排便時に出血や痛みが…これって切れ痔? 病院に行くべき?【女医に訊く#134】
排便時、肛門から出血したり痛みを感じたりしたことはありませんか? 「日本人の3人にひとりは悩んだことがある」といわれるほど身近な病気である痔について、女性大腸肛門病専門医のさきがけとして知られる山口トキコ先生にうかがいました。
20代〜30代の女性に多いのは「切れ痔」
人には相談しにくい痔の悩み。痔には大きく分けて痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(じろう、膿がたまり肛門内部に通じる管ができてしまう症状)の3タイプがあります。厚生労働省による2017年の患者調査では、国内の痔核の総患者数は97,000人、裂肛と痔瘻の総患者数は18,000人。これらは調査の時点で継続的に治療を受けている入院・外来の患者数なので、さらに多くの人が病院に行かずに市販薬などで治療していると考えられます。
「20代、30代の女性の場合、圧倒的に切れ痔が多いですね」と話すのは、女性大腸肛門病専門医のさきがけとして知られる山口トキコ先生。
「切れ痔のきっかけは硬い便。硬い便を頑張って出してしまったときに、肛門の皮膚が切れてしまうのです」(山口先生)
1回切れても次の排便時に痛みも出血もなければ問題ない?
切れ痔は硬い便の排泄などにより、肛門の皮膚が切れてしまう傷病。急性期と慢性期に分類され、急性期には排便時に紙につく程度の出血や排便後もしばらく続く痛みが起こります。慢性化すると潰瘍状になり、皮膚の突起物(見張りイボ)やポリープができたり、肛門が狭くなったりすることも。場合によっては肛門を広げる手術を行います。
「急性期の痛みに関しては、排便後、ちょっとジンジンしてすぐに治まる人もいれば、半日以上続くという人もいますね」と山口先生。
山口先生によると、美的世代の女性は癌のリスクが少ないため、受診は本人が気になったらで構わないとのこと。例えば、1回切れたとしても、自然に治れば問題はないそう。
「切れ痔の場合、次の排便がスムーズなら痛みも出血もないことも多く、一般的に受診しない方が多いですね。もちろん気になる方は1回目で受診されても構いませんし、なかには、もう十何年も前から放っておいたけど、今回は痛みが続くから、出血が続くから、出血の量が多くなったから、痛みが強くなったから…ということで受診される方もいます」(山口先生)
水分を摂って、なめらかなバナナ状の便をめざして
切れ痔治療の基本は、原因となる便秘や下痢を防ぎ、傷を治す温存療法。食生活や排便習慣などのライフスタイルを改善し、症状を悪化させないようにします。
切れ痔を防ぐベストな便形状は、なめらかなバナナ状。たとえ排便が2〜3日に1回であっても、この形状であればお尻も痛くなりませんし、お尻に対して負担もかかりません。
「毎日排便があるのに硬いという方は、水分の摂取量を増やしてみてください。理想的な水分の摂取量は、食事以外に1日1.2〜1.5リットル。ただし、アルコールやカフェイン入りのコーヒーは尿に出てしまうため、水分の量には含めません」(山口先生)
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マリーゴールドクリニック 院長。医学博士。1988年、東京女子医科大学卒業。1992年、同大大学院修了。東京女子医科大学付属病院一般外科で研修後、社会保険中央総合病院・大腸肛門病センター勤務を経て、2000年2月、マリーゴールドクリニックを開業。日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員。日本臨床肛門病学会技能指導医・評議員。日本外科学会専門医。