食・レシピ
2010.7.28

「ベジ簡単!な美的めし/12か月の176レシピ」応援企画【3】禅料理「蔬菜坊」

イタリアンレストラン「タツヤ・カワゴエ」のシェフ、川越さんからバトンを受け取ったのが、禅料理店「蔬菜坊」の料理人、佐川勝朗さんです。
蔬菜坊といえば、旬の素材のもち味を生かした、見目麗しい細やかな料理で知られ、美食家の間で評価の高いお店です。

そんなお店へ連載を依頼するなんて、最初、編集長から提案されたとき、正直、私はビビッてしまいました。だって、店名からして敷居が高そうではありませんか。果たして、どんな人が料理を作っているんだろう、と。実際お会いした佐川さんの印象は、“おちゃめなおじさま”でした。
料理に対しては、誠実そのもの。素材選びから扱い方、調理法、あしらいまで、何ひとつ妥協はありませんでした。

そんな佐川さんとのメニュー決めは、いい意味での“バトル”もありました(笑)。たとえば、きんぴらを作るときのこんにゃく。佐川さんは、ちゃんとアク抜きしてから使います。が、美的読者にとってアク抜きはちょっと面倒。そこで、「最近は、アク抜きしたこんにゃくもあるし、作り方からアク抜きは省いてもいいですか?」と問うと、佐川さんはしばしの沈黙後、つぶらな瞳で私を見つめ、「えぇ、でもアク抜きしたほうが絶対おいしいですよ」とおっしゃる。その毅然とした態度に私の心はくじけ、「はぁ、では原稿はイキママでいきます…」と、あえなく退散。
また、佐川さんは汁物を作る場合、前夜からコンブや干ししいたけを水に浸してとっただしを使います。これに対して私は、「顆粒だしなど市販のだしではダメでしょうか?」とたずねました。「ダメではないですが、だしをとるのはむつかしすぎますかね?」と、とても悲しそうな目をされました。このときは、折衷案をとり、あくまでレシピは佐川さんの流儀どおり正統派のだしで、最後に(※)で市販のだしの利用を加えました。

この本に登場する佐川さんの料理の中には、正直、難解なものもいくつかあります。でも、それは佐川さんがめざす料理の個性であり特徴であると考え、なるべくそのまま取り上げました。簡単で、すぐにできることが主流の時代ですが、佐川さんの料理を見ていると、私自身、ピッと身が引き締められる思いがします。「食べることは、生きること―」。自分を含めて、大切な人に心を込めて料理を作りたい、そんなときにぜひページをめくってもらえたらうれしいです。

\好評発売中です/
「ベジ簡単!」な美的めし/12か月の176レシピ(¥1,365)

【RESTAURANT DATA】
禅料理「蔬菜坊」
●住所:東京都目黒区目黒本町4-1-9
●電話:03-3710-4336
●営業時間:18:00〜24:00(完全予約制)
●定休日:日曜

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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