産後は抜け毛が増えるって本当?どんなケアをしたらいい?【女医に訊く#186】
「産後は抜け毛が増える」という話を聞いたことはありませんか? 実際、子供を産んだあとに何となく髪が薄くなったと感じたり、生え際からツンツン飛び出す短い毛に悩んだりする女性は少なくありません。産後の抜け毛について、発毛診療医・美容皮膚科医の高橋栄里先生に教えていただきました。
産後の抜け毛が増えるのはなぜ?
出産後、髪の分け目の薄さや生え際から飛び出す短い毛が気になったことはありませんか? どうして産後は抜け毛が増えてしまうのでしょう?
「産前産後のホルモンバランスの変化がヘアサイクルに影響を与えると言われています」と話すのは、発毛診療医・美容皮膚科医の高橋栄里先生。
前回、紹介したように、毛髪には一本一本に異なる「毛周期(ヘアサイクル)」があり、毛がつくられて伸びる「成長期」、髪が成長しなくなる「退行期」、脱毛と新しい髪の毛の製造準備が始まる「休止期」の3つを1クールとして、髪の生え変わりを繰り返しています。ところが、産前産後はホルモンバランスが乱れるため、このヘアサイクルが変わってしまうのです。
「妊娠中は女性ホルモンの働きにより、本来は退行期になる髪の毛が成長期のまま停滞します。そして、出産を機にこれらが一気に退行期に移行することで、産後抜け毛が目立つようになるのです」(高橋先生)
産後の抜け毛は自然に治る?
産後は育児に追われて、ヘアサロンにもなかなか行けません。特別なケアや治療をしなくても、産後の抜け毛は自然に治るのでしょうか?
「基本的に産後の抜け毛は、8か月〜10か月くらい経てば自然に治ります。ただし、35歳以降は自然現象のひとつとして、髪のボリュームや髪質が心もとなくなり始める時期です。そこにちょうど出産が重なることによって、髪が復活しにくいと感じたり、髪について悩むきっかけになったりする人も多いと思います」(高橋先生)
事実、近年は出産年齢が上がってきており、厚生労働省の人口動態調査によると、2020年の第1子出生時の母の平均年齢は30.7歳。35歳以上の出産も少なくありません。薄毛の進行を止め、豊かな美髪をキープするためにも、産後は無理のない範囲でヘアケアを行いましょう。
産後におすすめのヘアケアは?
豊かな美髪を保つためには、上質な睡眠やバランスの良い食事など、規則正しい生活習慣が大切です。しかし、産後は赤ちゃんのお世話で睡眠も食事もおろそかに。さらに、授乳で髪の栄養不足に陥ることもあり、髪には過酷な環境が続きます。
「産後は生活習慣を整えることが難しいため、頭皮美容液などのヘアケアアイテムを上手く取り入れるといいでしょう」と高橋先生。
頭皮美容液は、乾燥し硬くなった頭皮にうるおいを与えるアウトバスアイテム。気になる部位を中心に塗布し、やさしくマッサージしてから乾かします。
「頭皮美容液は、洗顔後の肌に化粧水をつけるのと同じ感覚で、洗髪後の頭皮に毎日使います。おすすめは、頭皮フローラ(頭皮常在菌)を整えて頭皮トラブルが起こりにくくしたり、発毛に必要なエネルギー力を高めてくれたりするもの。抜け毛が気になる場合には、育毛剤も取り入れてみましょう」(高橋先生)
文/清瀧流美
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
イークリニック麻布 院長。日本臨床医学発毛協会発毛診療医。日本毛髪科学協会認定毛髪診断士。日本臨床抗老化学会認定医。都内美容皮膚科の院長を経て、発毛診療医として大手AGA専門クリニック院長を務めたのち、診療顧問に就任。2019年に美容皮膚科、発毛治療ができる「イークリニック麻布」を開院。毛髪と美容のプロフェッショナルとして活躍中。著書に『女性の白髪・薄毛の悩みがなくなる方法』など。