健康・ヘルスケア
2020.5.8

腸内洗浄で宿便を出すといいってホント?真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】

A:ウソ。“宿便”というものは存在しません

「宿便というと、長い間排泄されなかった便が腸壁にびっしりこびりついて固まっているイメージがあるかと思います。しかし腸粘膜の細胞は常にターンオーバしているため、腸壁にコンクリートのように硬い便がこびりついたまま…ということはありません。

たとえばひどい便秘症の人の場合、何日もお通じがこないと本来排出されるべき老廃物まで腸内に残って、そのまま体内に再吸収されることで肌荒れやむくみなどを引き起こします。その原因が宿便にあると考える人が多いようですが、それは通常の便が溜まっているだけです。そもそも宿便などというものはないのです」(小林先生・以下「」内同)

 

腸内洗浄は自分で排便する力が弱まる可能性も…

「排便とは、日常の食事や運動によって腸が刺激されて体外へ排泄されるのが自然な形です。刺激系の下剤など本来は体内に摂取する必要のない成分を用いたり、日常では与えることのない人工的な外的刺激によって排便を促すなど、不自然な形で排便することがクセになると自分で便を出す力が弱くなってしまいます。

腸の中に温水を注入して洗い流す腸内洗浄は、強制的に便を出すという意味では刺激系の下剤と大差ありません。悪玉菌をすっきり排出して腸内環境を整える効果があるとも言われていますが、腸にとって良い働きをしてくれる善玉菌まで洗い流してしまう可能性があるため、基本的におこなう必要はないと思います。
また保険診療ではなく自費診療で行われていることからもわかるように、腸内洗浄は医学的に安全性が確立されていない施術であり、何か身体に悪影響が出てしまってもすべて自己責任となります。たとえ腸内洗浄で身体の不調が改善した経験があり、それが医師の指導のもとであったとして、何回も立て続けに行うことは個人的にはおすすめできません」

軽い便秘ならば強制的な排便に頼らず自己改善の努力を

「便秘症状は人によってさまざまです。出ないことに強いストレスを感じる人はとても多いのですが、腸内洗浄を習慣にしたり刺激系の下剤を毎日服用するなど、“これがないと出ない”という思い込みで強制的に排便を促すものに頼りきりの状態を続けることは、健康リスクや金銭面のことを考えても改善したほうが良いでしょう。

当クリニックの便秘外来では食事や適度な運動などの指導で生活習慣をコントロールをしながら、腸を動かすために刺激系ではないマイルドな下剤を補助的に処方することもありますが、経過をみて徐々に下剤を服用しなくても自然にできるように促す治療を行います。

軽い便秘の方ならば食物繊維や水分、発酵食品を積極的にとり、適度な運動をすることで改善することが多いので、まずは生活改善の努力をしてほしいですね」

 

drkobayashi
小林メディカルクリニック東京
院長

医療法人社団順幸会 小林メディカルクリニック東京で理事長・院長。内科や皮膚科、アレルギー科を始め、便秘外来や人間ドッグなど全身の不調に対応した診療をおこなう。女性に多い便秘に対して医学的観点だけでなく食事や運動といった生活習慣からの指導により、便秘を健康的かつ根本的な改善へ導く”健美腸ドクター”としても名高い。著書に『医者が教える最高の美肌術」(アスコム)、女性の自律神経の乱れは腸で整える』(PHP研究所)など。 ■ 小林メディカルクリニック東京

取材・文/井上ハナエ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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