血便や粘液便が出る、下痢の回数が増える…美的世代に多い潰瘍性大腸炎ってどんな病気?【女医に訊く#182】
慢性的に下痢が続いている、ベタベタとした粘液に血液が混ざったような便が出る、ダイエットなどをしていないのに体重減少がある…などの症状に悩んではいませんか? 今回は、美的世代に多いといわれている潰瘍性大腸炎について、日本消化器病学会消化器病専門医の山本真矢先生にお話をうかがいました。
潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こし、粘膜がえぐられてびらんや潰瘍をつくってしまう病気のこと。主な症状は、軟便や下痢、粘血便(粘液と血液が混ざった便)ですが、症状が重くなるに従って腹痛や発熱を伴い、1日に10回くらいのひどい下痢や体重減少などが起こることもあります。
「潰瘍性大腸炎は重症の場合、出血が止まらなくなって手術で大腸を全摘出することもある怖い病気です。治療が難しく慢性化しやすいため、厚生労働省が定める難病のひとつに指定されています」と話すのは、日本消化器病学会消化器病専門医の山本真矢先生。
とはいえ、潰瘍性大腸炎の患者の約6割は軽症とのこと。重症化させないためには早期の発見と治療が大切です。
「血便を痔と勘違いして放置される方もいますが、そもそも血が出ること自体いいことではありません。出した便は必ず見て、血や粘液が混ざっている場合は早めに受診しましょう」(山本先生)
どんな人が潰瘍性大腸炎になりやすいの?
難病情報センターホームページ(2022年1月現在)によると、わが国の潰瘍性大腸炎の患者数は181,560 人(2014年末の医療受給者証および登録者証交付件数の合計)で、女性の発症年齢のピークは美的世代の25~29歳。男女比は1:1で、性別に差はありません。
「特にここ数年は、軽症から中等症の患者さんが増えている印象がありますね。最近は高齢の方もいますが、患者さんの多くは10代〜20代の若い方が多いように感じます」と山本先生。
残念ながら、潰瘍性大腸炎の原因は明らかになってはいません。しかし近年の研究では、遺伝的な素因に腸内細菌や食生活の欧米化、喫煙といったさまざまな環境因子が重なることで、異常な免疫反応が引き起こされて発症すると考えられるようになっています。
「潰瘍性大腸炎を疑う場合は、大腸内視鏡検査を行い、内視鏡を使って大腸粘膜の組織を採取します。気になる方は一度、消化器内科医にご相談ください」(山本先生)
潰瘍性大腸炎の治療法は?
「潰瘍性大腸炎は軽症の場合、指示された薬をきちんと飲んで、食生活に気をつけてもらえば、ほとんどの方は通常の生活を送ることができるようになります」と山本先生。
潰瘍性大腸炎は病気の原因がわかっていないため、根本的な治療はありません。大腸に起きている炎症をさまざまな方法で抑える治療を行うことで「寛解(かんかい:病気の症状が治まり安定した状態のこと)」を目指し、その後は再び症状が現れる「再燃」を防ぐ治療を続けていきます。
「潰瘍性大腸炎はストレスにより発症することはありませんが、進学や就職、異動などのストレスで、症状が悪化したり再発したりするきっかけになることがあります。潰瘍性大腸炎と診断された場合は、できるだけストレスを避け、規則正しい生活を送るように心がけましょう」(山本先生)
文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
かえで内科・消化器内視鏡クリニック院長。日本内科学会認定内科医。日本消化器病学会消化器病専門医。日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。厚生労働省認定難病指定医。帝京大学医学部医学科卒業後、総合病院などの消化器内科・内視鏡専門医として約2万件の内視鏡検査・治療の経験を積み、2021年12月より現職。女性スタッフをそろえ、土日祝日の診察・検査も可能にするなど、女性が気軽に安心して通えるクリニックづくりをめざしている。