健康・ヘルスケア
2021.5.12

歯磨きしても口臭が消えないのはどうして?食後すぐの歯磨きは虫歯や口臭のもと!?【女医に訊く#157】

157

会話中やマスク装着中にお口のニオイが気になったとき、歯や舌をゴシゴシ磨いてはいませんか? 口臭を防ごうとして食後すぐに歯磨きをしてはいませんか? 口臭を防ぐ歯磨きについて、女性のための口臭専門クリニック「東京ブレスクリニック」院長の上田恵子先生に教えていただきました。

歯磨きしても口臭が消えないのはどうして?

口臭が気になるからといって、歯や舌をゴシゴシ磨いてはいませんか? 実は、口臭の大部分は、口腔内で産生されるガスや鼻腔内から排出されるガス、さらに体内から排泄される呼気ガスが混合したもの。その主な原因物質は揮発性硫黄化合物、つまり唾液や咽頭部の粘液なのです。

「お口のニオイの原因は、歯や舌ではなく、歯を覆っている唾液や舌の表面にある唾液です。一生懸命ブラッシングしても、唾液がいい状態じゃないと口の中の環境も悪くなる。唾液が臭かったら、口の中も臭くなってしまうのです」と話すのは、日本口臭学会認定医の上田恵子先生。

では、質のいい唾液とはどんな唾液なのでしょう?

「清水のようにサラサラしていて、不純物がなく、透明できれいな唾液ですね。このような質のいい唾液が口の中に循環していると、口内環境が整って口臭も抑えられます」(上田先生)

食後すぐの歯磨きは虫歯や口臭のもと!?

みなさんはいつ歯を磨いていますか? 食後すぐに磨いてはいませんか? わたしたちの口の中のpH値(酸性とアルカリ性の度合い)は、普段はpH7の中性に保たれていますが、食べ物が口の中に入ると、すぐにpHは酸性に傾きます。そして、pH5.5以下になると歯は脱灰(だっかい)が始まります。脱灰とは歯の表面のエナメル質が溶け始めること。この脱灰が繰り返されることにより、虫歯が発生します。

「実は、この酸性に傾いた口の中を中和し、傷付いている歯の表面を修復してくれるのが唾液です。口がもっとも活動している食事中は、とても性能の良い唾液が湧いているんです」と上田先生。

ただし、口の中が酸性から中性に戻るには、約20分〜1時間かかるといわれています。つまり、食後すぐ歯を磨いている人は、口の中が酸性に傾いて溶けている状態の歯をさらに削ってしまうということになるのです。

「間食も注意が必要です。間食をすると、中性に戻ろうとしていたpH値が再び酸性に傾くことになるため、間食の回数が多ければ多いほど、脱灰している時間が長くなることになります。さらに、寝る直前に食べてしまうと、睡眠中は口の活動が停止するため、口の中が長時間、酸性に傾いたままになってしまいます」(上田先生)

もともと中和能力が少ない人や口が乾きやすい人は、このような行為を繰り返すことによって口の中の環境が悪化し、ニオイも出やすくなりますので注意しましょう。

寝る前と寝起きの歯磨きで口内環境を整えましょう

では、歯磨きはいつしたらいいのでしょう?

「口腔内の細菌がいちばん多いのは寝起き。寝る前に1個だった細菌は、寝て3時間後には1億くらいに膨らんでいるのです。朝起きてすぐは、目に見えない細菌がお口の中に1円玉10枚分くらいウジョウジョいるんですよ」(上田先生)

これは、寝ている間は口をほとんど動かさず、細菌の働きを抑える唾液の分泌も少なくなるため。口腔内の環境を良くするには、寝る前の歯磨きで可能な限り口の中の細菌を減らし、さらに、寝起きの歯磨きで爆発的に増えた細菌を取り除くことが大切です。

「泡立ちのいい歯磨き粉にも気をつけてください。舌の表面には突起状の舌乳頭というものがいっぱい出ているのですが、合成の界面活性剤(ラウリル硫酸Naなど)が配合された歯磨き粉を使っていると、これらが剥がれてしまうのです。歯磨き粉は合成の界面活性剤が配合されていないものを選びましょう。また、花粉症の方や粘膜のデリケートな方が、力を入れて舌や粘膜をゴシゴシ磨いてしまうことも、唾液が濁るので口臭の原因にもなります。粘膜を剥がさないように、柔らかい歯ブラシで丁寧に磨いてください」(上田先生)

日本口臭学会認定

上田恵子先生

文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事