お悩み別ケア
2023.6.4

マイルドなピーリング成分「乳酸」化粧品としての効果は?【美容成分大全】

乳酸は、化粧品ではピーリングなどに使用されています。AHA(α-ヒドロキシ酸)の一種でマイルドな作用をもつ乳酸は、肌の弱い日本人には比較的合っていると言われ、ピーリングジェルや洗顔料などの化粧品に配合されたり、エステでも使われています。

プロフィール

成分名 乳酸
表示名称 乳酸(医薬部外品の表示名称:乳酸)
主な配合アイテム クレンジング・洗顔、スキンケア、メイクアップ、ヘアケア、ハンドケア
成分のはたらき ピーリング、角層柔軟化、収れん(引き締め)
医薬部外品としての効能効果

どんな「効果・働き」がある?

  • ピーリング
  • 角層柔軟化
  • 収れん(引き締め)

余分な角質を除去する

・ピーリング

ピーリングとは、肌の表面にある余分な角質をはがす(除去する)こと。乳酸を含むAHA(α-ヒドロキシ酸)は、角層細胞どうしの強いつながりを緩め、はがれにくくなっている角質をはがれやすくする働きがあり、ピーリングを目的とした多くの商品に使われています。

AHAの中でピーリング作用を比べると、分子が小さいほど大きくなります。乳酸は、美容クリニックなどで使われるグリコール酸よりも大きい成分ですが、リンゴ酸やクエン酸よりも分子が小さく、マイルドなピーリング作用が期待できます。

角層の浅い部分に働きかけて、マイルドに余分な角質を除去します。ピーリング作用により、余分な角質がたまって詰まりやすくなった毛穴への効果も期待できるだけではなく、くすみを防ぎ、なめらかで手触りのよい肌に導くことが期待できます。他の化粧水や乳液の浸透も向上させるため、よりスキンケアの効果実感が高まります。

ニキビを予防する

・角層柔軟化

角層をやわらかくする作用があります。そのため角栓ができにくくなり、毛穴の出口が塞がることを防ぐことで、ニキビの予防効果も期待できます。

毛穴の目立ちや過剰な皮脂分泌を抑える

・収れん(引き締め)

酸性である乳酸は、角層細胞のタンパク質を一時的にかためて縮める作用があり、皮脂の過剰な分泌を抑制します。また毛穴を引き締めることで毛穴も目立ちにくくなります。

美容賢者からの「ひとこと」

日本化粧品検定協会代表理事

小西 さやか


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グリコール酸で刺激を感じたら、乳酸を使ってみましょう

化粧品に使用される代表的なAHAには、分子の小さい順にグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸があります。一般的に分子が小さいほどピーリング作用が大きくなり、刺激も大きくなります。乳酸は比較的小さめですが、グリコール酸に比べると作用がマイルドです。グリコール酸で刺激を感じやすい人は乳酸を使ってみるのもよいでしょう。

開発者的マメ知識~乳酸はこんな風にも役立っている~

水に溶けると酸性を示すため、製品のpHをアルカリ性から、中性や酸性に調整する目的で配合されます。化粧品の成分にはpHが変化してしまうと効果を発揮できなくなる成分や、製品の安定性を保てなくなる成分が含まれています。そのため、pHが大きく変化することを抑える目的で他のアルカリ剤と一緒に配合されることもあり、「pH調整剤」として働きます。

乳酸を産み出す「乳酸菌」は身近に存在!

炭水化物を分解して、乳酸を産生するものを「乳酸菌」といいます。乳酸菌を含む牛乳や乳酸飲料が古くなると酸っぱくなるのは、乳酸菌により乳酸がつくられるからです。

「歴史・由来」その他の雑学

乳酸は、動植物にも広く存在していています。激しい運動によって生じる筋肉疲労は、乳酸が筋肉に蓄積され、筋肉を酸性側に傾けてしまうことで起こることが知られています。

ヒトの皮膚では天然保湿因子(NMF)の構成成分の1つとして、また、汗の成分として皮膚の水分保持に役立っています。

歴史

サワーミルクやヨーグルトなどの腐敗乳中に存在する有機酸として昔からよく知られており、1780年にScheeleによって初めて、発酵した牛乳から分離されて「乳酸」と名付けられ、1807年には筋肉中からも分離されました。

1881年には、CE.Averyが乳酸製造工場を建設して以来、次第に需要が高まり、日本では1949年から合成法による工業的生産が始まりました。食品や醸造、医薬品や化粧品、ポリマーや化学製品などの幅広い産業で使用されています。

主な原料の由来

発酵または合成

医薬品やサプリメントには?

医薬品には、飲みやすいように味を調える矯味剤(きょうみざい)やpH調整剤などの添加剤として使用されます。食品では酸味料、pH調整剤として使用されます。

注意事項

敏感肌など、乳酸に対してピリピリとした感覚刺激がある人もいます。心配な方は、乳酸配合の化粧品を上腕内側部(上腕の内側)に塗布して、刺激を感じないか確認した上で使うようにしましょう。

また配合濃度によっては、毎日使うのではなく数日あけて使うなど、使用頻度を調整しましょう。

 

<引用元>
Molecules, 23(4), 863 (2018)
International Journal of Cosmetic Science, 21(1), 33–40 (1999)
日本食品工業学会誌, 41(10), 687-702 (1994)
日本香粧品学会誌, 37(2), 95–100 (2013)
日本醸造協會雑誌, 74(3), 145-147 (1979)
有機合成化学, 48(2), 164-166 (1990)
鈴木一成, 化粧品成分用語事典2008, 中央書院, 2008, p.89,325
久光一誠, 化粧品成分検定公式テキスト, 実業之日本社, 2015, p.91
福井寛, トコトンやさしい化粧品の本, 日刊工業新聞社, 2009, p.28-29
久光一誠, 化粧品成分事典, 池田書店, 2021, p.136
宇山侊男他, 化粧品成分ガイド 第7版, フレグランスジャーナル社, 2020, p.133
菅原隆, 皮膚の測定・評価法バイブル, 技術情報協会, 2013, p.380
株式会社武蔵野化学研究所 原料資料, 安全データシート
厚生労働省 e-ヘルスネット(健康用語辞典)
日本医薬品添加物協会 Webサイト(安全性データ)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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