漢方には即効性はないってホント?真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日常生活で生まれる美容や女性のライフスタイルの疑問を医師や専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は「漢方」について。漢方には即効性はないってホント? 慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長の堀場裕子先生にお話を伺いました。
Q:漢方には即効性はないってホント?
漢方薬というとなんとなく体に優しそうなイメージがありませんか? そんな優しいイメージからか、漢方薬はすぐに効かない、長く飲まなければいけないという話も耳にします。漢方には即効性はないというのは本当なのでしょうか。さっそく、この疑問について慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長の堀場裕子先生に聞いてみました。
A:ウソ
「漢方には飲んですぐ効果を実感できるものと年単位で飲んだほうが良いもの、2種類に分類されます」(堀場先生・以下「」内同)
漢方薬の2つのタイプ
「漢方薬には、葛根湯などの風邪薬として飲むもののように、症状を感じたときにすぐ飲むことで大事に至らずにすむものや、五苓散や抑肝散のように飲むと気分がスッと落ち着くことをわりとすぐに実感できるものがあります。一方、冷え症を解消するような漢方であれば、前年の冬と比べられるように飲む必要があるので、年単位で飲むパターンが多いです。また、アトピーや乾燥肌といった、肌悩みなどは数年はかかります。私自身も冷え症を治したり、貧血対策をするような漢方薬を飲んでいましたが、3年ほどで気にしていなかった乾燥肌まで改善したという経験があります」
漢方薬を飲むのにベストなタイミングがある?
「西洋薬で食前に飲む薬があるかたはそれに合わせて漢方も一緒に飲んでも良いですが、食前に飲むと食事が取りづらくなるというのであれば食後でも構いません。あとは食間でもいいですし、眠りを良くするような漢方薬は就寝前や就寝1時間前でもOK。といった具合で飲むタイミングはそこまで厳密には決まっていません。1日3回というのが基本ではあるので、朝昼晩、朝夕と寝る前でもいいので自分が飲みやすいタイミングで飲んでいただければ良いと思います。ただ、働いているかたの場合は昼に飲めないということも多いので、そういう場合は1日2回で飲むタイプのものを飲んでいただくとか、とにかく習慣づけて飲めるように厳しく指導はしていません(笑)。あまり厳しく言うと、嫌になってしまいますしね。どうしても1日1~2回になってしまうという人には、細く長く続けていきましょうという感じでやっています。
ただし、風邪薬は自分が少しでも風邪症状を感じた瞬間に飲まないと手遅れになってしまうこともあるので、気付いた瞬間に飲んでください。それが食前だろうが食後だろうが、寝る前だろうが、“気付いいたときすぐに飲む”というのが大事です。そして、夕方になると症状が強くなるとか、明らかに決まった時間に症状が集中しているという場合はそのタイミングに合わせて飲んでもらうようにします。夕方疲れてしまって、17時くらいになるとソファから動けなくなって寝てしまう、なんていう人であれば、昼は欠かさず飲んでもらうなど。そういったことはありますね」
Point
においや味が独特な漢方を上手に飲む方法は?
「葛根湯や麻黄湯、小青竜湯、麻黄附子細辛湯など風邪薬系の漢方薬は苦かったり、辛かったりというものが多い傾向にあります。そのため、私は飲みやすいのであればお茶で飲んでも、お湯に溶かして飲んでも良いと思っています。うちの息子は風邪薬系の漢方薬を飲んだあとには大量のお茶を飲みますし、そのあとさらに牛乳を飲んでしまうこともありますが、まあ良しとしています。薬局ではゼリーで包んでガードするような製品を売っているところもあります。また、最近ではSNSでお菓子に薬を混ぜて飲むという方法が話題になり、お菓子感覚で薬を飲める服薬補助商品もありますので、そういったものを利用するのも良いと思います。体を温める系の漢方であれば、お湯に溶いて、お茶のように飲むことで体も温まりますから、おすすめです。逆に体を冷やすタイプであれば常温の水でもよいと思います。例えば夏はソーダ割り、冬はお湯割りといった具合で季節によってお酒の飲みかたを変えるように、漢方もご自身が飲みやすいように工夫して飲んでいただければと思います」
文/土屋美緒
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長・医学博士。日本東洋医学会専門医・指導医。日本産科婦人科学会専門医。日本漢方生薬ソムリエ。女性ヘルスケアアドバイザー。漢方家庭医。2003年、杏林大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部・産婦人科学教室入局。産婦人科医として大学病院並びに関連病院勤務を経て、2011 年より慶應義塾大学医学部漢方医学センターへ。 現在は、同センター医局長として外来や、研修医の指導に携わりながら、慶應義塾大学病院の婦人科外来も担当している。