痔の予防や悪化させないために注意すべきことは?|専門家医が答える女性の体悩みQ&A
誰もが悩んだことはある、「痔」についてのお悩みに肛門外科医の馬場先生がお答えしました!普段からできる予防策も要チェック。
排便のとき、肛門に痛みがあります。痔でしょうか?
A.肛門の痛みをはじめ、違和感、残便感、いぼの脱出、出血などは痔のサインです。
「肛門が痛む原因はまず、 痔の可能性が大 。そもそも痔とは、肛門クッション(肛門出口を囲み、肛門を締めやすくする柔らかい組織)が増大したものなので、誰もが痔になる可能性をもっています。程度によって 違和感や残便感、出血、いぼ痔の飛び出しなどの症状が出現。痛みもそのひとつ です。痔にはいくつかタイプがあって、男女ともに多いのは いぼ痔 。肛門クッションが うっ血して一部が腫れた 状態です。肛門の中にできるものを 内痔核 、外を 外痔核 と呼びます。次に女性に多いのは 切れ痔 。排便時、肛門部分の 皮膚に傷 ができたものです。
肛門のトラブル要因には、ほかに、洗いすぎ、こすりすぎなどで起こる肛門周囲皮膚炎もあります」(消化器外科医・馬場真木子先生)
痔瘻(じろう)
男性に多い痔。大腸菌の感染により肛門周辺が腫れて膿がたまり、肛門周囲膿瘍に。そのたまった膿を排泄するために、肛門の内側と外側がトンネルのようにつながった状態。
切れ痔
肛門上皮が切れたり、裂けたりしてできた傷。排便後の痛みと、排便時にペーパーに少しつく程度の出血と痛みがある。裂肛を繰り返すと、肛門ポリープや見張りいぼ(炎症が慢性化してできる肛門外の膨らみ)ができ、その繰り返しで肛門狭窄の状態になる。
痔核(いぼ痔)
内痔核
細い静脈が集まる肛門クッションの血流が滞り、うっ血して腫れた状態。違和感、残便感、出血、肛門から外へ飛び出ることも。
外痔核
肛門上皮が腫れた状態。この部分に肛門周辺の血流が滞ることで血栓ができて腫れた状態を、血栓性外痔核という。急に腫れて、激しく痛み、出血することもある。
慢性的な便秘症です。便秘の人は痔になりやすいって本当?
A.影響は大。お通じが悪くて息んだり、排便時間が長いなどは痔になる要因です。
「 便秘は、美的世代が痔になる原因のNo.1 。便がスムースに出ないと、どうしても排 便時間が長く、息むことが多く なります。このことが誘因となり痔核を悪化させます。また硬い便を出すことで肛門上皮を傷つけ切れ痔に。一方、 下痢も、未消化の便や排便回数が増えて 、肛門への刺激が重なるため、便秘と同様に痔を誘発します。そのほか、 冷えや飲酒、長時間同じ姿勢をとる ことなども痔の要因。肛門周辺の血管がうっ血していぼ痔になることが多いのです」(馬場先生)
息んだら出血。切れ痔ですよね?
A.出血=痔の自己判断は禁物。直腸や肛門に近い大腸に病気がある可能性も。
「ペーパーに少しつく程度の血なら切れ痔のケースが多いですが、それでも 自己判断は危険 です。直腸や肛門近くの大腸にがんなどの病気があるときも、痔と同じように 赤く鮮明な血が出ます 。痔の違和感、痛み、腫れなどに関しては、軽ければ経過観察でも良いと思いますが、 出血が数日でも続いた場合は、早めの受診 をおすすめします」(馬場先生)
痔は自然に治りますか?自分ではどんなケアをすればいいのでしょうか?
A.生活習慣の改善や排便コントロールで症状の軽減は可能です。
「切れ痔やいぼ痔は、原因になる便秘や下痢、血行不良にならないケアをすることで、症状を軽減できます。まずは 腸内環境を整えて、スムースな便通を促す 食事を。食物繊維の豊富な食品、発酵食品などを積極的にとりましょう。1日1・5〜2Lの 水分補給も不可欠 。ただし、 アルコールやカフェイン の入った飲み物は控えめに。唐辛子など刺激の強い スパイス類 もとりすぎないように注意を!
運動や温活で血流を促してお尻を守ろう!
生活面では、
長時間の座りっ放しを避け、適度に体を動かす
よう心掛けましょう。おなかやお尻周りを冷やさない、入浴は
湯船にしっかりつかる
などの習慣も大切。腸や体に優しい行動を!」(馬場先生)
【行動】軽い有酸素運動、湯船につかる入浴を習慣に!
ウォーキング程度の有酸素運動は、血流を促すだけでなく、腸のぜん動運動を活発にしてスムースな排便をサポート。入浴は40〜42℃の湯船に10分程度の全身浴がおすすめ。体が芯まで温まり、お尻の血行もUP。自律神経も整って、腸の動きも改善へ向かう。
【食事】食物繊維の多い食品、発酵食品などを積極的にとって!
\食物繊維の多い食品 /
\発酵食品/
根菜類や芋類などの不溶性食物繊維は便のカサを増やし、大腸の動きを活発に。果物や海藻類など水溶性食物繊維は便を軟らかくする特徴が。この両方をバランス良くとるのが◎。また、腸のぜん動運動を促すビフィズス菌入りの食品など、発酵食品も積極的にとって!
ビフィズス菌や乳酸菌入りの整腸剤を利用するのも◎!
腸まで届くビフィズス菌、乳酸菌に加え、ビタミンC・B2・B6も配合し、腸内フローラをサポート。整腸に。
ビオフェルミン製薬 ビオフェルミン(R)VC[第3類医薬品]120錠 ¥1,480
痔の予防や悪化させないために、注意すべきことはありますか?
A.トイレ時間は短く!強く洗いすぎないことも重要です。
「とにかく お尻に優しく接する ことが大切。 排便時間は3分まで 、それ以上息み続けないようにしましょう。残便感があっても粘らずトイレを出て、 再度便意が来るのを待って 。一方、便意を感じたときはタイミングを逃さずすぐ行くこと。我慢を繰り返すとますます便秘になります。
また、排便後に 温水便座洗浄機で勢いよく、長く 洗う、ペーパーで 強くこする 、入浴時に石けんで ゴシゴシお尻を洗いすぎる のも、肛門周囲皮膚炎や痔の悪化を招くのでNGです。
お尻を痛めている人は、肛門に食い込むような Tバック や歩くときにお尻に響きやすい ハイヒール の連日着用も避けて!」(馬場先生)
清潔にするのは◎。でも、強すぎる刺激はNG!
温水便座を使うときはぬるめの温度で、水圧は弱。長くて15秒程の洗浄が適切。入浴時は、キレイにしたいからとゴシゴシ力を入れて洗わないこと。お尻はお湯で洗うだけで充分。
『美的』2021年5月号掲載
イラスト/チブカマミ 構成/つつみゆかり、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
ばばまきこ/医学博士。女性専門の肛門科・胃腸内科、日本橋レディースクリニック院長。日本大腸肛門病学会専門医・指導医。