デリケートゾーンの臭いが気になる! おりものシートや膣洗浄液を毎日使ってもいい?【女医に訊く#178】
下着を脱いだときや性行為の前、自分のデリケートゾーンの臭いが気になったことはありませんか? デリケートゾーンの臭いの原因とケアについて、皮膚科専門医の慶田朋子先生に教えていただきました。
デリケートゾーンは酸っぱい臭いがする?
他人と比較できないデリケートゾーンの臭い。なんだか酸っぱい臭いする…と気になったことはありませんか?
「そもそも健康な女性の膣内には、デーテルライン桿菌という乳酸菌の一種が常在していて、常に酸性に保たれています。そのため健康な女性のデリケートゾーンは、酸っぱいヨーグルトのような臭いがしますし、膣内への異物侵入を防ぐためおりものがたっぷり出ているので、いつも濡れているのは当然です」と話すのは、皮膚科専門医の慶田朋子先生。
「女性の内性器の構造は子宮の先が卵管で、その先はいきなり腹腔内につながっているため、常に雑菌や病原菌によって侵される危険を抱えています。そこで、感染から守る仕組みとして膣内部を酸性に保ち、雑菌が侵入しても繁殖を防げるようにしているのです」(慶田先生)
おりものシートや膣洗浄液を使うのはNG?
デリケートゾーンの臭いやおりものが気になって、おりものシートを常に敷いたり、性行為前に膣洗浄液で洗ったりしてはいませんか? 酸っぱい臭いやおりものは健康である証。おりものを全部取ってしまうと、かえってデリケートゾーンがかぶれたり荒れたりすることもあり危険です。
「女性泌尿器科の先生もおっしゃっていたのですが、白いショーツが1年で黄色くなって替えるのは当たり前。それを汚れるのが嫌だからといって、おりものシートを常に貼っていると、デリケートゾーンがかぶれてしまうこともあります。生理のときは仕方ないとしても、おりものシートや膣洗浄液の使用は、必要な方以外はできるだけ避けてほしいですね」(慶田先生)
おりものは臭いや色など、正常を確認しておくと病気の早期発見につながります。普段と違うなと感じたら、婦人科に相談しましょう。
細菌性腟炎とは?
健康な女性のおりものは乳白色〜透明で、少し酸っぱい臭いがしますが、病気により黄色くなったり魚が腐ったような臭いになったりすることもあります。そのひとつが細菌性腟炎という感染症。悪化すると、おりものの変色や増加、膣のかゆみなどの症状が出ることもありますが、ほとんどの場合、臭い以外の症状が出ないため、気づかないまま感染している人も多くみられます。
「細菌性腟炎はいわゆる性感染症ではなく、膣の洗い過ぎや頻回な性行為、多数のパートナーとの性行為、膣内射精などにより、膣内を酸性を保ちきれなくなることで感染します」(慶田先生)
セックスのあと、腟の自浄作用が回復するまでには時間かかります。この自浄作用が回復するまでの間に頻回に性行為があることで、細菌性腟炎が起こると考えられているのです。
「また、精液はアルカリ性のため、コンドームを使わずに射精すると、膣内は酸性から一気にアルカリに傾きます。すると、陰茎に常在している細菌が増えて、魚が腐ったような臭いになってしまうのです」(慶田先生)
細菌性腟炎を防ぐには?
細菌性腟炎はパートナーにうつるものではありませんが、膣内を酸性に保てない状態で長くいますと、ほかの感染症にかかるリスクを高めてしまいます。感染を防ぐためには、性行為やデリケートゾーンの洗い方を見直す必要があります。
「性感染症予防のためにも膣内のpHを保つためにも、妊娠を望んでいないならコンドームを着用しましょう。男性の精液は精子が酸の中をかき分けて卵子に到達できるようにアルカリ性に保たれいますから、妊娠の目的以外で膣内に入れるのは避けてください」(慶田先生)
デリケートゾーンの洗い過ぎ、洗わな過ぎにも注意が必要です。ビデは経血や尿の飛び跳ねが気になるとき、表面のみに使用して。入浴時は小陰唇のつけ根付近など、垢がたまりやすい部分に気をつけながら、たっぷりの泡でやさしく洗います。
「デリケートゾーン用の洗浄剤のなかには、性行為の前にいい匂いの油分を残す仕立てになっているものもありますが、それは皮膚にとっては本来不要です。敏感肌用の洗浄剤や赤ちゃん用の洗浄剤でも構いませんから、弱酸性で保湿成分が添加されているものを選びましょう」(慶田先生)
裾ワキガはどうやって治療するの?
「裾ワキガ」とはデリケートゾーンや外陰部の臭いのことで、「外陰部臭症」「下ワキガ」などとも呼ばれます。ニオイのもととなるエクリン汗腺やアポクリン汗腺が、女性器や陰毛部にも多数存在するために、ワキガと同じような鼻をつくような刺激臭を発することがあります。
「実は、裾ワキガに対してもボトックス注射による治療ができますが、日本を含む東アジア人は、裾ワキガの割合自体が非常に少ないため施術頻度も少ないです。鼻をついてクラクラするような臭いがあり、耳垢がウェットタイプで、ワキガがあり、なおかつ家族など血縁者にもワキガの方がいるということであれば、ボトックス治療の経験に長けた美容皮膚科医に相談してみてください」(慶田先生)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
銀座ケイスキンクリニック院長。医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本レーザー医学会認定レーザー専門医。東京女子医科大学医学部医学科卒業後、東京女子医科大学病院、聖母会聖母病院などを経て、2006年、有楽町西武ケイスキンクリニック開設。2011年、西武有楽町店閉店に伴い、銀座ケイスキンクリニックとしてリニューアルオープン。最新マシンと高い注射注入技術で叶える、切らないリバースエイジングに好評を博している。著書に『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)など。