いわゆる「バリウム検査」と「胃カメラ検査」はどう違うの? 苦痛を伴わない胃の検査はある?【女医に訊く#132】
いわゆる「バリウム検査」や「胃カメラ検査」を受けたことはありますか? これらの検査にはどのような違いがあり、どんな病気がわかるのでしょう? 消化器内科を専門とし、人間ドックでは主に内視鏡検査を担当している医師の宮崎郁子先生にうかがいました。
いわゆる「バリウム検査」ってどんな検査?
がん検診には、区市町村などの住民検診に代表される「対策型がん検診」と、人間ドックなどの「任意型がん検診」があります。対策型検診の胃がん検診の検査方法は、問診と胃X線検査または胃内視鏡検査。対象年齢は近年、40歳以上から50歳以上に引き上げられ、検診間隔は2年に1回となりました(ただし、胃X線検査は40歳以上の方に年1回実施しても差し支えないとされています)。
「胃X線検査は、造影剤のバリウムと胃を膨らませる発泡剤を飲んで胃の中にバリウムを付着させ、レントゲン撮影を行います」と語るのは、消化器内科専門医の宮崎郁子先生。検査中は体を仰向けやうつぶせに回転する指示が出されますが、胃を膨らませて壁を広げて撮影するのが大切なため、ゲップはガマン! これが辛いと感じる受診者も多いようです。
「50歳まで胃の検査を何も受けないのは不安だと思います。美的世代の方でも一度は何らかの形で検査を受けていただきたいところですが、胃X線検査は放射線の被ばくがあるので、妊娠の可能性のある方は検査できません。ご注意ください」(宮崎先生)
「胃カメラ検査」で何がわかるの? 苦しいって本当?
一方、胃内視鏡検査は、内視鏡を口もしくは鼻から挿入し、食道、胃、十二指腸まで観察する検査。粘膜の微細な変化まで観察可能で、凹凸の少ない病変や出血なども観察することができます。
「胃がんの早期発見に関しては、胃X線検査よりも胃内視鏡検査の方が微細な観察による診断が可能ですが、苦痛を伴う検査でもあります。咽頭麻酔薬や胃の動きを抑える薬などを使用する場合があるので、薬剤アレルギーの方は事前にご相談くださいね」と宮崎先生。
胃内視鏡検査では、苦痛を和らげるために鎮静剤を使う施設もあります。受診する施設に事前に問い合わせをするといいでしょう。
ピロリ菌に感染するとどうなる? どうしたら見つかるの?
「最近は、ABC検診(胃がんリスク検査)というピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の抗体価検査と胃粘膜萎縮マーカーのペプシノゲン検査を組み合わせて胃がんリスクを分類する検診もあります。ABC検診は採血だけでできますから、それをきっかけに胃内視鏡検査を受けることを検討するのもよいでしょう」と宮崎先生。
ピロリ菌は胃の粘膜に生息しているらせん形をした細菌。幼少期に感染し、一度感染すると多くの場合、除菌しない限り胃の中に棲みつづけます。ピロリ菌に感染すると、直接胃の粘膜が傷つけられるため、胃炎や胃・十二指腸潰瘍など、さまざまな胃の病気を引き起こす可能性があります。
「会社の検診などが受けられない美的世代の方の場合、まずはABC検診でピロリ菌の有無を調べてみるのもいいですね。ピロリ菌がいることが疑われた場合は、胃内視鏡検査を受けて、胃炎や潰瘍などの所見があったら除菌治療をおすすめします。ピロリ菌は早い段階で除菌したほうが、その後の胃疾患のリスクを減らすことができますよ」(宮崎先生)
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東京国際クリニック 副院長。総合内科専門医。消化器病専門医。消化器内視鏡専門医。東京医科大学医学部医学科卒業後、東京医科大学病院消化器内科、内視鏡センター、牧野記念病院を経て、2015年より現職。「女性らしい丁寧さを活かした、患者様にやさしい医療」を心がけ、食生活アドバイザーとしても活躍している。