ヘパリン類似物質、化粧品としての効果は?【美容成分大全】
ヘパリン類似物質はもともと傷跡や手荒れ治療薬の薬効成分であり、医薬品のみで使われていました。その後、ヘパリン類似物質が配合されたものが医薬部外品として承認され、2020年ごろには多くのメーカーから発売されて続々とヒットしたことを受け、今後もさらに配合製品が増えていくと予想されています。 日本化粧品検定協会が美容成分をくわしく解説する【美容成分大全】。成分を正しく理解して、コスメ選びの参考に!
プロフィール
成分名 | ヘパリン類似物質 |
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表示名称 | 化粧品には配合されません(医薬部外品の表示名称:ヘパリン類似物質) |
主な配合アイテム | スキンケア、ボディケア |
成分のはたらき | 保水、血行促進、抗炎症 |
医薬部外品としての効能効果 | 保水 |
どんな「効果」がある?
- 「保水」有効成分:分子が大きく、水分をつかむ手が多く、水分をしっかり抱え込む
- 血行促進作用や抗炎症作用により、バリア機能の改善が期待できる
「保水」効果を謳える有効成分
保水
医薬部外品の有効成分として「保水」効果が認められています。糖がたくさんつながった構造で、分子が大きく、水分をつかむ手を多くもつため、水分を”かかえこむ”ようにして保湿します。吸水して粘性が高まるため肌表面上にとどまりやすく、持続的に角層に水分をあたえる働きがあります。また、角層のラメラ構造の中の水分を増やすことでバリア機能を立て直し、水分保持機能を高めるといわれています。
肌荒れを防ぐ効果も期待できる
血行促進
皮膚の血液の流れる量を増やして血行をよくする働きがあります。これによって皮膚の新陳代謝を促進することが期待できます。
抗炎症
穏やかな抗炎症作用によりターンオーバーを整え、肌荒れの予防効果が期待できます。
美容賢者からの「ひとこと」
医薬品を美容目的で使用するのはNG!
ヘパリン類似物質配合の”医薬品”が、治療ではなく美容目的で使用され、医療保険が使われていることが社会的な問題となったことで、本来の目的に則って適正に処方されるよう広く呼びかけられています。アトピー性皮膚炎や乾皮症などの患者さんが安心して処方してもらえるよう、ヘパリン類似物質を美容目的で使用したい方は”医薬部外品”を購入しましょう。
古くから医薬品として利用されている成分です
名前の通り、体内にある「へパリン」という物質に似た構造の成分です。ヘパリンとは、肝臓でつくられる多糖類の1つで、ヒアルロン酸と同じムコ多糖類の一種です。血液を固まりにくくする働き(抗凝固作用)があり、医療現場では、血栓塞栓症の防止や治療、カテーテル挿入時の血液凝固防止などにも用いられています。
「歴史・由来」その他の雑学
医薬品も医薬部外品も、使用されているヘパリン類似物質は同じですが、医薬品では0.3%、医薬部外品では0.3%よりも低い濃度で配合されています。構造中に水をつかむ”親水基”が多くあるため、高い保湿効果を有します。
歴史
医薬品として歴史のある成分です。日本では、1954年にマルホ株式会社が凝血阻止血行促進剤として、ヘパリン類似物質配合の「ヒルドイド」(現ヒルドイドクリーム)を発売しました。ところが2014年頃から、「保湿や肌荒れが改善する」という口コミで話題になり、保険治療としての本来の目的ではなく、美容目的で使用する人が増えたことが問題となりました。
2020年に株式会社コーセーがマルホ株式会社とともにコーセーマルホファーマ株式会社を立ち上げ、ヘパリン類似物質を有効成分とした医薬部外品を発売して話題を集め、他のメーカーでも発売されるようになり、ヘパリン類似物質配合の薬用化粧品が身近に購入できるようになりました。
主な原料の由来
半合成(豚由来)
医薬品やサプリメントには?
第2類医薬品として、ケロイドの治療や予防、静脈に起こる炎症の治療、乾皮症の治療目的でクリーム等に配合されています。アトピー性皮膚炎や、いわゆる”手荒れ”である進行性指掌角皮症の治療、しもやけなどの血行障害による痛みや炎症をやわらげたり、筋肉痛、関節炎を緩和したりするためにも使われています。食品やサプリメントとしては利用されていません。
注意事項
血液を固まりにくくする作用があるヘパリンと構造が似ているため、出血しやすい持病がある方が使用する際には注意が必要ですので、事前に医師に相談しましょう。
<引用元>
西日本皮膚科, 69(1), 44-50 (2007)
西日本皮膚科, 74(1), 48-56 (2012)
ロート製薬株式会社 リリース, 2015年9月8日
マルホ株式会社 Webサイト (マルホのあゆみ)
コーセーマルホファーマ株式会社 Webサイト (カルテHD)
小林製薬株式会社 Webサイト (さいき)
健栄製薬株式会社 Webサイト (ヒルマイルド)
大正製薬 Webサイト (商品情報サイト)
AnswersNews Webサイト (ニュース解説 2017年9月22日)
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
日本化粧品検定協会代表理事、日本薬科大学客員准教授、北海道文教大学客員教授、東京農業大学食香粧化学科客員准教授、各種協会の顧問、学会幹事を歴任。化粧品開発者として科学的視点から美容、コスメを評価できる専門家「コスメコンシェルジュ」。最短最適な美容で無駄を省く「時短美容家」としても活躍中。著書は『美容成分キャラ図鑑(西東社)』など13冊、累計56万部を超える。