常備薬としておすすめの漢方薬があるってホント?真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日常生活で生まれる美容や女性のライフスタイルの疑問を医師や専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は「漢方」について。常備薬としておすすめの漢方薬があるってホント? 慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長の堀場裕子先生にお話を伺いました。
Q:常備薬としておすすめの漢方薬があるってホント?
薬というと体調が悪いときに飲むものと思っていますが、漢方薬はサプリメントのような感覚で体調を整えるものとして事前に飲んだり、ちょっとした不調のときもすぐ飲むべきなのだとか。本当なのでしょうか。さっそく、この疑問について慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長の堀場裕子先生に聞いてみました。
A:ホント
「漢方は迷ったら飲めと言われているほど、気になることがあるなら飲んだほうが良いとされているものです」(堀場先生・以下「」内同)
漢方薬は迷ったら飲むべき
「漢方薬は、迷ったらやめるではなく、迷ったら飲むといいと思います。私自身も漢方ラックを所有、日々、持ち歩いている漢方も数種類あるくらい、漢方を日々の生活に取り入れています。それは、少しでも気になる症状があったとき、漢方を飲んだほうが良いことが多いからです。漢方薬を常備していれば、5秒後には手に取れますから、その効果を最大限に活かすことができます。特に葛根湯など風邪のひきはじめに飲む漢方薬は、症状を感じた瞬間に飲むことで効果を発揮するものなので、常備しておきたい漢方といえます。
イライラや緊張、不眠、女性特有の悩みに処方する漢方薬もあるので、漢方を日々の生活に取り入れることで過ごしやすくなることもあります。副作用がゼロとは言いませんが、きちんと医師が診断した処方で、定期的に漢方外来に通ってくれれば、医師は兆候をすぐにキャッチできます。自分でも何かおかしいなと感じたら服用をやめ、相談してもらえば重大になる可能性は低いと思います」
常備しておくと便利な漢方薬は?
「風邪やちょっとした不調のときに常備しておくと便利な漢方薬があるので、代表的なものをご紹介します。
【葛根湯】
これからの季節、心配になるのは風邪ではないでしょうか。風邪症状や予防としても使えるのが『葛根湯』です。ちょっとでも寒気がしたなら葛根湯。ちょっと前に会っていた友人がインフルエンザにかかったという情報が入ったときには予防で飲んでも良いです。特に寒気がしたときに葛根湯を飲むなら、お湯に溶いて飲むといいですね! もともと“湯”とつく漢方は湯煎で飲んでいたものなので、それに少しでも近づけるという意味でも温める漢方はお湯に溶いて飲んでください。特に冬や風邪のときは湯に溶いて飲むことをおすすめしています。
【抑肝散】
イライラや緊張感などに処方することが多い漢方で、生理前のイライラが気になる人は生理前だけ飲むとか、手もとに置いておくと良いと思います。あと、今日は気が張って眠れなさそう、と思ったら夕食後に飲んでおくなど。もともとは子どもの夜泣き、日本でいうイヤイヤ期、夜なかなか寝てくれないとか、癇癪がひどいという症状のために作られた漢方薬ですので、お子さまが飲んでももちろん良いです。育児に悩まれているお母さんにも一緒に飲んでもらうこともあります。
味は6種類の生薬のうちセリ科の植物が3つ入っているため、セロリのような香り。セロリ嫌いのかたは飲みにくいと思いますが、お湯に溶くと少し飲みやすいかもしれません。
【五苓散】
天気痛など、台風や低気圧が来る前に頭が痛くなるという人は五苓散がおすすめです。天気予報を見て、2~3日後に雨が降るという予報が出たら、五苓散を飲みはじめるくらいがよいと思います。乗り物酔いにもよいです。
【六君子湯】
胃腸薬の漢方薬で、胃腸薬系の中でも有名なのが六君子湯。胃もたれや胃の消化が悪いときなどに飲むと、胃がすっきりします。これから年末に向けて忘年会があったり、年始もお正月に食べ過ぎで胸やけ、なんていうときに飲んでもらうのもよいです。
【芍薬甘草湯】
一般的に有名なのは足の攣り。運動のときに足が攣ってしまう人は持っておくと便利です。ゴルフのときやこれからの時期、ウインタースポーツなどで足が攣る心配がある人は、持って行ってみてください。あとは生理痛がひどく、鎮痛剤の量が最大量でも効かないという人にも、筋肉痛などを和らげるはたらきがあるのでおすすめです。
Point
“湯”とつく漢方はお湯に溶いて飲むといい!体調が悪くなってからでは動くのが大変ですよね。でも、常備薬があればすぐに飲めるので“こういうときはこうなりそうだ”と予測がつくような症状に対しては、それに合う漢方薬を持っていると対処できます。
昔はよく置き薬と言って、何種類も薬が入った薬箱が家庭にひとつあったように、自分に合う漢方薬をいくつか選んで常備しておくと早めに対処できる不調もあると思います。これからインフルエンザの流行が拡大する可能性もあったり、自分の体調は自分で守るということが大切になります。自分に合ったものを手もとに置いておくと安心感も生まれるので、ぜひ試してみてください」
文/土屋美緒
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長・医学博士。日本東洋医学会専門医・指導医。日本産科婦人科学会専門医。日本漢方生薬ソムリエ。女性ヘルスケアアドバイザー。漢方家庭医。2003年、杏林大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部・産婦人科学教室入局。産婦人科医として大学病院並びに関連病院勤務を経て、2011 年より慶應義塾大学医学部漢方医学センターへ。 現在は、同センター医局長として外来や、研修医の指導に携わりながら、慶應義塾大学病院の婦人科外来も担当している。