「寝てもとれない」疲労があるってホント? 真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日々の生活で生まれる美容の疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は「睡眠」について。睡眠と疲労に関する研究を行う医師の梶本修身先生に、お話を伺いました。
Q:寝てもとれない疲労があるってホント?
働き方が変ったり、日々の仕事や子育てなど、本当に忙しい!という人も多いのでは? そんなときに発生しやすいのが、「寝ても寝ても疲労がとれない」という状況。これって、精神的な疲れが関係しているってホント? そこで、睡眠の質の向上による様々な疲労回復法を推奨している、医師の梶本修身先生に疑問を投げかけてみました。果たして梶本先生のお答えは…?
A:ウソ
「睡眠の最大の目的は、疲れをとることです。よく耳にする“質の良い睡眠”とは、疲れが取れる睡眠のことを指します。逆に考えると、寝ても疲れがとれないということは、睡眠の質を下げる要因があると考えられます。
その原因のひとつとして、ストレスなど心因的な疲労も考えられるので情報としてウソではありませんが、原因はほかにもいくつか考えられます。その睡眠の質を下げる原因も含め、詳しくお話ししていきます」(梶本修身先生・以下「」内同)
睡眠の質を下げる疲れとは?
「起きている間にストレスをずっと感じていたら、交感神経が優位な状態がずっと続いてしまうので、とても疲れてしまいます。そのストレスや疲労により自律神経がダメージを受けて行くと、自律神経自体が睡眠を誘発することや睡眠のリズムをうまく作り出せなくなるように。その結果、なかなか寝つけなかったり、熟睡できなくて朝起きた時に熟睡感がないということが発生してしまいます。
よく言われている、寝る前にスマホ鑑賞でブルーライトを浴びたり、激しい運動をするなど、交感神経を優位にする行為も睡眠の質を下げる要因ですが、根深いのが疲労の蓄積によるダメージ。ストレスによる疲労だけが原因ではないので、疲れの仕組みも理解して、疲れを溜め込まないようにしましょう」
疲れの質に違いはある?
「運動や出張時など体を使った疲労も、デスクワークによる疲労も、ストレスなどの心因的な疲労も、実は同じ脳の自律神経が疲弊している状態を指します。疲労感は、脳の自律神経が疲れることによって、脳内の眼窩前頭野(がんかぜんとうや)と呼ばれる疲労感を感じる場所へシグナルが送られます。そうすると、体は“疲れた”と認識して疲労感が出てくるという仕組み。
基本的に疲れているのが脳の中なので、運動した時も体が疲れているわけではなく、体温調節や呼吸心拍を調整する自律神経が疲れるがゆえ、疲労感を感じているのです。なので疲れの原因はさまざまな要因が絡み合っているケースが多数。自律神経の疲れの合計点が増やさないことが大切です」
疲れのダメージは何で変わる?
「疲れの合計点を増やさないためには、ダメージの大きさを知ること。特にダメージが大きいのは、緊張や集中などで自律神経に長時間負荷をかけた疲労。
精神的に疲れている場合は、感じた時間の分だけダメージに。そう考えると、実は1時間程度の運動よりも、8時間かけてジワジワと溜め込むデスクワークによる疲労の方が、疲れがとれにくいというわけです。運動のように短い時間で収まった疲労というのは、比較的早く改善しやすいのです」
疲れを溜め込ませないためには?
「疲れを軽減させるために、オンとオフのメリハリをしっかりつけ、適度に手を抜いて休める時間を設けることです。仕事であれば55分ぐらい経ったら、1回休憩するのが効率的と言われています。旧券は基本的には5分以上が理想。交感神経から副交感神経に変わるには5分程度は最低かかるため、5分以上ぼーっとする時間を設けましょう。
あとは同じ姿勢を取り続けていると、血流が悪くなって自律神経に負担がかかるので、1時間ごとに飲み物を取りに行ったり、トイレに行くなどして体を動かすようにしてみてください。そうすることで疲労が軽減して、結果として睡眠の質も向上すると思います」
文/むらなかさちこ
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大阪大学医学博士。大阪市立大学大学院医学研究科 疲労医学-特任教授などを歴任。国立研究開発法人)理化学研究所生命機能科学センターでは疲労と睡眠の研究を行う。産学官連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者に就任。ニンテンドーDS「アタマスキャン」をプログラムして「脳年齢」ブームを起こす。メディアにも多く出演し、『すべての疲労は脳が原因』など、著書も多数。