【自律神経を学ぶ①】体や心が「なんだか不調」…それって自律神経の乱れが原因かも!?
コロナ禍の長引く自粛生活やストレスの影響もあってか、近頃、疲れやだるさ、頭痛、肩こり、便秘、動悸、イライラ、落ち込み…など、体や心に何らかの不調を感じている人が増えています。「検査をしても病気は見つからず、これといった治療法があるわけでもない、こういった「不定愁訴」の症状には、自律神経の乱れが影響している可能性が大いにあります」と、せたがや内科・神経内科クリニック院長・久手堅司先生は話します。つまり、自律神経を整えれば、体や心の〝なんだか不調〟をすっきり解消できるかも。そこで、久手堅先生に、自律神経の正体や整え方について、4週にわたってレクチャーしていただきます。
自律神経っていったい何?
24時間休まず働く自律神経のおかげで、生命を維持できる
自律神経とは、生命活動を維持するために、内臓や血管など全身の器官の働きを調節している神経システム。脳と脊髄で構成される「中枢神経」の司令を全身に伝えたり、各器官からの情報を中枢に届ける役割を担う末梢神経の一部です。自律神経は、その名の通り「自らを律する神経」で、自分の意思に関係なく、自動的に働くのが特徴。人間には、外部の環境に関わらず、ある一定の体内環境を保とうとする「恒常性」の機能が備わっていますが、この恒常性の維持に貢献しているのが自律神経。呼吸が続く、心臓が動く、体温を維持する、汗をかく、胃腸が食べた物を消化する…など、無意識のうちに行われている生命活動は、いずれも自律神経が24時間休まず働くことで成り立っています。
〝アクセル〟の交感神経と〝ブレーキ〟の副交感神経のバランスが大事!
自律神経には、交感神経と副交感神経のふたつがあり、それぞれ正反対の役割をもっています。交感神経は、日中の活動時や運動時、緊張時、ストレス下など、心身が「興奮モード」のときに優位に働く神経。血圧を上げたり、脈や呼吸を速めたり…、車で言えばアクセルを踏んでいる状態です。一方、副交感神経は、食事中や夕方〜夜にかけてなど心身がリラックスした「休息モード」のときに優位に働きます。血圧を下げたり、脈や呼吸をゆっくりにしたり…、こちらはブレーキを踏んでいる状態です。体という一台の車を動かす際は、アクセルの踏みっぱなしも、ブレーキの踏みすぎも良くありません。交感神経と副交感神経がシーソーのようにバランスよく働くことで、身体機能が整い、全身のコンディションが良好に保たれるのです。
見えないところで大活躍! ふたつの自律神経の役割をチェック!!
交感神経は、日中活動しているとき、興奮したとき、ストレスを強く感じたとき、緊張や不安を感じているときなどに、神経伝達物質物質「ノルアドレナリン」の作用でスイッチが入ります。副交感神経は、就寝中、リラックスしているとき、食後にゆっくりしているときなどに、神経伝達物質「アセチルコリン」の作用でスイッチオンに。ただし、どちらか一方が優位なときでも、もう一方は完全に休んだりしません。急に起こるかもしれない環境や体の変化に備え、いつ自分の出番が来てもいいようにスタンバイしています。
自律神経のバランスの乱れから、さまざまな不調に!
交感神経と副交感神経のスイッチは、時間帯や状況に応じて適切に切り替えられるのが理想。ところが、強いストレスや生活習慣の乱れ、睡眠不足など、体や心に過度に負担がかかる状況が続くと、どちらか一方のスイッチが入りっぱなしになったり、切り替えがスムースにいかなくなって、自律神経のバランスに乱れが生じます。これによって出てくるさまざまな不調の総称が「自律神経失調症」です。
【交感神経が優位になりすぎると】
内臓の働きの悪化、胃腸トラブル、不眠、慢性的な肩こり・首こり、緊張型頭痛、頚椎・腰椎の歪みなどに
【副交感神経が優位になりすぎると】
血圧の低下、血流の低下、片頭痛、立ちくらみ、やる気のなさ、無気力などに
あなたの自律神経のバランスをチェックしてみましょう!
以下の項目で当てはまるものをカウントしてください。
- 朝起きるのがつらく、目覚めがすっきりしない
- 夜眠れない、または寝つきが悪く、寝ても疲れが取れにくい
- いつも疲労感やだるさがあり、調子が悪い
- 首こりや肩こりが慢性的にある
- 頭痛やめまいが起きやすい
- 胃痛、胃もたれ、吐き気、食欲のムラ、便秘、下痢など、胃腸の不調がある
- のどが詰まった感じなど、違和感がある
- 動悸や胸のざわつき、不安感、息苦しさがある
- イライラ、モヤモヤしやすく、気分が落ち着かない
- パソコンやスマートフォンを長時間使用する
- 運動(筋トレを除く)をあまりしない
- 天気(気圧、寒暖、湿度)の影響で不調が起きやすい
チェックした数によって、あなたの現在の自律神経の状態がわかります。
●0~4個…良好
現状は良好ですが、不規則な生活、睡眠不足、ストレスなどが続くと、自律神経は乱れます。アクセルとブレーキをバランスよく保ち、今の状態をキープしましょう。
●5〜8個…不安定
体や心に不調のサインが出始めています。夜まで興奮モードを引きずらないようにオンとオフを上手に切り替え、メリハリのある生活を心がけましょう。
●9〜12個…乱れすぎ
自律神経はかなり乱れています。1日の過ごし方や習慣、ストレスなど、日常生活を一から見直して、自律神経を乱す要因をリセットしましょう。
残念ながら、自律神経を自分の意思で調節することはできません。だからこそ、不規則な生活やストレスなど、自律神経が乱れる要因にアプローチするケアで、自動的に整うようにすることが大切です。次回からは、その方法を紹介していきます。
\お話を伺ったのは/
せたがや内科・神経内科クリニック院長
久手堅 司 先生
くでけん・つかさ/医学博士。日本内科学会・総合内科専門医、日本神経学会・神経内科専門医、日本頭痛学会・頭痛専門医、日本脳卒中学会・脳卒中専門医。1996年北九州大学法学部法律学科卒業、2003年東邦大学医学部医学科卒業。東邦大学医療センター大森病院などで臨床経験を経て2013年に開業。「自律神経失調症外来」「肩こり・首こり外来」など複数の特殊外来を立ち上げ、多くの患者のニーズに応えている。著書に『最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方』(クロスメディア・パブリッシング)、『面白いほどわかる自律神経の新常識』(宝島社)など。
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。