漢方と漢方薬は違うってホント?真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日常生活で生まれる美容や女性のライフスタイルの疑問を医師や専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は「漢方」について。漢方と漢方薬は違うってホント? 慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長の堀場裕子先生にお話を伺いました。
Q:漢方と漢方薬は違うってホント?
医師から漢方薬を処方されることがあったり、ドラッグストアでも見かけたりと、意外と身近にある漢方ですが、漢方薬は「苦い、においがきつい、おいしくない」というマイナスイメージをもっている人も多いかもしれません。一方、体調を崩しやすいこれからの季節、漢方が気になっているという人もいるのではないでしょうか。では、漢方と漢方薬って何が違うんでしょうか。この疑問について慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長の堀場裕子先生に聞いてみました。
A:ウソ
「漢方と漢方薬を区別したほうが良いという考え方もありますが、漢方には漢方薬も含まれているため、明確に違いがあるとは言えません」(堀場先生・以下「」内同)
漢方とは?
「漢方とは、漢方診断や漢方の考え方、漢方の歴史をひっくるめたすべてのこと。そのなかには漢方薬も含まれています。漢方医学というものがあり、その中で患者さんが飲むものに漢方薬があるというのが正確な答えになるかもしれません。漢方は鍼灸や食養生も含めた医学を意味し、漢方薬は漢方医学の理論に基づいて処方される医薬品のこと、というように区別する考えもありますが、現場では漢方と漢方薬をあまり使い分けている認識はありません」
漢方医学とは?
「漢方医学は一般的にみなさんが受けられている西洋医学とは大きく違い、人の体は『気(き)・血(けつ)・水(すい)』の3つで構成されていると考えられており、患者さんが気・血・水のどこに異常が出ているかを診察と問診で探り、原因に合わせた漢方薬を選び、飲んでもらうというのが基本です。『気』は目に見えないが、人の体を支えるすべての原動力のようなもの、『血』は全身の組織や器官に栄養を与えるもの、『水』は飲食物中の水分からできた、体をうるおすもののことです。この3つは互いに影響しあっていて、バランス良く巡っていることが良い状態です。漢方医学では局所的に現れた症状だけを見るのではなく、病気の人の全体を見て、その人に合った漢方薬を出します。そのため、オーダーメイドとまではいきませんが、同じ痛みに対するものでも患者さんによって違う漢方薬が出ることもあります」
漢方薬は毎日飲んでもいい?
「漢方外来にいらっしゃるほとんどの人が、漢方薬を毎日飲んでいます。私も毎日飲んでいるほうが調子も良いと感じています。毎日飲んでいるものは基本一種類で、血流を良くする桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)です。そこに、雨が降りそうな日なら五苓散(ごれいさん)をプラスしたり、朝からあまりお腹が空かないな~という日であれば抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)という胃腸薬の漢方を飲みます。朝の調子に合わせて漢方ラックから2~3種類ピックアップして飲んでいます。私にとってはみなさんが日々こういうメイクにしようとか、服を選ぶのと同じような感覚で毎日の漢方選びも当たり前にやっている行動です。毎日飲んでいる基本の漢方はベースメイクのようなもので、その日の気分で変えるアイメイクがプラスの漢方といった感じ」
複数の漢方薬を一緒に飲んでもいい?
「内容によっては3種類くらいは同時に飲んでも良いと思いますが、基本は1種類を3か月ほど飲み、取りきれない症状がある場合は必要なものを足して飲むというのが通常のステップです。市販薬を3種類、自分で選んで飲むというのは危険だと思うので、そういった場合はしっかり診察を受けることをおすすめします。漢方では最も強い症状に合わせた漢方薬を優先的に飲むことが基本です。2種類飲むことが難しいときはいつも飲んでいる漢方薬はお休みして、優先順位の高い症状に合ったものをまず飲みましょう。例えば風邪症状のときは風邪薬となる漢方薬を優先的に飲んでほしいので、2種類飲むのが難しければ、いつもの漢方薬はお休みしてもいいです。余裕があれば、いつも飲んでいるものと重ねるのもOKです。時間差で飲めるのであれば、時間差で2~3種類飲んでもらうのもいいと思います」
文/土屋美緒
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慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長・医学博士。日本東洋医学会専門医・指導医。日本産科婦人科学会専門医。日本漢方生薬ソムリエ。女性ヘルスケアアドバイザー。漢方家庭医。2003年、杏林大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部・産婦人科学教室入局。産婦人科医として大学病院並びに関連病院勤務を経て、2011 年より慶應義塾大学医学部漢方医学センターへ。 現在は、同センター医局長として外来や、研修医の指導に携わりながら、慶應義塾大学病院の婦人科外来も担当している。