唇を火傷したときの対処法、治し方教えてください!【女医に訊く#72】
熱々のものを食べたり飲んだりして唇を火傷してしまったことはありませんか? 皮膚よりも薄く、感覚神経が発達している唇は、触覚に対してとても敏感です。火傷の痛みを抑え、キレイに回復させる方法を、形成外科医でもある抗加齢医の田路めぐみ先生にうかがいました。
唇と通常の皮膚部分は何が違うの?
言語活動だけでなく、消化管の入口としても重要な役割をしている唇。食べたり、笑ったり、おしゃべりしたり、歌ったり……。わたしたちは1日のなかで何度も唇を伸ばしたり縮めたりしています。
実は、唇は上下ともにそれぞれ外から内へ皮膚部、移行部、粘膜部の3部で構成されています。わたしたちが普段、口紅を塗っている部位は移行部であり、「赤唇部(せきしんぶ)」とよばれています。
「皮膚と粘膜では厚みも代謝速度も、だいぶ違います」と話すのは、抗加齢医の田路めぐみ先生。先生によると、皮膚は厚みがありしっかりしているのに対し、粘膜は薄くてやわらかく、しなやか。代謝のスピードも速いそうです。
唇を火傷したら、まずすべきことは?
では、熱い食べ物や飲み物で唇を火傷してしまった場合、どのような対処をしたらよいのでしょう?
「火傷(医学的には“熱傷”といいます)の治療は、皮膚も粘膜も基本は同じ。まずは、すぐに流水やアイスパックで冷やし、それからお薬などで炎症を抑えます。刺激物はしばらく食べるのを避けましょう」と田路先生。
処方薬を塗っておくと、素早い冷却で炎症を最小限に抑えることができ、炎症と痛みに関しては炎症止めが効くため、よりラクになるようです。
「保湿効果のあるワセリンに非ステロイド系抗炎症成分を加えた『アズノール軟膏』は、副作用も少なく、やわらかくて唇にも塗りやすいので出すことが多いですね。傷の状態によっては薄いステロイドが入っている塗り薬を出すこともあります」(田路先生)
粘膜の再生にはある程度うるおしてあげることも大切です。保湿も兼ねてワセリンや軟膏を使いましょう。
唇の火傷は皮膚の火傷より治りが早い
「移行部となるいわゆる“くちびる”は、どちらかというと粘膜。皮膚と比べて再生するのが早いんです。皮膚の再生には約2週間かかるといわれていますが、粘膜は4〜5日もあれば再生してしまいます」(田路先生)
そのため軽度の火傷なら、すぐに冷やして炎症が収まればあまり神経質にならなくてもOK。ただし、変色が酷い場合や収縮して変形している場合は、深くまでタンパク質が焼けてしまった可能性も。早めに皮膚科を受診するのがおすすめです。
文/清瀧流美 撮影/田中麻以(小学館)
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