本抗加齢医学会会員
大山希里子先生
「患者さまとのコミュニケーションを大切にして真摯に向き合うこと」を理念に、日々の診療を行う。皮膚科医として知識のグレードアップを怠らず、美容医療はもちろん化粧品などの知識も豊富。
Q. 夏にできやすい背中ニキビの原因はカビ?
\カビが原因の毛包炎(毛嚢炎)の可能性も!/
「毛穴には軟毛性毛包、終毛性毛包、脂腺性毛包の3種類があり、このうちニキビができるのは脂腺性毛包です。背中は脂腺性毛包があるため、ニキビができやすい部位。しかし、赤く腫れた丘疹や膿をもった膿瘍の場合、ニキビと似て非なる毛包炎(毛嚢炎)の可能性もあります。毛包炎(毛嚢炎)とニキビの違いは、原因菌。皮膚には誰しも持っている常在菌として、ニキビを発生させるアクネ菌以外にも、黄色ブドウ球菌、真菌(カビ)がいます。汗や湿気などにより細菌や真菌(カビ)が繁殖し、傷や摩擦により肌のバリア機能が低下している毛穴から侵入することで炎症をきたすため、毛包炎(毛嚢炎)が発生しやすいのは汗のかきやすい夏場です」(大山先生・以下「」同)
Q. 背中ニキビの原因として考えられることは?
「背中ニキビができる原因として考えられるのは、髪の毛を洗った際のシャンプーやコンディショナー、トリートメントなどの洗い残しの影響や、髪の毛との接触による整髪料汚れなど。これらの汚れの蓄積が毛穴を詰まらせる原因となり、炎症を起こしやすくなります。その日の汚れを都度きちんと落とすことがニキビ予防に有効です。夜ではなく朝に入浴する習慣も、背中ニキビができやすくなるでしょう。毎日のメイク落としはしていても、背中まで気が回らない人も多いはず。意識的に背中を洗う習慣をつけるようにしましょう」
Q. 背中ニキビを放っておくとどうなるの?
「背中のニキビが悪化すると、肌のバリア機能が低下して繰り返しできやすくなったり、色素沈着したり、瘢痕として跡が残ったりしてしまうことがあります。背中だからと放置せず、きちんと対策することが大切です」
【対策】医療機関や薬も活用して!
Q. 背中のニキビは皮膚科を受診するべき?
医療機関での受診がおすすめなのはこんなとき
「背中のニキビで受診すべきなのは
■炎症が強い
■赤くて痛みがある
■多発している
■繰り返している
■市販薬で改善しない
といったとき。どれかひとつでもあてはまるようなら、早めに医療機関を受診しましょう」
こんなときは市販薬でセルフケアして様子を見よう
「赤みが少なく、数が少ない状態なら、セルフケアで様子を見るのがいいでしょう。すぐに皮膚科を受診できない場合は、できるだけ触ったりせず、市販薬を使って改善を図るのもおすすめです。市販薬を使っても背中ニキビが増えたりせず、改善がみられるようならそのまま受診する必要はありません」
Q. 背中ニキビ撃退の市販薬はどう選ぶ?
「背中ニキビを治すための市販薬は、第二類医薬品で殺菌作用と抗炎症作用のあるものを選ぶようにしてください。顔ニキビと同じ市販薬でかまいません。背中ニキビの場合、普通の薬は塗りづらいこともあるため、スプレータイプがおすすめです。毛包炎(毛嚢炎)の可能性がある場合は、ニキビの有効成分のほか化膿止めに有効な成分が入ったものが良いでしょう」
ニキビの有効成分
<ニキビ菌を抑えるもの>
イソプロピルメチルフェノール
レゾルシン
ホモスルファン
ピオニン
<炎症、赤みを抑えるもの>
イブプロフェンピコノール
グリチルレチン酸
グリチルレチン酸ジカリウム
<肥厚化した角層を柔らかくするもの>
イオウ
サリチル酸
グリコール酸
<血行を促進するもの>
トコフェノール酢酸エステル
毛包炎(毛嚢炎)の有効成分
<化膿止め>
クロラムフェニコール
フラジオマイシン硫酸塩
【対策】お風呂での洗い方にも気をつけて!
Q. ニキビのできた背中を洗浄するときに注意すべきポイントは?
A. 刺激はNG。ボディタオルで泡を転がすように洗いましょう
「なめらかな手触りのボディタオルで優しく洗い上げて」(深澤さん)
「ボディタオルは泡を動かすツールとして活用を」(慶田先生)
背中についたシャンコンなどがしっかり洗い流せていない可能性も
「特にロングヘアの人は、髪を横へ流して背中を十二分に流すこと。湯船につかることもニキビ予防になります」(深澤さん)
Q. 手の届きにくい背中をケアするときにあると便利なツールは?
A. 柄の長いツールが便利です
「“孫の手”のようなアイテムで、背中も簡単に化粧水やクリームで保湿できます」(深澤さん)
Q. 背中のニキビを予防するには、どんなボディソープを選ぶべき?
A. “ノンコメドジェニックテスト済み”の石けんや酵素パウダーなどがおすすめです
「ニキビができにくい成分でできた石けんを選びましょう。また古い角質や皮脂をオフする酵素パウダーで定期的に洗うのも効果的です!」(深澤さん)
皮膚科医が徹底回答!「ニキビケア」についての今さらQ&A
ニキビが出来た時のコスメについて
アヴェーニュー表参道クリニック 皮膚科医
太田 理会医師
藤田医科大学医学部卒、藤田医科大学ばんたね病院、福井県済生会病院にて研鑽を積む。皮膚科医、美容皮膚科が専門。丁寧なカウンセリングを通じて患者様のお悩みに正面から向き合いたいと思っています。どんなことでもお気兼ねなくご相談ください。
