健康・ヘルスケア
2018.12.12

女医に訊く#41|日本人の3人に1人が悩んでいるという花粉症の正体は?

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いまや国民病ともいわれる花粉症。春の到来を憂鬱に感じている方や、今シーズンこそ発症するのではと不安に感じている方も多いのではないでしょうか? 花粉症の症状や種類について、皮膚科専門医の慶田朋子先生にうかがいました。

春になると、くしゃみ&鼻水が止まらない……これって花粉症?

わたしたちの鼻は、侵入してきた特定の物質(抗原)を異物と判断すると、それを無害化しようと戦闘態勢(抗原抗体反応)に入ります。その結果、体が花粉を外に出そうと、「くしゃみ」で吹き飛ばしたり、「鼻水」や「涙」で花粉を洗い流そうとしたりします。

「このような症状が出てくる病気をアレルギ-性鼻炎と言います。アレルギ-性鼻炎には、決まったシーズンに限って症状が出る『季節性アレルギ-性鼻炎』と、1年を通じて症状が出る『通年性アレルギ-性鼻炎』の2種類があります」と話すのは、皮膚科専門医の慶田朋子先生。

花粉症は、植物の花粉が原因物質(アレルゲン)となって起こる「季節性アレルギ-性鼻炎」の代表的な病気で、原因となる花粉の飛ぶ季節にだけ症状が現れ、毎年、決まった時期に同じような症状をくり返します。一方、「通年性アレルギー性鼻炎」のアレルゲンはダニ、家の中のちり(ハウスダストなど)、ペットの毛・フケなどさまざまで、症状も1年中あります。

「花粉症の原因になる植物は、日本に約60種類もあるといわれています。関東地方の場合、1月〜4月はスギ花粉、4月〜5月初頭はヒノキ花粉、6月〜8月はカモガヤやハルガヤなどのイネ科花粉、8月〜10月はブタクサやヨモギなどの雑草類の花粉が飛散します。また、北海道と本州の一部では4月〜6月にかけてシラカバ花粉が飛びます」(慶田先生)

例えば、毎年春先になると、くしゃみ&鼻水が止まらないようなら、スギ花粉症が疑われます。ただし、花粉は暖かいと長期間飛びますし、温暖化により花粉の飛散時期もずれているでしょうから、アレルゲンをいくつも持っている人は、結局、通年性アレルギー鼻炎のように1年中症状に悩まされることもあります。心配な方は検査を受けてアレルゲンを特定しましょう。

花粉症の症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりだけではありません!

花粉症の症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりだけではありません。目のかゆみ・流涙・充血、喉のかゆみ・イガイガ、皮膚のかゆみのほか、おなかに症状が出ることもあるそう。

「花粉症は、口から吸ったアレルゲンが腸粘膜に触れて、そこでアレルギー反応を起こして下痢を起こす人もいるんです。なんとなく熱っぽくて、風邪みたいな症状を感じる方もいますね。あまりにも風邪が長いので抗アレルギー薬を飲んでみたら効いた、ということもありますから、おかしいなと思ったら検査を受けましょう」(慶田先生)

日本人の3人に1人が花粉症って本当?

現在の日本における花粉症の患者数は、正確なところわかっていません。しかし、全国的な調査としては、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした2008年(1月~4月)の鼻アレルギー全国疫学調査において、花粉症を有する者が29.8%であったとの報告があります。

「10年前の時点で、3〜4人に1人くらいは花粉症だったといえそうです。最近は、保育園児くらいの子がクシュンクシュンしている姿もよく見られ、小児のスギ花粉症も増加傾向にあります」と慶田先生。では、なぜ花粉症患者は増加&低年齢化しているのでしょう?

日本では戦後、建材の確保と治水を目的として、全国にスギやヒノキが植林されました。その結果、国土面積(3,779万ヘクタール)の約12%をスギ人工林(448万ヘクタール)が、約7%をヒノキ人工林(260万ヘクタール)が占めるように。さらに、それらの木は1960年代後半になって花粉生産力の高い樹齢30年程度に達し始めたため、花粉の飛散量が増加し、花粉症患者も急増したといわれています(『林野庁業務資料』平成24年3月31日)。

「近年、花粉の飛散量が増えたのは、温暖化の影響も大きいでしょう。さらに、花粉症の症状を悪化させる大気汚染物質が多い都市部では、花粉症患者の割合も高くなっている可能性があります。低年齢化については、諸説ありますが、花粉の飛散量だけでなく、あまりにも清潔な環境で育っているために、アレルギーを許容するのが難しくなっていることも関係しているかもしれません」(慶田先生)。

皮膚科専門医
慶田朋子先生
銀座ケイスキンクリニック院長。医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本レーザー医学会認定レーザー専門医。東京女子医科大学医学部医学科卒業後、東京女子医科大学病院、聖母会聖母病院などを経て、2006年、有楽町西武ケイスキンクリニック開設。2011年、西武有楽町店閉店に伴い、銀座ケイスキンクリニックとしてリニューアルオープン。最新マシンと高い注射注入技術で叶える、切らないリバースエイジングに好評を博している。著書に『365日のスキンケア』(池田書店)など。
銀座ケイスキンクリニック

文/清瀧流美 撮影/黒石あみ

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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