靴下を履いて寝ると睡眠の質が下がるってホント? 真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日々の生活で生まれる美容の疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は「睡眠」について。睡眠と疲労に関する研究を行う医師の梶本修身先生に、冬に起こりがちな睡眠と疲労の悩みについてお話を伺いました。
Q:靴下を履いて寝ると睡眠の質が下がるってホント?
例年にない寒さ、などと言われている今冬、「寝る際に靴下は欠かせない」という人もいるのではないでしょうか。でも、靴下を履いて寝ると睡眠の質を下げるというウワサが。これってホント? そこで、睡眠の質の向上によるさまざまな疲労回復法を推奨している、医師の梶本修身先生に疑問を投げかけてみました。果たして梶本先生のお答えは…?
A:ホント
「人は眠っているときに深部体温を下げて、細胞の活動を落とすことで体を癒し、体力を回復させているのです。そして、深部体温を下げるときに熱を放って温度を下げているパーツこそが、手と足の裏。
例えば、手袋をしていると寝にくいですよね? それと同じで、靴下で足の裏を覆ってしまうと体の熱が放出できないため、深部体温が下がらず、細胞の回復が図れなくなってしまいます。
実は眠っている間の体温調整がうまくいかないと、日中の体温も上がらない状態が続き、よけい寒さを感じてしまうんです。冷え防止のためにやっているつもりが、かえって冷えを招いている……という状況といえます」(梶本修身先生・以下「」内同)
深部体温を上手に下げる入浴法
夜の入浴は「汗をかかない」長さで
「夜の入浴は、深部体温を上げる目的ではなく、血流を良くするという意味でおすすめです。
半身浴など、長時間入る必要はありません。お風呂に関しては汗をかかないくらい、が目安です。汗が出てきたらその時点で自律神経がフル回転して体温調節脳が失われます。また、疲れも生じるがゆえ、睡眠時に体温調節脳が疲弊してしまってはたらかなくなる恐れも。なので、“気持ちいいな、温まったな”と感じる程度で済ますことがおすすめです。
深部体温を一度上げてから下げるという方法もありますが、一度上げてしまうと脳がのぼせてしまって、結果的に良い睡眠に繋がらない可能性があるので、今回のケースではおすすめはできません」
お湯の温度は38度~40度
「入浴時の温度は、38〜40度ぐらいの“のんびりできる温度”がベスト。また、冬は気温の変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こるヒートショックがあるから、熱いお風呂にいきなり入るのは危険です。かけ湯をしたりして、慣らしていきましょう」
入浴後1時間以内に寝る
「お風呂から上がって、髪を乾かしたり肌を整えたりと、やることが多いでしょう。けれど、理想は入浴後1時間以内に寝ること。深部体温が下がりやすく、質の良い睡眠へ導きます。熱い温度のお風呂に入ると交感神経が活発になるため、1時間以内に眠れなくなるので気をつけてください。
他にも、お風呂から出たら、スマホを見ない、蛍光灯などの明るい部屋にいないようにして、自律神経を寝るモードにしていきましょう。
あと気をつけるべきは、腹筋などの筋トレ。成長ホルモンが夜に出るから寝る前にやりたいといういう人もいますが、寝る前の筋トレは交感神経を優位にしてしまうため、眠りを妨げる原因に。筋トレをするなら夕方ぐらいまでに。成長ホルモンが筋トレの修復に使われるのは非常にもったいない! 肌や体の回復に成長ホルモンを使ったほうがいいので、筋トレはやめましょう」
寝るときは足裏を解放
「寒さで朝起きられないなら、足裏を覆わないレッグウォーマーの着用を。足裏さえ解放しておけば、布団の中で熱を閉じ込めた際に、ちゃんと足の裏からは汗をかくので放熱できます。かかとケア目的で靴下を覆く人もいらっしゃいますが、そういう場合にも、足裏すべてを覆わないアイテムを利用するとよいと思います」
朝、どうしても起きられない人は…
「通常、きちんと睡眠がとれていたら朝に向けてコレチゾールという物質が増えていきます。コレチゾールはコレステロールからできているもので、朝の7時に起きる人なら夜中の2–3時ぐらいから徐々に上がり、起床時にピークを迎えます。コレチゾールは起きる準備をする物質と呼ばれ、朝ちゃんと起きれるように徐々に体温を上げていき、それから血糖値を上げ、目覚めをサポートするという役割。
どうしても起きられないという方の中には、睡眠時にコレチゾールがなかなか上がらない方がいらっしゃいます。これは更年期の女性に多くみられる傾向。睡眠中のコレチゾールをしっかり働かすためには、自律神経を整えることが効果的。夜はリラックスするよう心掛け、日中も1時間に一度、息を抜いてホッとできる時間を作るようにしましょう」
文/むらなかさちこ
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大阪大学医学博士。大阪市立大学大学院医学研究科 疲労医学-特任教授などを歴任。国立研究開発法人)理化学研究所生命機能科学センターでは疲労と睡眠の研究を行う。産学官連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者に就任。ニンテンドーDS「アタマスキャン」をプログラムして「脳年齢」ブームを起こす。メディアにも多く出演し、『すべての疲労は脳が原因』など、著書も多数。