Q. ニキビができたら専用の基礎化粧品を使用すべき?
ニキビ専用の基礎化粧品を使うのがベスト
「お肌のことを考えると、ニキビができてしまったときは、ニキビ専用の基礎化粧品を使用するのがベスト。選ぶ基礎化粧品はニキビができる原因や肌の状態によって変わってきます。例えば、脂っぽい肌でニキビの炎症が酷いときには、殺菌作用や皮脂量をコントロールしてくれるタイプがよいでしょう。一方で乾燥している場合には、ニキビの炎症を抑えながらも低刺激で、肌に潤いを与えてくれるタイプがおすすめです」(太田医師・以下「」内同)
Q. 乳液やクリームなど油分があるものは避けたほうがよい?
「基本的には、化粧水だけというのは避けてほしいもの。どんなに脂っぽい人でも、皮膚が炎症を起こしていると、皮膚がめくれて乾燥していることもあるのです。乳液なりクリームで保湿するようにしましょう。
とはいえ、明らかに毛穴が詰まっているという場合、こってりクリームなどを使用することで余計に毛穴詰まりが酷くなってしまうことも。化粧水のあとに乳液やジェルをつける程度で保湿するのがよいでしょう」
Q. ノンコメドジェニックと表記されているものを使用すべき?
「ノンコメドジェニックとは、ニキビができにくい製品かをテストし、その結果ニキビができにくいと証明されたものです。ノンコメドジェニックと表記されている中でも、脂肌用、敏感肌用、乾燥肌用など種類が分かれているので、自分の肌に合ったものを選んで」
自宅でできるセルフケアについて
Q. セルフでできるニキビケア法は?
ピーリング石鹸やスクラブ洗顔料を使用
「毛穴詰まり予防、解消のためのピーリング石鹸やスクラブ洗顔料を使用するのはよいでしょう。ただし、そういった洗顔料は毎日使用すると肌が乾燥してしまうので、気になるときにだけ使用するようにして。また敏感肌、乾燥肌の人はちょっとしたことで刺激を受けやすいため、逆効果になることも。使用の際には注意が必要になります」(太田医師・以下「」内同)
Q. ニキビパッチは効果ある?
「殺菌作用や抗炎症作用があるものなど、さまざまな種類が出ていますが、軽度のニキビに対してはよいかもしれません。膿をもったニキビや脂っぽいニキビの場合は、パッチを貼ることで、膿や脂が閉じ込められ、周りに炎症が広がってしまう可能性があります」
クリニックで受けられる治療や薬について
Q. 保険適用外のニキビ治療ってどんなものがあるの?
ケミカルピーリング、イオン導入、ホルモン治療など
「保険適用外の治療には、主にケミカルピーリング、イオン導入、ホルモン治療などがあります。ケミカルピーリングとは、肌表面のいらなくなった角質を取り除き、皮膚の再生を促す治療法のこと。使用する薬剤剤によって、角層、表皮、真皮乳頭層など、届く範囲も変わってきます。
当院では、刺激が少なく、保湿効果のある“アミノ酸ピーリング”(¥8,800)と、グリコール酸、乳酸、サリチル酸を配合し、ハリやシワにも効果的な“ミルクピール”(¥16,500)を扱っています。通常は1か月に1回程度、ニキビの炎症が強い場合には2週間に1回を目安にするとよいでしょう。
イオン導入は、特殊な電流を流すことにより、日常のケアでは浸透させることのできない肌深部に有効成分を導入できます。特にピーリングやレーザー後に行うと浸透力が高く効果が期待できます。ビタミンCの導入も行うため、ニキビやニキビ痕の色素沈着等にも効果的です。またケアシス(エレクトロポーション)もおすすめです。同時にクーリングもできるため炎症の鎮静化が期待できますよ。
ホルモン治療は、ピルやアルダクトンの処方があります。ピルはホルモンバランスを整えるため、ニキビができにくくなる、皮脂の過剰分泌を抑制するという効果が。ピル処方を希望の場合は、婦人科で相談を。アヴェニューウィメンズクリニックでは、1か月¥3,080~で処方しています。
アルダクトンとは、男性ホルモンの作用を押さえ、ニキビを改善していく内服薬。なかなかニキビが治らない重症の人に効果が高いとされています。こちらは、皮膚科にて2週間¥6,600です」(太田医師・以下「」内同)
Q. 国内未承認のニキビ薬とは?
「繰り返してしまうニキビ、重度のニキビには、国内未承認のニキビ薬を使用するという選択肢もあります。
当院で扱っているのは、ビタミンA類似物質である“ロアキュタン”(30カプセル¥16,500)というもの。抗菌作用、抗炎症作用に優れており、非常に効果も高いのですが、使用するうえで注意点があります。例えば、妊娠中に服用した場合、胎児の催奇形性があるため、内服については避妊などの制約が出てくるのです。
これまでさまざまな治療法を試したけれど、次の段階にいきたいという人や、このままではニキビが悪化して瘢痕になってしまうという人に提案することが多いですね」
※クリニックの代金は取材当時の価格となります。
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
医学博士。同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター研究員。豊橋の山本皮フ科ほかで診療を行う。健康と食を医学的な立場で発信するサイト『ドクターレシピ』を監修。